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Epilogue

 むせるような鉄と油の臭い。

 耳を塞ぎたくなる不快な金属音。


 月面都市ニールの裏通りに広がる光景はきらびやかな表通りのそれとは対照的であった。


 ルークは怪しい露店の間を相棒と並んで歩いた。


「ルーク、あれを見てください」


 ジニーが指さした先にはガラクタが並んでいた。


「あのモーター、御先祖様にピッタリだと思いませんか?」

「はあ?……うーんスーパーダッシュ……読めねえな」


 モーターは古びていて製品名は読めなくなっていた。


「買ってください」

「断る」

「なぜ」

「高い」

「あなたは今回の作戦の御先祖様の働きに報いるべきではありませんか」

「ダクト掃除しただけじゃねえか──今日は買い物に来たんじゃねえの」

「けち」


 恨み言を吐き続けるジニーを引きずってルークは昔馴染みの店を目指した。


 背中の袋には銀色のパックと数個の缶詰が詰まっていた。


 地球、ニホン。


 放棄されたはずの工業地帯で煙突から煙を出す施設があった。


「おい、スパイスはどうなってる?」

「へえ、今月のノルマまでもう少しです」

 

 マスクに顔を覆われた男たちが煮えたぎる釜の前で話していた。


「急げよ」

「へぇ!」

 

 リーダー格の男は部下たちを急かしていた。


 もし今月のノルマを達成できなければ男は恐ろしい粛清を受けることになる。


 男は自分が仕事に失敗した場合に受けるであろう仕打ちを想像して身震いした。


「うおっ!?」


 釜をかき混ぜていた部下が妙な声を上げた。


「どうした?」


 リーダーの男が釜に駆け寄ると、天井の通気孔から何やらパラパラと落ちるものがあった。


「何だあれは……?」


 粉のようなものが釜に降り注いでいた。


 はじめはパラパラと舞い落ちていたが、次第に勢いを増しドサドサと音を立てながら落ちだした。


「お、おい!なにぼっとしてる!?釜を守れ!!」


 リーダーがどやしつけたが時すでに遅し。


 巨大な釜には天井から大量の粉末が投入され、釜の中では赤茶色の液体が煮えていた。


「あ、ああぁ……」


 リーダーは「スパイス」が台無しになったことを知り絶望した。


 部下たちも少し遅れて目の前で起きたことの意味を理解し、床に崩れ落ちた。


(敵対する組の妨害工作か…?いや……俺は終わりだ……もうどうとでもなれ)


 自分の行く末を悟ったリーダーの男は自暴自棄になってマスクを外した。


 すると何やらいい匂いが釜からしていた。


(うん……?)


 釜の中を見ていると口の中に唾液が溢れてきた。


(ごくっ)


 男は恐る恐る釜の中の茶色の液体を指ですくって舐めた。


 ほのかな甘みのあと、ピリッとした刺激が舌を襲った。思わず顔をしかめようとした刹那、香ばしい薫りが鼻を抜けていった。


「……うまっ」


 


 


 


 




 



 



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