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死に損ないは続けたい  作者: 樋口 帆陽
二章 【ドッテンコ幽霊騒ぎ】
7/12

死ぬほど美味しいランチA


胸騒ぎがした。

今でも『幽霊』なんて馬鹿らしいと思っているが、頭と感覚はリンクしない。鼻で笑うノアラがいる中、そのより深いところで警報が甲高く鳴る。


ノアラの直感は特別当たる。

神に愛された故の運だと、豪語しても実際に見たことがある者なら笑い飛ばせないのが、ノアラの豪運だ。

───だからこそ、ノアラは不安なのだ。

この胸騒ぎを、単なる偶然と笑ってやれないのが。


「…なぁ、アシェ? 悪い予感がするから来てみたけど、起きてるか?」


気が付けば、ノアラは扉の前にいた。

返事がない。ゴクリと、音を立てて息を飲む。


「───開けるぞ、」


挙げられる予測は二つ。

まず、アシェはもうすっかり眠ってしまっていて、夢の中にいる彼にはノアラの声なんて聞こえてやしない。そして、最悪の予測、どうしたってアシェがノアラに応じることができない状況か。


双剣を握る手に、力が入る。

迷ってはいけない。迷いに足を止めれば、進む道は失う。

ノアラは迷いを打ち切るように、双剣を鞘から抜く。月夜を反射する刀身は、強く美しい。


──扉を開ける。


扉が軋む音が、静寂の中ひときわ目立つものだ。

アシェの部屋は、ノアラの部屋と同じ形をしているので、一通り場所は分かる。


「水音……? なーんだ、水場にいるのかよ。ちょっと、ビビったじゃねぇか」


ベットに何も居ないので少しヒヤリとしたものだが、耳を澄ませば聞こえる水音から、アシェが水場にいることが分かる。

それでも、おかしな事に体の緊張がうまく抜けない。頭にはまだ、警報が鳴り響いている。


「何してんだよ、アシェ。 水栓開けたら、ちゃんと閉める! コレ大、事…───ぁ、?」


すぐ足元でぴちゃと水音が鳴る。

まさか、洗面台から溢れるほどに水を出し続けたのかと、額に冷や汗を浮かべるが、すぐに異変に気づく。

テクスチャーがどうも重いのだ。水のよりも、多少粘度が高く感じる。

嫌な予感──


「────! まさか…血?! アシェ!!生きてるか!?」


脳裏上の警報はレベルを上げた、鬱陶しい程に甲高い音を止まず鳴らす。血に汚れて、重くなった靴を走らせてアシェを探す。水音のする方へと走れば、そこにアシェはいた。


───死体になって。


思考が支配される。

どうする。どうして。何故、なんで。傷は深い、胸に風穴が空いている。出血量が多すぎる。助からない?誰が、どうして?目的は?どこにいった?アシェは大丈夫なのか。いや、大丈夫なわけがない。どうしたら助けられる。助けたい、助ける。手遅れ?また?いつから?


「──大丈夫」


ノアラの目を見張る。

それは、確かに死んだはずのアシェの声であったから。


「……は、 幽霊ってそういう…?」


定員から聞いた噂の真実は、死んだ人間が亡霊になって、声が聞こえるなんてものだったのだろうか。

所々噂と違うところが目につく。ノアラの直感では、違うと訴えかけるが、目の前にあるものが事実だ。実際おきた事象を、疑うのはちゃんちゃら可笑しい。

──そして、これも確かな事実らしい。


「俺は、幽霊じゃない……身体、治るんだ」


ノアラは確かな事象の前に、立ち尽くす。


アシェの胸に空いた、大きな風穴。それが、みるみると“閉じていく”のだ。

皮膚の端が少しずつ寄り、裂け目を縫うように繋がっていく。床に広がる血液も、パズルを完成させるかのように、あるべき場所へと戻っていく。


ノアラよりも、僅かに小さい少年の体が立ち上がる。

短時間で、アシェの身体は傷一つない純粋は少年に戻っていた。


「──ん、ん〜? あ、これ夢? ほっぺた抓っても……痛ってぇ。そして、ぷにぷに」


目の前の出来事に、ノアラは目を回す。てか、もうそれしかできない。一応、他に何をするか、夢かどうかは確かめた。けれど、柔らかい頬にじわじわと広がる痛みは、決して夢のそれではない。


「ノアラ、静かに。 『幽霊』が誰か分からないから、すごく危ないと思う」


「……『幽霊』ってのが、さっきお前を殺した奴ってわけだな?」


「ああ。 姿は見えないけど、実物はあるみたいだ。 こっちにダメージが入る」


「んだ、ソレ。 チートすぎねぇ? 見えない、けど実体はあるとか、やっぱし、『幽霊』ってのは馬鹿馬鹿しいやつだな」


ノアラの考えは間違えてなかった。やはり、『幽霊』なんてろくでもない。

ズルして、こっそり殺人だなんて漢のやる事ではない。誰でも、心には漢を宿しているはずなのに、どうもそれが『幽霊』にはないらしい。


「なーんか、まだよく分かってねぇけど? ──相棒の仇は打たせて貰うぜ?」


「いや、死んだけど、死んでない。 説明が難しいな。 とにかく、ノアラは時々、すごく頼もしい」


「そこは、平時って言ってもらいたかったぜ。 まっ!いつか、そう思えるようにすればいっか!」


まだ混乱する頭を無理矢理にリセットして、ノアラは双剣を構える。


「んじゃ、相棒の仇、打たせて貰うとするか!」


「うん、死んでないけど」


『幽霊』VS 『相棒』

静かな夜風に吹かれて、戦闘舞台が幕開く。


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