精進落とし
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
あの場所に訪れると、よく起きる反応。
「君、少し此方へ」
強く香るジャスミンの香りに包まれて、クラクラする。朦朧とした顔で見上げると、一人の麗人が真剣な顔で私の顔を見詰めていた。
「梅香の君……?」
「大丈夫。悪い様にはしないよ」
軽く唇に触れて、爪の先を歯にお当てになる。首の下に手を入れて、筋の窪みに爪をお立てになる。途端、半開きになった口端から、黒い、澱みの様なものが止めどなく溢れ出す。
「……っ」
「怖くないよ。身を任せて。全て吐き出して」
ただあやす様にとんとんと、項を叩かれた。声の主に促されるまま、彼女は目を閉ざす。眠りに堕ちた体が弛緩して、後はなされるがまま。
目が覚めると境内の長椅子に腰掛けて、半身を梅香の君に凭れていた。飛び上がって距離を取ろうとすると、其れを制しする様に背に手が回った。お陰様で転ばすに済んだ。
「気分はどうかな?」
「心地好いのですが……なんだか疲れて、軽い頭痛が……」
森林の中でひたすら歩き回った様な、筋トレの後の様な、独得の心地好い疲労感が体を満たしていた。ただ体に無理を強いたのか、脳内に鈴を仕込んだ様に軽い頭痛がした。
梅香の君はにこやかな笑顔で、小首を傾げになる。
「何方が重い?」
「心地好い方が……」
そう申し上げると、静かに頷きになり、ただ一言。
「眠った後は、俗っぽい事、すると良いよ。肉を食らったり、酒を飲んだり。
今の君は中の澱みを吐き出し切ってるから、少し中身を穢すんだ。俗世に染まれるように」
その後は心地よい疲労感に塗れて、家路に着いた。布団にくるまって目覚めたら、母が浴びる程のショートケーキを買っていた。
これをなさったのは、梅香の君ではないんですよ。
その上、あの方がなさったのは、こめかみに指を当てて流し込む手法でしたが。
でも本日、似たような事が起きたので。
神社の長椅子に腰掛けて、瞑想というかぼんやりするのが好きなんです。
そうすると嫌なもの全部吐き出して、くるっと丸まって眠りたくなります。
吐き出す という行為は心地好いですが、疲れますので。
これを好転反応、馴染み深い言葉で言うならば、デトックス。
でもこのまま俗世に染まると、体制がなくて潰されるので、ある程度体を慣らそうね。
というのが神社の 精進落とし というのだそうで。
帰りたくないよ〜。しがみついて寝てたいよ〜。腰が重いよ〜。
と駄々を捏ねて困らせたのは私です。
骨董品の店主の話が書きたいです。