冒険者登録
今朝の日刊総合で2位でした。ありがとうございます。
「ようこそ、冒険者ギルドラッセル支部へ。私は職員のルイサと申します。本日はどのようなご用件でしょうか?」
見事な営業スマイルを浮かべてくれたのは、セミロングの髪をした同年代くらいの綺麗な女性だ。髪色がブラウンなので、ちょっと日本人っぽくて親しみを持ちやすいな。
「はじめまして、ツカサと申します。本日はこちらで冒険者登録をしにきました」
「冒険者登録ですね。かしこまりました。登録料として五百ゴルのお支払いとステータスプレートの提示をお願いできますか?」
「わかりました」
登録料として銅貨五枚を支払い、ステータスプレートを提示する。
すると、プレートを確認したルイサが少し驚いたような顔になる。
「ツカサさんは【魔法使い】の固有職をお持ちなのですね」
「はい、ありがたいことに固有職を授かっています」
「年齢やレベルも問題ないですし、固有職があれば戦闘面での心配はありませんね。登録の手続きを進めさせていただきます」
どうやら一応登録できない条件もあるようだが、俺はそれらをすべてクリアしているので問題はなさそうだ。
「こちらの魔道具にステータスプレートを入れていただけますか? ステータスプレートを元にギルドカードを発行いたします」
ルイサがテーブルに載っている箱みたいなものを差し出しながら言ってくる。
中央にはプレートの差し入れ口みたいなのがあり、はめ込むことができるようだ。
なんだか賽銭箱みたいだな。
言われた通りにステータスプレートを差し込んでみると、魔道具に魔法陣が浮かび上がり、微かな光を放ち始めた。
そして、光が消えると前面部にステータスプレートとは違ったカードが出てきた。
「ステータスプレートを回収していただいて結構です」
「はい」
「それとこちらが、ツカサさんのギルドカードとなります」
ステータスプレートを回収すると、出てきたギルドカードをルイサに渡された。
眺めてみると、そこには名前、種族、性別、レベル、固有職、ギルドランクなどが記載されていた。
良かった。(転職師)みたいなややこしい表示はされなかったみたいだ。
ステータスプレートを参考しているだけあって、よく似ているな。
プラスチックのような材質をしているが多少力を加えただけで壊れることはなさそうだ。
「冒険者についてのご説明は必要でしょうか?」
「あらかた知人に聞いてはいますが、念のためにお願いいたします」
エスタやジゼルからそれなりに聞いてはいるが、何かしらの漏れやローカルルールのようなものがあるかもしれないからな。
「まずは冒険者のランクについてご説明しますね。ランクはS、A、B、C、D、E,Fと七段階に分けられており、その頂点に君臨するのがSランクです。当然上に行くのは容易ではなく、Sランクとなると限られた人数しかおりません」
Sランク。当然、ジョブホッパーである俺はその頂点を目指したい。
「やはり、そういった頂点に位置する方は固有職持ちなのでしょうか?」
「はい、その通りです。【竜騎士タイラン】【魔物使いオードニー】などが有名なSランカーですね。他にも冒険者ではありませんが、神殿騎士の【聖騎士スティーフィア】のような上級職についている方は、Sランカーと同程度の実力があると推測されます」
固有職を極めた先にあるとされるのが、【竜騎士】【聖騎士】といった上級職だ。
上級職への至り方は秘匿されているものであるが、転職師である俺はすべて把握している。現在はレベルとジョブレベルが足りないので不可能だが、いずれは上級職にも転職できるようになりたいものだ。
「依頼はあちらにある掲示板からご自身のランクにあったものを選んでいただきます」
ルイサの指さした先には大きな掲示板があり、何人かの冒険者が依頼書とにらめっこしているようだ。
だ。
「通常なら、登録したばかりのツカサさんはFランクの依頼から始めるですが、ツカサさんは固有職をお持ちなのでEランクの討伐依頼を受けることも可能です」
本来はそのランクに見合った依頼を受けるようであるが、最初からズバ抜けた戦闘能力を有した固有職持ちは例外のようだ。いきなり討伐依頼を受けることができるらしい。
多分こういった措置は、今までに何人もの固有職持ちが冒険者として登録し、噴出した不満を受けての措置なのだろう。最初から実力があるとわかっているのに、遊ばせておくのもギルドとして勿体ないだろうしな。
一応、パーティーを組めば、一つ上までのランクの依頼を受けることができるらしいが、余程信頼関係のある仲間でもない限り、推奨されないようだ。
それもそうだ。魔物と対峙するのも命がけだからな。遠足気分で死地に連れ回し、冒険者が死なれるとギルドとしても困るだろう。
「ランクの昇格は依頼の達成や、倒した魔物によってギルドが決定いたします。また依頼の達成率が悪い場合は、降格処分もあります」
これも聞いていた通りだな。
冒険者ギルドは冒険者と依頼者を仲介する人材派遣企業のようなものだ。
そのランクに相応しくない者に依頼を受けさせ、失敗を繰り返させるわけにはいかない。
実力がランクに見合っていないと判断された者は、容赦なく降格させるというわけだ。
まあ、これは資本主義社会で揉まれていた俺にとっては日常茶飯事なので問題ないだろう。
他にもルイサは冒険者の注意点や、ギルドカードを紛失した場合などの細々としたことを説明してくれる。
「何か気になるところやご質問はありますでしょうか?」
一通りの説明が終わると、ルイサが尋ねてくる。
基本は聞いていた通りのものだ。独自のローカルルールもないし、細かな注意事項も常識の範囲だ。特に気にすることはないだろう。
「いえ、大丈夫です。ご丁寧にありがとうございます」
頭を下げて礼を告げると、ルイサは目をぱちくりとさせた。
「……どうかしましたか?」
「いえ、ツカサさんは固有職持ちなのに随分と腰が低いので驚いてしまいました」
エスタにもそう言われたな。この世界の固有職持ちというのは、どれだけ鼻持ちならない奴が多いのだろうか。
まあ、生まれてこんな特別な固有職を持っていれば、他人よりも優れていると自覚してしまうのも仕方がないのかもしれない。
とはいえ、俺はそうはなりたくないものだ。
「すみません。変なことを言ってしまって。何かお困りのことがございましたらお気軽にご相談くだいませ」
「はい、その時はよろしくお願いします」
冒険者登録が済むと、俺は受付から離れて掲示板に移動する。
街に着いたばかりなのでいきなり依頼を受けるつもりはなかったが、どんな依頼があるのかは見ておきたかった。
掲示板を見てみると、様々な依頼書が張り出されている。
魔物の討伐、薬草の採取、街の清掃、荷運び、お使い、介護といった実に様々な依頼がある。
本当に冒険者というのは何でも屋のようだ。
変わったものだと固有職を指名した依頼なんかもある。
ジョブレベルアップの手伝いや、スキルの指導なんかもあるようだ。
俺の場合はそういった方面でお金を稼ぐこともできそうだな。
とはいえ、今はFランクなのでそれを受けるのは無理だ。ランクが上がった際に考えるとしよう。
全体的にランクが上がるごとに危険度が上がり、報酬金額も跳ね上がっている。
Aランク、Bランクにもなれば一回の依頼でかなりの金額が懐に入ってくる。
個人でこれだけ稼ぐことができるのもフリーならではの強みだろう。
ジョブホッパーとしての性か、ゴロゴロ仕事が転がっているのを見ると無性にワクワクとするな。
明日からは存分に依頼を受けて、キャリアアップを目指してやろう。
日刊総合ランキング1位で年越ししたいです‥‥!
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