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ガチャ廃人のガチャ運営  作者: ペロロンチーノ


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魔剣ガチャ初日

――魔剣ピックアップ初日。


掲示板に告知が貼り出された瞬間から、

ギルドホールの空気は、明らかに変わっていた。


【期間限定ピックアップ:火属性魔剣】

【対象ランク:B/A】


その文字を見た冒険者たちは、

一瞬で考える。

ここで引くべきなのか、また違う属性の魔剣まで、

待つべきなのか


そして次の瞬間には、考えるのをやめた。



「……火属性、来たな」


列の先頭付近で、

一人の冒険者が唾を飲み込む。


「次の階層、火耐性ないとマジでキツいんだよ」

「ここで出なきゃ、あの階層は無理だ」


言い訳は、十分すぎるほど揃っていた。


「一回……いや、三回だ」

「三回で出なきゃ諦める」


そう言って、

金を入れる。


ガチャが回る。


【排出:Eランク素材】


「……」


もう一回。


【排出:Dランク魔石】


「……くそ」


三回目。


【排出:Eランク】


「……っ!」


歯を食いしばる。


「……いや、もう一回だけ…」

「これでほんとに、ラスト一回だ」


誰に言うでもなく、

自分に言い聞かせながら――

列から離れない。



少し後方。


「来い……来い……!」


若い冒険者が、

祈るように両手を握りしめていた。

駆け出しの冒険者には1万は大金だ。

たいした才能がない自分にとって人生が変わるかもしれない、そんな期待を込める。



ガチャが回る。


【排出:Bランク火属性魔剣フレイムエッジ


「……え?」


次の瞬間。


「よっしゃああああ!!」


叫び声が、

ギルドホールに響き渡る。


排出口から現れたのは、

赤熱した刃を持つ魔剣。

刀身に走る火の紋様が、

はっきりと他の武器とは違う性能を主張している。


「Bランクだ!」

「火属性のBランク魔剣ほんとにでたぞ!?」


「……マジか」

「一体いくらになるんだよ、それ……」


本人は、

震える手で魔剣を握りしめていた。


「俺……」

「俺、これで……」


言葉が続かない。


周囲から、

拍手と羨望の視線。


「おめでとう!」

「一万で人生変わったな!」


湧き上がる歓声、どこか半信半疑だった中で起こった、

成功体験。


それを見てしまった者たちは、

それに続くように、もう止まれない。



一方で、当然当たらないものもいる。


「……なんで」

「なんで、私だけ……」


壁際に座り込む女冒険者。


足元には、

Eランク素材が入った袋。


「……十万」

「十万あったのに……」


目は赤く、

声は震えている。


「せめて10万回収できるものでよかったのに……」

「最高ランクの魔剣なんて言ってない……」


仲間が肩に手を置く。


「今日はやめとけ」

「流れが悪いだけだ」


「……でも」

「さっきの人は、Bランク出してた……」


視線は、

まだガチャ筐体に向いている。


「……私も、次なら……」


立ち上がろうとする腕を、

仲間が必死に引き止めた。

ギルドの中でそのようなパーティーは至る所にある。

それだけ魔剣は魅力的だ。



その騒ぎを切り裂くように。


「おい」

「見ろ、あれ」


ざわめきが、

一瞬で静まる。

明らかにこれまでとは違う存在感が現れた。


【排出:Aランク火属性魔剣イグニス・レクス


空気が、凍りついた。


全てが違う。


熱量。

魔力。

存在感。


近くにいるだけで、

肌がひりつく。


「……A?」

「Aって……本物か……?」


当てたのは、

中堅パーティーの剣士だった。


「……はは」

「ははは……!」


高笑い。


「見たか!?」

「俺だ! 俺が引いた!!」


剣を掲げる。


「これで魔剣ダンジョンだろうが何だろうが」

「全部焼き尽くしてやる!」


一気に、人が集まる。


「なぁ」

「パーティー、組まねぇか?」


「俺のとこ来いよ」

「その剣があれば、大金狙えるぞ!」


様々なパーティーから勧誘される。



さっきまでそこら辺にいる普通だった男が、

一瞬で中心人物になっていた。



その様子を見ていた者たちは、

同じことを思う。


――次は、俺かもしれない。


Bでもいい。

Aなんて贅沢は言わない。


「一回だけ」

「次でやめる」

「今の流れなら……」


ガチャが回る。

また回る。

さらに回る。


歓喜。

罵声。

泣き声。


魔剣ピックアップ初日は、

朝から夜まで、

一度も静まることはなかった。

誰もが次は自分だとガチャを回し続ける。



だが、一部の冒険者は気づいていた。


魔剣を手にした者は、

調子に乗り。


手にできなかった者は、

追いかけ、破産するまで引く。


もはや単なる遊びではなく、命を金で買い、これまでの常識を消し去るものになっていることを。

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