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 結局、何の収穫も得られなかったなぁ。

 ドラグル族の死体も綺麗さっぱり消えちゃったし。

 それにしても、あの人族は一体何を喋ってたんだろう?

 聴覚強化で聞いた感じだと、化け物を撃墜したとか言ってたけど。


 あ、というか、私まずいんじゃ。

 ドラグル族の死体が無かったってことは、私の発言自体が嘘ってことになっちゃう。

 

 あれだけの人族がいたんだ、楓子様が叫んだりしたら速攻で駆けつけるだろうし。

 魔族である私を許してくれてるのは楓子様のみ、他の人族は私を許しはしないはず。

 そして角を折られて、私は死ぬ。

 嫌だ、死にたくない。


「あ」

「ご、ごめっなさい! 嘘じゃな、です!」

「アズちゃんが言ってたのって、コレ?」


 洞窟に戻ってからずっと平べったい何かをいじってるなって思ってたけど。

 なんだろう、ちょっと眩しくて、見えづらい何かが楓子様の手の中に――って、ドラグル族!? 


「え……え、え!? ドラ、ドラッグが、この中にいる、ですか!?」

「あはは、テンプレな反応だなー」

「て、てっぷれ?」

「ううん、なんでもない。これはね、遠くの映像を映し出す機械なんだ。こんな山奥でも電波が届いてるんだから、凄いよね」


 凄い、なんなのこの魔法は。

 遠見の魔法はあったけど、あれは思念を飛ばすだけで他の人に見せる事は出来ないはず。

 それに電波ってなに? なにが届いているの? 私には何も見えないけど、何かあるの?


「それにしても、しばらくスマホ見てなかったんだけど。なんか、いつの間にか世界が変わっちゃってるんだね。アズちゃんがいるのも、この変化の一つなのかな?」

「さ、さぁ? どっ、なで、しょう?」

「あはは、そうだよね、分かってたらこんな洞窟に一人住んでないよね」


 光り輝く薄い板に楓子様が触れると、その板は光を消した。

 魔法感知が一切働かなかった、どんな極小の魔力でも感知する自信があったのに。

 魔力じゃないってこと? でも、全然理解できない。

  

 分からないってことは、恐怖だ。


 今の私じゃ、ドラグル族を一撃で屠った人族も分からないし、楓子様の板も分からない。

 どんなにペットを増やしても、今の私じゃ勝つなんて絶対に無理だね。

 別に……戦おうなんてもう、思ってないけど。


「ね、このドラグル族……だっけ? 見に行く?」

「見に行く、です、か? さき見せて、頂きまた、です」

「あはは、今のは映像だったでしょ? 実際に見に行くかって言ってるの」

「? いけ、いけっなら、いきたい、です」


 にんまり笑顔になって、一体何がそんなに嬉しいんだろう? 

 ドラグル族の死体に近づけるのなら、私としても喜ばしい限りだけど。


「よし! じゃあ早速準備しないとだね。コッフちゃんとフーちゃんはお留守番させて、アズちゃんは私と一緒に下山しよう!」

「げざっ、ですか?」

「調べたところ、ドラゴンはここから少し離れた場所に保管されてるみたいだね。大きいから外に展示されてるみたいで、一般人でも見れるって書いてあるから、多分、大丈夫だよ」


 また楓子様、薄い板を眺めて何か喋ってるけど。

 何が、書いてあるのかな? 私にも使えたりしないのかな、それ。

 脇から覗こうとしたら、ふいっと光が消えてしまった。


「うふふ、スマホ、いじってみたい?」

「え……いっ、いぇ! わ、わ、わ、わた、私は、その、ぺ、ぺぺぺ、ペト、でっ、から」

「いいよ、ちょっとぐらいなら。と言っても、そろそろ充電切れちゃうけど」


 充電? また知らない単語が出てきた……でも、それ以上に好奇心が凄い。

 す、すまふぉ? 私が触っても反応するのかな?

 私、一応魔族だし、もしかしたら神聖魔法で弾かれちゃったりする?

 

「ここに動画一覧があるでしょ? 見たいのある?」

「……え、えっと、ど、どう、が? って、なで、すか?」

「あはー、そこからかぁ、でも可愛い、全部教えてあげるからね」


 楓子様が指を動かすだけで、板の絵が動いてる。

 中に何が入ってるんだろう? 沢山の絵が入るには薄すぎると思うんだけど。


「……あ、これ」

「なに? なにか見たいのあった?」

「あ、いえ、その、さっきの」

「え? どれ……あ、充電切れちゃった」


 薄い板は充電切れ? とかいう状態になっちゃったとかで、使えなくなってしまった。

 魔力とは違って、寝ても回復しないらしい。

 充電っていうのをすれば使えるようになるって、楓子様教えてくれたけど。


「ちなみに、アズちゃんは何の動画が見たかったの?」


 洞窟を出る前に、楓子様は私へと質問をする。


「た、大したこと、ないです」

「異世界魔族のアズちゃんが気になる動画って、私的にはすっごい気になるんだけど」

「で、でも、ほとに、大したこと、なっです、から」


 言えない、私が気になった絵。

 そこに描かれていたのは、私を殺した人族だったのだから。

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