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第二話 ファッションは羽から?

 「ここか?」


 「ええ、そうよ。というかあなたお金持ってるの? 天国でも同じ通貨な訳?」


 「金? 持ってないが。」


 「じゃあどうやって服を買うのよ!」


 「金ってあれだろ? 人間が物やサービスを利用する時に使うあれだろ? 犯罪だとか戦争の原因になったりして人間は金の為ならどんな非道な行いもできるあれだろ?」


 「……最初は合ってるけど、後半は拗らせすぎよ。というか結構詳しいのね、人間嫌いのくせしてどういう訳?」


 「天国には人間を学ぶための退屈で空虚で稚拙で人間の善性を信じている授業があるのさ。」


 「貴方はどうせ落第でもしたんでしょ、それで堕とされたって訳ね。」


 「ちげぇよ、そんな事よりお前が服を買え。」


 「はあ? ふざけないでよ自分で働いて買いなさい! 天使だかなんだか知らないけどあんたはただの無職なんだから!」


 「働く? 私が? 面白くない冗談だな。そもそも天使の私が金を払うというのが気に食わない。店の者に献上させてやる。」


 「ちょっと待ちなさいよ! そんな事私の前でやってみなさい、逮捕するんだから!」


 「たい、ほ? ってなんだ?」


 「逮捕よ逮捕! 捕まえて牢屋に入れて反省するまで閉じ込めるの!」


 「いや、それはおかしい。逮捕というのはこの国ではあくまで一時的な身柄の拘束に過ぎないはずだ。被疑者の逃亡や証拠隠滅を防止する為に強制的に身柄を拘束するだけで逮捕されたら牢に入る訳ではない。お前は私人で現行犯逮捕は可能だが、私を捕らえたら即刻、検察官か警察、軍隊に私の身柄をお前の身分証と共に引き渡さなくてはならない。それに、私が犯行を犯し、お前が現行犯逮捕をしたとして、この世界の者ではなく、文化も知らない者に罪の意識や、自ら善悪の区別をつける事は非常に困難であり、天界を追放され精神的苦痛を受け、帰る当てもない者に責任能力があるとは思えない。よって私は無実になる可能性が非常に高いが、お前は私に対し、虚偽の情報を伝え、脅し、私に精神的を与えようとした事について謝罪は無いのか? 私がお前を拉致と脅迫で訴えれば私の方に分があるはずだ。裁判は原告が天使という前代未聞の体制で行われ、世界的に注目される事になる。そして勿論お前にも注目は集まり、私の美貌に惹かれたり、天界に媚びを売りたい奴が私の味方をしてお前は世界からバッシングされる事になる。その覚悟はできているのか?」


 「わ、わ、私がぜ~~~んぶ! 悪かったから、少し黙って。」


 「ふん! 同じ立場だと思うなよ。」


 「ぐぎぎ、くそ~それに私は私人じゃないし!」


 「ん?」


 「こう見えても私は軍人なの!」


 「お前が………軍人? 世も末だな………」


 「うるさいわね! 頑張ったのよ!」


本当に何なのよこいつ! 天使? 気狂いの間違いでしょ! どうしようかな~仕事もあるし、いきなり居なくなった私を皆探してるかも………でもこいつ、抵抗したら 何かしてきそうだし、さっきドラゴンを一撃で倒したみたいに私を………いや、逃げよう。大声で叫びながら逃げる。それしかない。


 「そんな事するんだったらお前が気狂いだな。」


 「逃げる以上に良い選択しなんて………え? も、も、もしかして心が読めるの?」


 「ああ。」


 「うっそでしょ!? そんな事できるの!? ていうかそんなの許される訳!?」


 「天使なら皆できるさ。」


 「もう二度と私の心を読まないで! 心を読まれるのがこんなに恥ずかしいなんて!」


 「対象の感情が荒れている時にしか読めんがね。」


 「え!? じゃあ、冷静になればいいって事!? ………ふう、深呼吸、深呼吸。」


 「そういう事だ。」


 「これで安心………って! なんで脱いでるの!?」


 「汚いしな、お前が服を買わないからこうなるんだ。」


 「わ、分かったからちょっと待ってて!」


くそ~なんなのよ! 取り合えず店に入らなきゃ! う~んどれにすれば………


 「どれもこれもセンスの欠片も無い服ばかりだな、この中から選ぶのは非常に心苦しいがそこにあるやつは幾分かマシだな。」


 「…………もしかして私、いいように操られてる?」


 「光栄に思えよ?」


 「…………………」


 「お! 今は心が読めないなぁ~ずっとその調子でいたらどうだ?」


 「…………………うっ………」


 「あ~悪かった、悪かったから、機嫌を直してくれ、私の顔を間近で見せてやるから。」


 「本当にくそムカつく事に貴方の顔を見てると気分が良くなってくるわ。本当になんでそんなに顔がいいのよ。」


 「神は途轍もないミスを犯した。自分よりも美しい物を作ってしまったのさ。」


 「神様に仕えているのにそんな事言っていいの?」


 「感謝もしてるさ。それにもう堕天したしな。」


 「はぁ~ドラゴンを倒してくれたお礼に服は買ってあげるからさっさと選んで。」


 「ん~~これにしようか。」


手に取ったのは黒いジャケットに、黒いシャツ。それと黒いズボンだ。


 「え? 全部黒いじゃない、天使なのに合わなくない?」


 「私ならなんでも着こなせるさ。それに、私は堕天使だ。過去と決別する為にも黒い服にしたのさ。」


 「ふ~ん、ちょっと値段見せて………………他のにして。」


 「何で?」


 「何でっていくらすると思ってるのよ! 私の給料2ヵ月分よ!」


 「少ないね。」


 「うるさい!」


 「私人がドラゴンを討伐した時の報酬はそんなもんじゃないだろう? 払え。」


 「…………今は出してあげるから、後で一緒に基地にいきましょう。」


 「ああ。」


服を試着室に持っていき、中で着替える事にした。


 「さっさと着替えてよね。」


 「はいはい。」


はあ、何でこんな事に、仕事中に攫われるわ、大金払わされるわ。何で私だけ……………いくらなんでも不運すぎる。あ~~ミランダさんにどやされるんだろうなぁ、嫌だな~


 「そのミランダってのは誰だ?」


 「ひ、人の心を読まないで!」


 「で、誰なんだ?」


 「…………上司よ、なんか私、嫌われてるみたいで何かと怒鳴られるの、嫌になるわ。」


 「へぇ。」


 「随分淡泊な感想ね、何か励ましの言葉とかない訳?」


 「ある訳ないだろう? どうでもいいよ。」


 「はあ、何で貴方ってそういう………」


ビリッ!


 「え?」


ビリ! ビリリッ!


 「な、何の音? ………まさか!」


 「おい! 急に開けるなよ!」


 「服を破いちゃった訳!?」


 「ああ、別に買うからいいだろ。」


 「何でそんな事するのよ!」


 「そりゃ、羽を出さなくちゃいけないからな、店主に言っとけ、次からは天使用の服を用意しろとな。」


 「………はあ。」


その後は店主さんに謝罪してお金を払って店を出た。まだこいつと行動しなくちゃいけないなんて気が滅入りそう………


 「…………」


 「ん? どうしたの?」


 「別に。」


 ディエゴは店を出て直ぐの所で空を見上げながら立ち尽くしていた。今までの自信満々の表情とは違い、どこか哀愁漂う顔をしている。その顔を見て私は少し見惚れてしまった。


 「もしかして家族が恋しい?」


 「冗談でもキツいぜ。そんな事あるかよ………」


 「また天界に戻れる可能性はあるの?」


 「…………分からん。」


 「そう………報酬を受けとったらどうするの?」


 「さあな。」


 「帰る所は?」


 「無い。」

 

 「…………軍で保護してもらえるかもよ?」


 「保護? 俺が? 嫌だよ、私が下みたいじゃないか。」


 「四の五の言ってられないでしょ?」


 「自分でどうにかするさ。」


 「そう………………じゃあ、そろそろ軍に………」


 「なあ?」


 「何?」


 「この下界というか、この世界の事どう思っている?」


 「え? そう言われてもな~私は結構好きだけど………」


 「天界には争いも病気も嫉妬も痛みも死も無い。平和を体現………いや、逆か。天界を何と表すか? そう問われた時に平和という言葉が生まれたに違いない。退屈だが、誰しもが夢見た楽園がそこにはあるんだ。」


 「羨ましいわ、私も死んだらそこに行けるの?」


 「善行を重ねたらな、だがおすすめはしない、マジで退屈だからな。」


 「平和以上に良い事なんて無いと思うけど………」


 「俺はもうあそこには戻れない。ただ、あいつらに一泡吹かせてやりたくてな。」


 「戻れないのにどうするの?」


 「………国を創る。」


 「え?」


 「正確言うと、この国を天界よりも遥かに楽しく、同じくらい平和で、刺激溢れる国にするんだ!」


 「そんなの無理に決まってるでしょ、この国に一体幾つの犯罪と、治すことのできない病気があると思っているのよ、死だってあるし。」


 「私も人間なんかが居る世界でやれる気はしないが、それくらいしか天界の奴等に一泡吹かせる方法が思いつかないんだ。」


 「そんな事言ったって………」


 「お前はどう思うんだ? 争いが無くなるのはお前だって望んでいたんじゃないのか?」


 「それはそうだけど………」


 「お互いの利害が一致するとは思わないか? 私がドラゴンを倒す様を見てただろ?」


 「確かに、途轍もない力だったけど、利害って?」


 「私の力を貸そう、そしてお前は案内と、私の身の回りの雑務をしてくれ。」


 「それじゃ召使みたいじゃない! いきなりそんな………」


 「お前はなんで軍人になったんだ? 何かを傷つけたいからなった訳じゃないだろ?」


 「………助ける為よ。」


 「私の力があれば一体何人救えると思う? ドラゴンだろうが何だろうが一撃で撃破して見せるさ。」


 「貴方が軍隊に入ればいいじゃない。」


 「身の回りの世話をしてくれる人が欲しいんだよ。それに、何かに在籍するなんて悪寒がする。」


 「軍に入るなら軍側がいくらでも世話人をつくてくれるはずよ、貴方の力ならね。」


 「…………一旦お前でいい。」


 「何で?」


 「別にいいだろ。」


 「気になるじゃない。」


 「うるせーな、さっさと行くぞ。」


 「ちょ! ちょっと待って! いきなり担がないでよ、まだ心の準備が………」


 「行くぞ。」


 「う、うわぁぁぁ!」


そうしてメリッサを担いで空に飛び立った訳だが、こいつは相変わらず暴れるし、耳元で何か叫んでる、非常に不愉快極まりないが、美しい顔に免じて許してやるとしよう。


 「何処に行けばいい?」


 「ひ~と~ご~ろ~し~!」


 「大人しくしないとうっかり落しちまうぜ。」


 「貴方が急に飛んだくせに~!」


 「それで? 何処にいけばいいんだ? 三度目はもう少し怖い目に遭ってもらう事になるぜ?」


 「北よ! でかいレンガの無骨な建物があるからそれを探して! ここいらじゃ一番大きいから!」


何度やっても慣れない! こいつは雑に私の事を持つし、心配する様子も無いし! って言うか今も心を読まれてるって事よね、何かこいつにダメージを与えるような事を考えないと………でも、この、人の心を持たない悪魔に何かダメージを与えられる考えって………いや、ダメージは与えられない! せめて歌でも歌ってごまかさないと………ル、ルンルン、昨日の花はルンルン、青色で~、ルンルン、今日見たら赤色~ルンルン、ルン、大切な仲間~ルンルン、全員蹴散らせ~ルンルン、明日見る花も赤色~


 「ちなみにだが、心を読むかどうかは自分で操作できるから別に聞かない選択肢をとる事もできるぞ。」


 「…………」


 「馬鹿みたいだな。」


 「う、る、さ、い!」


 「うるさいのはお前だ、後、歌下手なんだな。」


 「…………今日は人生最低の日よ。」


 「俺と出会えたというのに、最悪だなんて、一体どんなに幸せで何の不自由も無い人生だったんだ?」


 「…………神様に祈りって通じる?」


 「どうだかな、いつも暇そうにしてたが願いを叶えている所なんて見た事ないし。」



神様、神様! 私は今までの人生、真面目に生きてきました! なのにこんな仕打ちはあんまりです! 聞けばこの男、天界から墜ちてきたと言うではありませんか! こんな傍若無人の化身みたいな男は天界にはふさわしくないとは思いますが! それでも! この男をどうか何処かに! できれば地獄に! 連れて行って下さい! お願いします! 確かにこの男の力は凄まじいですが、ドラゴンやリヴァイアサンなどの凶悪な魔物を倒す力がありますが! 絶対この男はその力を良くない事に使います! この国が崩壊する前に! 不幸な目に遭う人達が出ないように! どうか! この男を地獄に送って下さいぃぃ!


   


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