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政の継承~戦国リーダーズ~  作者: 葵 悠政
第三章『掌の中へ』

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第五十二幕『津島の湊』

第五十二幕 『津島の湊』


夕暮れの光が水面に揺れ、静かな波音が響いていた。 潮風がふわりと頬を撫でる中、信長はひとり、津島の湊に立っていた。

彼は何も言わず、ただ遠くを見つめていた。 灯台の向こうには広がる大海原。 その先に待つ未来を、信長はゆっくりと思い描いていた。


背後から、軽やかな足音が近づく。

「いないと思ったら、やっぱりここね。」


信長はゆっくりと振り向く。

帰蝶が薄く微笑みながら、彼の隣へと歩を進めた。

「……お前か。」


帰蝶は信長の横に立ち、同じように海を見つめる。

「何を考えていたの?」


信長は短く息を吐きながら、静かに答える。

「何も。……いや、すべてか。」


帰蝶はふっと小さく笑う。

「あなたがそんな顔をするのは、流れが変わる前だけね。」


信長は微かに口元を歪める。

「動きじゃない。ただ……潮の流れを見ていただけだ。」


帰蝶は信長の横顔をじっと見つめる。

「ふふ……本当は、少し不安なんじゃない?」


信長は何も言わず、再び海を見つめる。

「道三も……信行も……信光さんも義銀も……皆、消えていった。」


帰蝶は目を細めながら信長を見つめる。

「背中を預けた者が、皆去ってしまった。」


帰蝶は静かに息を吐き、優しく微笑む。

「それでも、あなたは歩みを止めない。」


信長は答えず、ただ海へ視線を向け続ける。

帰蝶はゆっくりと袖を揺らしながら、静かに続ける。

「あなたは、どうしてもひとりで背負おうとする。 でも、あなたの背中には、もう多くの者がついている。」


信長は微かに目を閉じ、潮風の流れを感じた。 しばらく、波音だけが響く。


夕陽が沈みかけ、空が深い赤へと染まっていく。


帰蝶は静かに振り向く。

「そろそろ戻りましょう。みんなの元へ。」


信長は黙って頷き、帰蝶とともに歩き出した。


静けさの中に、まだ誰も知らぬ波の気配が、ゆっくりと満ちていた。


今回は、津島の夕暮れの中で、信長がふっと立ち止まる回でした。

激しい政の流れの中でも、こうして静かに海を眺める姿は、

彼の中にある“人としての弱さ”や“迷い”が少しだけ見える気がします。


帰蝶とのやり取りも、派手ではないのに温度があって、

二人の距離感がとても心地よい場面でした。


大きな時代の波が近づいている気配の中で、

信長がどんな風を選び、どんな歩みを進めていくのか。

次の幕も、静かに見守っていただければ嬉しいです。

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