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政の継承~戦国リーダーズ~  作者: 葵 悠政
『尾張の風』

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第三幕 『新星、動き出す』

第三幕『新星、動き出す』


控室の窓から、午後の光が差し込んでいた。


信長は議場を出たばかりの余韻を引きずるように、椅子に深く腰を下ろす。

平手と恒興がそばにいる。


誰も言葉を発さないまま、しばらく沈黙が続いた。


信長がぽつりと

「……言った瞬間、頭じゃなくて胸の奥が揺れた感じだった。

なんか上手く言えないけど、自分の声が空気を変えた気がした」と呟く。


平手は静かにうなずく。

「制度という空間で、風を起こすこと。それが“議員”という職責の本質かもしれませんな」

恒興が椅子の背にもたれながら、苦笑いを浮かべる。


「揺れたのはこっちの心臓だよ。お前、途中で原稿捨てるなって。あれ、俺の手汗止まらなかったからな」

信長は少しだけ笑う

「だって、型通りって、やっぱりピンとこなかったんだよな。

自分の声でしゃべった方が、なんか……面白かった」


恒興が肩をすくめる。

「ま、結果オーライってやつか。

……でも次は、せめて“捨てる前に一言”くれ」


平手が資料をまとめながら、静かに言った。

「言葉は、整えて並べるだけではなく、“熱”を乗せるものです。

若がそれを実感されたなら――次は、“熱の行き先”を考える時かもしれませんね」


信長が眉をしかめる。

「熱の行き先って……どういう意味?」


「議会の制度は複雑です。だからこそ、その“地図”をどう歩くかは、感覚でもいい。

今日は、少し風向きが変わった。それだけで十分です」


信長は机の隅に目をやった。

市が置いていった小さな折り紙がまだ残っていた。

彼はそれを手に取り、指で折り目をなぞる。


「仕組みって、“止まってるもの”じゃねぇよな。

誰かが使ってて、動いてて……でも、表には出てこねぇ」


恒興が笑った。

「そりゃ俺ら、まだ地図の外側だもんな。

でもさ、面白そうだと思ったら、ちょっとだけ踏み込んでみりゃいい」


信長は麦茶を飲み干した。

「面白そうって思った。……なんか、今なら動ける気がする」



信長は一枚の提案フォーマットをじっと見つめた。

何も書き込まれていない紙の白さが、今の自分の“手持ちの言葉”と重なった。


部屋の外で風鈴が鳴る。

だが、この夜、彼はペンを取ることはなかった。


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