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第五話 マナーは守ろう、法律も守ろう。

 あ~あ、何でこんな事になっちゃうかな~ただでさえ色々あったのにあの男を監視しろ? 冗談じゃない! これからレストランに行くのも不安だし、そもそも監視してどうにかなる相手じゃ………


 「何を話していたんだ?」


 「貴方には関係無い。」


 「まあいい、行くか。」


ディエゴに引っ付いているエリザベスと嫌がっているディエゴは周りの人達から注目されてて、皆何かコソコソ話している。私の悪口とかじゃなければいいんだけどな、車まできても相変わらず前に座らされるし、何より嫌なのは運転手さんと気まずい事! 何を話せばいいか分からないし、無言でいるのは私の性格上、不可能に近い。レストランまで近いといいけど。


 「何処にレストランはあるんだ? 遠いなら帰るぞ俺は。」


 「直ぐ近くですよ! とっっても美味しいお店でお気に召すと思います! ああ、天使様とお食事できるなんて夢のよう………」


 「そうか。」


もしかして私の為に聞いてくれたのかな?


 「やっぱ遠い店に行かないか?」


 「………」


 「え? 予約してしまいましたし………」


 「じゃあいい。」


こいつがそんな事する訳無かった………そんな事を考えた自分を殴ってやりたい。


 「それにしても本当に綺麗なお羽………白くは無いんですね、触っても?」


 「駄目だ。」


 「そうで………きゃ! わわ、すみません、急に車が………」


 「ならさっさとどけ、暑苦しい。」


私は見ていた! エリザベスが触りたいと言った瞬間! 運転手さんがハンドルをこれでもかと切った後、何事も無かったかのように戻すのを! 相当優秀な人だけど、無表情だし何を考えているのか………


 「もうそろそろですね、アレルギーなどは?」


 「俺に? ある訳ないだろ。」


 「私も何でも食べれる。」


 「………そうですか。」


車が止まった、着いたのかな? 勝手に出ていいものだろうか?


 「着きましたね、待ってれば運転手が………」


 「一々待ってられるかよ。」


レストランは物凄い豪華で外観を見ただけで怖気づきそう。軍服だし汚いし、こんな所入るだけで消滅しそうなんですけど………恐る恐る中に入ると、建物の中なのに噴水があって、至所が金色で、カーペットも汚れ一つ無いし、新築なのか、誰も居ないみたいに綺麗。


 「こちらです。」


席に案内されるが………


 「メリッサさんはこっち、ごめんなさいね、席が取れなかったの。」


一人だけトイレの二人席に座らされてしまった。まあ、一人の方が気が楽だけど。というか他にもお客さんがいるけど、空いてる席もあるし、本当に取れなかったのかな、予約してるって事だろうけど………


 「俺もそっちで食おう。」


 「え?」


 「え?」


 「折角エリザベスが招待してくれたんだからそっちで食べなさいよ!」


 「お前と食べたいんだ。」


 「………」


 「………こうして椅子を動かせば全員で食べれますよ、店の人には私から言っておきますね。」

 

 「それがいいわね………」


こうして三人で食べる事になったのだった………待っているとウェイターさんがやってきた。


 「メニューでございます。」


 「………ディエゴはどうするの?」


 「お前と同じやつでいい。」


 「何で?」


 「それ頂戴とか言われたくないからな。」

 

 「そんな事言う訳ないでしょ!」


 「いいから早く選べよ。」


 「う~ん………このパエリアにしようかな。」


 「俺も。」


 「私はこのパスタにします。」


 「分かりました。少々お待ちください。」


頼んだはいいけど、話す事も無いし、気まずい時間が続いてしまっていた。行儀が悪いのは分かっているけど姿勢を正して、ジッと待つのは中々つらい。


 「お待たせしました、こちらのパエリアはアルバスラインの………」


 「おい、待て、今からこのパエリアの説明でもする気か? たかがパエリアだぞ? 口に入れりゃ直ぐに分かる事を他人のお前に長々説明されて時間を奪われる気持ちが分かるか?」


 「も、申し訳ありません。」


シェフだと思われる人は足早に去ってしまった。


 「クズ。あんたはクズ。」


 「で? お前は聞きたかったのか? というかあれを聞きたい奴なんかいるのか?」


 「マナーってものがあるでしょ! それに好意を無下にするなんて………」


 「そんな服で来てるやつにマナー云々は言われたくないな。」


 「うっ、それは………」


 「お二人とも喧嘩しないで………」


 「ふん! ちょっと席を外すぞ、トイレは何処だ?」


 「ええっとあそこですよ。」


 「大声でそんな事言わないでよ………」


最悪、周りのお客さんもこっちを見てるし、恥ずかしい。エリザベスと二人きりなのも気まずいしなぁ~~。机に突っ伏していると、誰かの足音が聞こえた。


 「エリザベス様、少々よろしいでしょうか?」


 「何でしょう?」


 「実は………………」


来たのは運転手さんだった。何かエリザベスの耳元で囁いている。


 「な? ………すみません私も席を外しますね。」


 「え? うん。」


という訳で一人になってしまった。先に食べてしまうと失礼かな? そんな事を思っていると、ディエゴが戻ってきた。明らかに早いし、出なかったのかな?


 「早くない?」


 「あの女は?」


 「何でか席を外したけど………」


 「それちょっと貰うぞ。」


 「な! 貴方のを食べればいいでしょ! 同じなんだから!」


 「………………」


 「どうしたのよ、何とか言いなさ………」


 「下剤が入ってるな。」


 「えっ………」


 「食べない方がいい、俺のと交換しろ。」


 「嘘でしょ?」


 「じゃあ食えばいい。俺は知らん。」


 「そんな………貴方は大丈夫なの?」


 「この期に及んで俺の心配か? 優しさは身を滅ぼすぜ。俺なんかに効くかよ、どんな毒だろうが薬だろうが俺には効かん。」


そう言うとディエゴは私の皿と自分の皿を交換した。


 「そっちは入ってない。」


 「………分かってたのね、それで同じ料理を頼んだの?」


 「食うまでは分からなかったさ、ただ、あの女はやりかねないと思ってな。」


 「………そう。」


何を言ったら分からず、沈黙しているとエリザベスが戻ってきた。


 「お待たせしました、実は車が故障してしまって、今両親に連絡を取って他の車を用意して貰っています。」


 「そうか。」


その後は何事も無く、食事を終える事ができた。


 「メリッサさん。」


 「何?」


 「その………大丈夫ですか?」


 「何が?」


 「いえ、何でもないです。」


 「そう………。」


 「まあまあだったな、もう出るか。」

 

 「あ、待ってください、車がまだ………」


 「もういいだろ、俺は出る。行くぞメリッサ。」


 「え、う、うん。」


 「歩きだと大変ですし………」


 「俺が誰か忘れたのか? 飛べばいいだろう?」

 

 「私はどうするのよ!」


 「持ってくさ。」


 「あんなのもう御免なんですけど!」


 「私も連れて行ってはくれませんか? 家までの案内は……」


 「それは無理だ。重くてとてもじゃないが運べん。」


 「………」


 「じゃあもう行くからな。」


 「あ、ちょ、いきなり掴まないで………きゃ!」


ディエゴに捕まれ、天高く飛び立ってしまった………


 「さあ、何処に行くかな。」


 「うっ、吐きそう、食べたばかりだから余計に。」


 「あの女に掛けたら面白いんじゃないか?」


 「面白くない冗談ね、そもそも貴方があんな行動しなければ下剤を混ぜられる事も………」


 「いや、やるねあの女は。」


 「そんな事………」


 「見るか?」


 「え?」


ディエゴがそう言った途端一気に加速し、空で大きく円を描き、急降下し始めた。


 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


地面に衝突する寸前、ふわりと浮き上がり、何とか無事だった。


 「このクズ野郎ぉぉ!」


 「暴力的な女だな。殴る事は無いだろ。」


 「大有りよ!」


 「ふん、こっちだ、早く来い。」


目を閉じていて分からなかったけど、どうやらさっきのレストランの裏に来ていたようだ。


 「何してるの?」


 「厨房の換気口がある、そこに耳を澄ませてみろ。」


 「何でそんな事………」


 「どういう事!?」


ビクッ!


 「混ぜたんでしょう!? じゃあ何で効いてないのよ!」


 「そ、それは分かりません、偶々効かなかったとしか………」


 「そんな事ある訳ないでしょう!」


 「でも事実として………」


 「この店に金を出しているのは誰!? お父様に言いつければあんた達なんて何時でも辞めさせられるのよ! 無職になりたい訳!? 止めたらこの町で就職なんて出来ると思わない事ね!」


 「はい………」


 「もし次があるなら失敗は許されないわよ?」


 「承知しております………」


 「取り合えずあのディエゴ様にはここの常連になってもらうから、貴方は絶対に機嫌を損ねないようにサービスして、もしあの女が傍に居たらあの女の印象を下げるような事を全力でやるの、何でもいいわ。下剤でもいいし、とびっきりまずい料理を振る舞うとか、最悪毒を盛ったっていいわ。」


 「はい………」


 「じゃあ私はもう行くから、もしディエゴ様が来たら直ぐに知らせて。」


 「分かりました。」


嘘でしょ? エリザベスがあんな声を出すなんて、それにあんな事………


 「な? やるだろ? あの女。」


 「………………もう嫌、軍も止めるわ。貴方とも、もう会わない。」


 「軍に居ようがいまいが関係無さそうだがな。」


 「貴方がいなければいいでしょ。」


 「俺の有無はトリガーに過ぎん、あの心から察するに、その内必ず同じ事をしたはずだ。」


 「そんな訳ないでしょ………貴方が現れる前は普通だったのに………」

 

 「時は戻らない、どうするんだ?」


 「……………」


 「………あの時死ねばよかった。」


 「あの時?」


 「貴方には関係無い。」


 「………」


 「え? ちょ、いきなり何!? ちょっと降ろしてよ!」


ディエゴがいきなり私を持ち上げた。今までとは違って優しく、お姫様みたいな体勢になった。飛び立つ時もゆっくりと、滑らかに空に上がっていった。初めて気持ち良さを感じたし、ディエゴは私の事を気遣ってくれているような気がする。


 「…………気持ちいわね。」


 「だろ?」


 「私を慰めてるの?」


 「別に。」


 「私ね、昔、家が火事になっちゃったの。」


 「ほう。」


 「私だけ取り残されちゃったんだけど、もうダメって時に消防隊員の人が助けに来てくれて助かったの。それで消防隊を目指すようになったんだけど………」


 「月並みだな。じゃあ何で軍人になったんだ?」


 「試験に落ちちゃって、体力も無かったし。」


 「軍の方が厳しそうだがな。」


 「その次は警察官になろうと思ったんだけど、試験も落ちるし、法律も全然覚えられなくて………」


 「アホ。」


 「うるさい。それで、消去法で………」


 「選ぶ立場じゃないけどな。」


 「うるさい、で! 軍に入ったんだけど、試験も無いし、どんなに体力が無くても止めさせられる事は無かったからそれは良かったんだけど左遷に次ぐ左遷で事務仕事しかさせてもらえなくて………」


 「住民の避難をしてただろ?」


 「偶々人手が無かったのよ。」


 「成程な、お前がいかに無能か分かったが、恨みを買うような人生では無さそうだな。」


 「顔はいいからね、学校とかではモテまくりだったから嫉妬とかもあったわ。」


 「女は怖いな~」


 「それでも仲良くしてくれる子は多かったの、それで私を中心に宗教ができたり………」


 「そうか宗教が………え?」


 「私を崇める女の子が多かったの、告白されたのも男より女の子の方が多かったわ。それで学校ではウサギをね、餌を上げたり………」


 「ちょ、ちょっと待て、宗教? 宗教? 崇める?」


 「亀も居たな、魚もいたし、結構先進的な学校で………」


 「宗教ってなんだ? 崇める? 子供だろ?」


 「何でそんなに気になるの?」


 「そりゃ気になるだろ………」


 「嫉妬する子も居たんだけど大体の子は私を崇めてたわ。先生も。」


 「………楽しそうだな。」


 「楽しかったわ、皆優しかったし、いい思い出ね。」


 「お前は結構面白い奴なのかもしれん。」


 「そう?」


 「ああ。もう少し話を聞きたいが、風の音で聞きづらいな、何処かいい場所は無いか?」


 「私はそろそろ家に帰りたいんだけど、狭いし何処か………」


 「家? 基地の寮とかじゃないのか?」


 「寮にはちゃんとした兵士が住んでるわ、私って殆ど事務員だし銃も持った事無いのよ、私としては寮じゃないのは良かったんだけど、軍から重要視されていないという事だからちょっと複雑。」


 「何処だ?」


 「狭いし他の………」


 「何処だ?」


 「だから狭いし………」


 「何処だ?」


 「だ、か、ら、狭いし、汚いし………」


 「何処だ?」


 「…………………………あっち。」


家に行く事になってしまった。狭いし、何より汚いから誰も入れたくないんだけどな………待って、ディエゴが居座ったりしないよね? こいつは泊まる所が無いって言ってたけど、汚いから嫌がるだろうし、エリザベスの家に行けば喜んでもてなしてくれるだろうし、軍だってそれなりの部屋はあるはず……………大丈夫だよね?



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