第十一幕 『制度のかたちを編む』
第十一幕『制度のかたちを編む』
議場・再構案の提出
午前。議場に光が差し込む。
信長が提出した修正予算案が審議に入る。
「生活向上指標」「分配基準の再定義」「民意フィードバック制度」の三項目が追加された。
信友は資料を手に取り、目を細める。
「言葉がずいぶんと整ってきたな。
今回は“議会の言葉”になっている。
……だが、それが本当に民に届くのかは、また別の話だよ、信長君」
信長は答える。
「だから提案するんだ。届けるかどうかは、議会の仕事だと思ってる」
言葉には静かな芯があった。
議場の中で、数人の議員が顔を上げる。
—
控室・若手の声
控室では、数人の若手議員が話していた。
「案文、思ったより具体的だったな」
「信長議員って、もっと荒いかと思ってたけど……制度のツボを見てるかも」
「それにしても……義統さんがあの場で“民のため”って言ったのは重かったよな」
—
義統の執務室
斯波義統は、静かに書類棚の中から一冊の冊子を取り出す。
それは15年前の尾張財政指針――彼が就任した当初の制度設計に関する原本だった。
彼は机に置き、手元の信長案と並べて目を通す。
(動かないことで守れていたもの。
動くことで届くようになるもの。
その間の狭間で、制度は形を変えていく)
—
信長の執務室・夜
信長は資料束を閉じる。
その隣に置かれた平手政秀の手帳――ページの間に、小さな付箋がわずかに顔をのぞかせていた。
彼は何も言わず、手帳に視線を落とす。
そして、資料の最終頁にゆっくりと手を添えた。
その動きは、誰かの思いに触れるようであり、誰かの言葉を今、自分の手で形にするようでもあった。
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翌朝の資料室。
信友は誰もいない中、議案フォルダーを閉じながら呟いた。
「尾張議会は整っている。
だからこそ――崩させるわけにはいかない」
読了ありがとうございます。 制度は、誰かの思いを形にする器でもあります。 信長の提案と義統の沈黙――その間に、尾張のかたちが少しずつ編まれていきます。
次回はある人物が動き出します。 また覗いていただけたら嬉しいです。




