第三十二幕『再結集』
第三十二幕『再結集』
拍手と歓声が徐々に鎮まり、議場に再び静けさが戻る。
信長は壇上に立ち、視線を左右に巡らせた。
その目は、味方の列だけでなく、沈黙する者たちの奥底までを射抜く。
「この勝利は、我らの終着ではない。ここからが始まりだ。」
低く響く声に、熱狂の余韻がゆるやかに引いていく。
信長は一呼吸置き、言葉を重ねた。
「まず、勝幡派の和を改めて一つにするため――
林秀貞を政務調整局長に任ず。」
ざわり、と会場が揺れた。敗北側の重鎮を、要職に。
「また、勝家には幹事長として派閥の総括を任せる。
選挙の準備も、議案への構えも、一つの策中にあるべし。」
「そして信行。お前を正式に副代表として迎え入れる」
次々と名前が読み上げられ、旧信行陣営の者たちが要職に組み込まれていく。
反発や驚きがないわけではない。だが、それを包み込むように信長は続けた。
「勝った者も、負けた者も、この地に生きる限りは同じ船に乗る者。
嵐に立ち向かうなら、櫓を握る手は多いほうが良い。」
会場に微かな頷きが連鎖していく。
恒興は眉をひそめながら慎重に「……大胆ですね。」
貞勝は慎重な表情で頷く。「信行さんを正式に副代表とすることで、彼の立場を明確にし、今後の党運営をスムーズにする狙いですね。」
誰もがまだ探り合いの表情を残しつつも、沈黙は確かな了承に変わりつつあった。
壇上の信長は、ゆっくりと視線を巡らせ、最後に静かに言い切る。
「――今日から、再び一つだ。」
木槌の音が議場に響き、新たな章の幕が上がった。
第三十二幕では、信長が勝者と敗者を隔てず、要職に組み込み「再結集」を示しました。 大胆な人事は驚きを呼びつつも、党を一つにまとめる強い意思を象徴しています。 ここから始まる新章が、どのような波を広げていくのか――ぜひ見届けてください。
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