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「痒い」


 異常なまでの痒みで目が覚めた。

 魔物二匹と共に洞窟の中で眠っていただけなのに、なんでこんなに痒いの?

 以前とは違う肉体なのを思い出しながら、月明かりの下へと向かい確認する。


「な、なにこれ、どうなってるの」


 全身を這う小虫、それらを払いのけると、肉体の至る所に赤いポッチが浮かび上がった。

 異常なまでの痒みはこれが原因か……虫刺されなんて、以前はなかったのに。


 試しにそれを指で掻いてみると、全身がゾクゾクするぐらい気持ち良かった。

 でも、掻いた途端白い何かと赤い血が出てきてしまって、これはヤバイと悟る。


「魔力を疑似的な尻尾に転化して……炎尾(ファイアーオーグ)ッ!」


 魔法の一つ、炎尾。

 元は自分の尻尾を燃やして相手に巻き付ける魔法だったけど、今は尻尾がない。

 でも、お尻のちょっと上、コリコリとした骨の辺りから炎が噴出してくれた。

 無事操作も出来るようなので、早速自分に巻き付ける。


 炎で消毒だ、きっと虫刺されにも効くはず。


「えひっ、え、あああああ、なんか、熱が痒みを刺激して、ヤバイ、気持ち良くて頭おかしくなりそうッ! いひいいいいいぃッ! 快感がッ身ッ体を支配して、ダメ、変な気持ちになっちゃう! 熱いの気持ちいいいいいいいぃ!!!!! きもちッいいいいいいいいいいぃッ!!」


 想像以上だった。

 快感で死ぬかと思った。

 でも途中から激痛に変わった。

 やっぱり死ぬかと思った。


 全身真っ赤になっちゃったけど、無事痒みを治める事には成功する。

 あまりいい方法じゃないだろうなとは思いつつも、とりあえず今日は寝直すことに。

 二匹から距離を取り、一人膝を抱え込みながらスヤスヤと。


 翌日。


「お腹が減った」


 ものすごい空腹に襲われ、目の前の葉っぱを一口食べてみる事に。

 食べた瞬間、臭みと苦みが口の中を支配して、速攻で吐き出した。

 あんなの食べれない、食べ続けたらそれで死ぬ自信がある。


 他に何かないかなと思っていると、コッフちゃんが魚を一匹取ってきてくれた。

 コッフちゃんは生で食べてたけど、私には無理そう。


 焼いたら殺菌になるし、味も変化するかも?

 試しにそれを炎尾で焼くと、食べれなくはないなって味になった。


 睡眠も一応とったし、食欲も満たされたという事で、住処を作ることに。

 コッフちゃんに連れてきてもらった洞窟じゃ、さすがに生きていけない。

 木材でも集めようかと思ったその時だ、耳に不自然な音が聞こえてきたのは。


「キシャアアアアアアアアアアアアアア!」


 ドラグル族? こんな魔素が薄い世界で、ドラグル族が空を飛んでいるの?

 大空を舞う巨体、空の王者とも呼ばれる彼らが味方になってくれたら、どれだけ心強いか。

 元々が魔物なのだから、意思疎通だけで仲間になってくれるかもしれない。

 そんな淡い期待を抱きながら、声が聞こえてきた空へと魔法で浮かび上がる。

 でも、そんな私の耳に、もう一つの不快な音が聞こえてきたんだ。


 …………ィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッッ!!!


 生き物の音じゃない、物体が空気を切り裂く音。

 爆風と共に目の前を通過するドラグル族と、それを追尾する鈍色に光る何か。

 

「何、あれ」


 見たことのない何かは、炎と共に鉄塊を発射する。

 私の知るどの魔法よりも速く、それはドラグル族へと突進し、爆発した。

 

 ドラグル族の鱗は刃すら通さない鋼の鱗だ。

 魔法だって通用しない事が多く、討伐するのは困難を極める。

 だからこそ頼りになるし、だからこそ仲間にしたかったのに。

 

「なのに……たった、たったの一撃で、殺せちゃうの……」


 圧倒的な力の差。

 ちょっと頑張れば勝てるとか、そういうのじゃない。

 いつの間に、こんなにも戦力に差がついてしまったのか。

 私の目は、その何かの中にいる人族に対して、更なる畏怖の念を抱いてしまっていた。

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