第二十一幕 『志、陣へ入る』
第二十一幕『志、陣へ入る』
その時、執務室の扉が勢いよく開いた。
恒興と利家が、遠慮のない足取りで入ってくる。
「暇か、お前ら……ここは溜まり場じゃないぞ」
信長は巻物を指で押さえたまま、眉をひとつ動かした。
恒興が肩をすくめて笑いながら近づく。
「勝幡派の本部なんだから、しょうがないだろ」
「信長さんがここにいる限り、俺たちも集まるに決まってるって!」
利家は腕を組みながら豪快に笑う。
信長は軽く舌打ちしながら言葉を継ぐ。
「ったく……で、帰蝶は?」
村井貞勝が静かに答える。
「佐久間さんと地元商店街の会合に出ています」
信長が少し目を細め、巻物から手を離す。
「商人と……帰蝶がか。珍しいな」
恒興が口を挟む。
「あの人、地元の支持固めに本気出してますよ。
派閥の厚みを作るには、そういう地道な動きも大事なんでしょうね」
信長が小さく笑う。
「相変わらず抜け目ないな……。俺が巻物見てる間に、地盤まで固めるってか」
—
義銀は、勝幡派のやり取りを静かに見守っていた。
表情に少し安心の色が浮かぶ。
「すごい……こんなにも結束があるんですね」
利家が笑いながら肩を叩く。
「まぁな。ここにいる連中は、ちょっとやそっとじゃ折れねぇぞ。
お前もその気があるなら、一緒に勝ち方を考えようぜ」
信長がふと姿勢を改め、義銀に向き直る。
「さて義銀。選挙戦に勝つには、お前が全力を尽くすことが第一だ。
だが、それだけじゃ無理だ」
義銀が身を乗り出す。
「他に必要なことって……?」
信長は机を軽く指で叩き、にやりと笑う。
「参謀が要る。お前ひとりで全部捌こうとしたら、政治に潰されるぞ。
そこで、五郎左だ」
利家が即座に頷く。
「長さんか。選挙戦の駆け引きに強いし、動きも早い。間違いないな」
恒興も同調する。
「信長さんが信頼してる人物でもあるしな。銀さんには心強いはず」
義銀の目が輝きを増す。
「その方は、今どこに……?」
信長が机を一度叩く。
「近くにいる。つね、案内してやれ」
恒興が笑みを浮かべながら扉へ向かう。
「了解。銀さん、こっちです」
信長は義銀に最後の言葉を落とす。
「五郎左はこの役目にふさわしい。
だが、進むのはお前だ。支えてもらえるのは一歩目だけ――その先は、お前の政だ」
義銀は一礼し、恒興とともに扉を出る。
その背中を信長が静かに見送っていた。
第二十一幕、ご覧いただきありがとうございました。 今回は、義銀が勝幡派の結束に触れ、政を進めるための“陣”へと足を踏み入れる場面を描きました。
信長の言葉――「支えてもらえるのは一歩目だけ」 その一言が、義銀の覚悟と、この章の構造を静かに照らします。
参謀・五郎左の存在は、政の駆け引きにおける新たな軸となります。 次幕では、義銀の“志”がどのように動き出すのか。 引き続き、静かな時間にお付き合いいただければ嬉しいです。
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なお、作品の雰囲気づくりの一助として、活動報告ではイメージソングについても触れています。 ご興味がありましたら、そちらもあわせてご覧いただければ嬉しいです。




