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日本語のイヤ英語のイエス

掲載日:2023/07/01

 知り合いの外国人から子供を預かったときの話である。


 その子は英語を話すが、日本語も多少話せる。きちんとしつけをされているらしく、全体的に大人しい性格だったが、一つだけ気になることがあった。


 お昼のことだった。ごはん食べよう、と声をかけるとその子は「イヤ」と言った。それでごはんを出さないことにしたら、途端に食べると言い、さっきと態度を変えたのだ。


 それだけではない。遊んだ後はおもちゃを片付けようね、と声をかけたときも「イヤ」と言った。それで、片付けはきちんとしないといけないよ、と注意したら、途端にちゃんと片付けする、と言い、さっきと言っていることが変わった。


 返事は元気よくはっきりするが、その子は天邪鬼なようで、「はい」と言う時はなぜか、逆の意味の「イヤ」と口に出す。しかし、わがままで「イヤ」ということは少なく、それ以外では典型的な良い子という感じで、言うことをよく聞いてくれる。返事は「イヤ」だが。


 夕方、その子に聞いてみた。どうして「はい」じゃなくて反対の「イヤ」って言うの、と。すると、意外な答えが返ってきた。日本語の「イヤ」は英語の「イエス」だから、だと言う。


 頭も良さそうな感じの子が、実はこんな勘違いをしていたなんて。もちろんそれは間違っていると伝え、さらに話を聞いた。「イエス」は日本語では「はい」って言うんだよ。どうして今までそう覚えていたのか、と質問した。その子は正直に質問に答えてくれたが、その答えはさらに衝撃的だった。


 その子が言うには、日本製のビデオで、裸の女の人が男の人に対して、嬉しそうに「イヤ」と言って、それを聞いた男の人が女の人と抱き合う場面を見たことがあるという。男の人と抱き合う最中も、女の人は「イヤ、イヤ」言い続けていた。その顔が嬉しそうだったから、「イヤ」は「イエス」だとずっと思っていたと話す。そして、日本のものだけでなく、自国のものでも似たようなビデオを見たこともあるが、自国のビデオは女の人が「イエス、イエス」と言い続けていたらしい。


 正反対の二つのビデオ。どちらも成人向けであることに変わりはなく、子供は見てはいけないものだとしっかり教えた。その子はしっかり頷いてくれた。今度は「はい」と言ってくれた。そして、相手に「イヤ」と言われたらやめてあげるね、とも約束してくれた。


 情報を取捨選択できない幼いうちは、間違った知識を覚えてしまう恐れがある。性的な意味とか倫理的な意味ではもちろんのこと、語学的な意味でもそうだ。


 そういえば私も、和製英語を実際に使われている英語だと混合してしまうことがあるから、気をつけないと。



おわり

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