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宇宙の行方  作者: 春木
第三章 崩壊都市
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32話 因果応報

 一人の少女は、明るい表情で世界を走り回る。青いショートカットを靡かせ、カチューシャが陽の光を綺麗に輝かせる。


「ここすごーい! 夢の中みたい! お菓子のお城におもちゃの草原! お花畑も綺麗!」


 美しい景色、彼女が望んだ者がそこら中に広がり、自由気ままに走り回る。そんな中、お菓子のソファで眠りに着く大人の女性を見掛ける。


「お姉ちゃん、大丈夫? どこか怪我したの?」


 少女が声を掛けると、女性はふと小さく目を開ける。


「君には……この世界がどう見える……?」


 擦れるような声で、絞り出した声はどこか空気に溶けたように聞こえる。


「この世界? 素敵な世界だよ! お菓子もおもちゃもいーっぱい!」

「そうか……。それならば……よかった……。私のせいでこんなところに……。少しでも素敵な世界を味わえるのであれば、それが私の最期にできること……」


 少し微笑む女性であるが、少女は話を理解できていないが、その擦れた声を心配そうに見遣る。


「私、お姉ちゃんの言ってることよく判らないんだけど……。何か食べるものでも持ってこようか……?」

「ふふ……。暗い顔をするでない。それは私の望むモノではないからな……」


 しかし、少女はその幼心から、女性を見過ごすことは出来なかった。


「私、まだ小さくて何もできないけど、できることはなんでも言って! お姉ちゃんたちもきっと協力してくれる!」

「そうか……。君は優しいのだな。それならば、ここに花を植えてくれ……」

「お花……? お花なら、辺りにも沢山あるよ……?」

「ふふ。私が持っているこの種を植えて欲しい。私にとって特別な花なのだ」


 種を受け取り、少女は満面の笑みで笑う。


「そういうことかぁ~! 好きなお花の方が嬉しいもんね! お水持ってくるときに、私、ご飯も持ってきてあげる!」


 そう言うと、少女は駆けて行った。

 暫くすると、緑髪の長い髪の女性と共に、水の貯まったペットボトルを携えて少女は戻って来た。少女は、女性の見やすい位置を考慮し、種を植え、水を注ぐ。その間、着いて来た緑髪の女性は、倒れ込む女性を訝し気に覗き込む。


「貴女にも、この()()()()()()が見えているのですか……?」

「え……?」

「この地にはお菓子やおもちゃ……そんな幻想的なものはもちろん、花畑さえない枯れ果てた地……。瓦礫が崩壊し、宇宙が剥き出しの世界……。貴女にもそれが見えているから、()()()をあの子に渡したんですよね……?」

「君にも見えているのか……? そうか……。弱体化のせいで、私の呪いがたった一人に影響を映さなかったのか……」


 緑髪の女性も、何を言っているのか判らず、困惑した表情で女性を見つめる。


「これも私がもたらした業か……。君には全てを話そう。この……崩壊都市と化した世界を……」


   *


 行方、楽、大星母の三人、そしてトリガーは、先の戦いで立てなくなってしまっていた荊棘を抱え、洞窟の奥へと進んで行く。すると、汚い布団に横たわる女性と、それを心配そうに見守る未杜の姿があった。

 女性は、行方を見てニコっと微笑んだ。


「君が……()()()()()()()()()だね……」

「貴女は…… "ヘカテー" ですか……?」


 しかし、そんな問答に未杜が割って入る。


「違うよ! 私たちのお姉ちゃんの流海(るみ)お姉ちゃんだよ!」


 しかし、そんな中で荊棘が未杜を制する。


「アンタは黙ってなさい……。真面目な話なの……」

「はい……」


 しょぼくれた未杜の頭を撫でながら、女性はヨロヨロと上半身を起こす。


「そう。私がヘカテー。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

「やはりそうか……。オリュンポス十二神、アポロンの勢力に加担し、ここにいる地球人を救おうとした。しかし、潰滅の暁による追撃に遭い、このルミナスは瓦礫の地と化した。ここに避難させた地球人たちに、少しでも明るい気持ちで生きていて欲しいと、貴女は『幸福な幻想を見せる呪い』を掛けたんですよね」


 全てを一言で告げた行方に、ヘカテーは目を見開かせる。


「ふふ。やはり、あの潰滅の暁と同じ人物なだけはある……。もう、全てお見通しでここまで来た……というわけだ」

「しかし、判らないことがあります。暁はこの場所に貴女がいることを判っていた。それなのに襲撃ができなかったのはどうしてですか?」

「さあ……()()()()宿()()()()()()()()()、判るんじゃないかな……?」


 他の全員が疑問符を浮かべる中、行方は直ぐに口を開いた。


()()()()()()()ですね」

「その通り……。運命というものは面白いものだね。私は、元の次元で行方行秋により救われ、また別の次元の行方行秋により殺されかけ、そして今、この次元の行方行秋に出会った」


 全員は目を丸くして聞いていた。しかし、行方だけは顔色を一切変えなかった。


「暁の話を振り返ると、矛盾した点が少し見られた。オリュンポス十二神が復讐勢力と救済勢力に別れている世界線ということは、楽くんのお父さん、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということになる。暁はこの次元の僕と話を合わせる為、『夏目さんの封印に成功して異能力が消失した』と言っていたが、アテネが僕と契約したのはもっと前のことだ。浄化がどうなったかはその世界によるのかも知れないが、アテネが反勢力にいるとは思えない。逆に、いたとするならば、ここまでの救済は成し得なかっただろうし、救済勢力にいるならばもっと上手くできる。僕だって何もしないはずがないからな」


 トートは頭が追い付いていないニコ、昇月の前に出て、補足説明をする。


「つまり、この崩壊都市にいる地球人の次元の行秋は、アテネやヘカテーと共に救済に当たった。そして、また別の次元から来た潰滅の暁により襲撃を受けた。それにより、ここにいるヘカテーは力を失くし、()()()()()()()()()()()()()()……ということだな」

「で、でも……別の次元の行秋三人が、全て関わってるって都合が良すぎない……? 潰滅の暁が追ってきたってことまでは判るけど、そこに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のって……奇跡が出来過ぎているっていうか……」


 ニコは不安そうに告げる。そう、ここまでの奇跡的な偶然が重なっていることが、もし人為的なことだとすれば、全てはその者の掌の上だということに他ならない。

 しかし、ようやく思考が追い付いた昇月は、汗混じりに口を開いた。


「もし、潰滅の暁のことを真眼の紅が "視た" として、他の次元とはいえ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()としたら……」


 全員がゴクリと息を呑む中で、行方の表情だけは依然として変わることはなかった。


「恐らくはそうだろう。そして、僕とアテネが考え得る最善で救済を望むのなら、『別の次元の暁と対抗できる自分とアテネに続きを託す』だろう」

「真眼の紅の能力で未来を見通した潰滅の暁と、アテネの脳をフルに使った行秋との()()()()が起きていた……?」

「そうだろうな。恐らく、現在、全ての次元の行方行秋の中で一番力を付けたのは暁だ。それに対抗できるとしたら……同じように異能力を持ち、アテネの回復を暁よりも進めていた……」

「それが、()()()()()()()……!!」

「この崩壊都市への移住は、アポロンら十二神が手伝ったと話していた。そこは真実なんだろう。アポロンは予言の神と言われているからな。それらを鑑みるに、全ての並行世界の中で、同等の異能力を身に付けて宇宙に発ち、よりアテネの回復が成せていた僕のいるこの次元に移住させたんだ」


 そして、行方はもう一つ悟ってしまった。それは、アテネも考えていることだった。

 潰滅の暁がいる限り、()()()()()()()()()()()()()となっている。それに対抗できるのは、アテネを実体化させるまでに回復させた、()()()()()()()ということに――――――。

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