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世界で唯一の転職師~ジョブホッパーな俺は、異世界ですべてのジョブを極めることにした~  作者: 錬金王
二章

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39/40

ソロでの迷宮攻略

書籍とコミック1巻発売中です!


 迷宮の探索に集中することにした俺は十階層へやってきていた。


 十階層に到達すると、階層内の空気はガラリと変わっていた。高い天井や周囲を囲む壁、床などは岩盤で構成されており、あちこちに岩石が転がっている。


 そんな天然の洞窟のような階層の中で、俺は赤い帽子を被った小鬼たちに囲まれていた。



 レッドキャップ

 LV18

 HP 99

 MP 56/56

 STR 68

 INT 45

 AGI 77

 DEX 58


 赤いナイトキャップを被ったゴブリンたちは、手に鉄製の斧や剣といった武器を手にしており、こちらに襲い掛かってくる。


「岩弾」


 俺は即座に岩弾を生成すると、真正面から飛び掛かってきたレッドキャップたちに向けて放った。


 四体の頭部を飛ばすと、右から剣を手にしたレッドキャップたちが迫ってくる。


 俺は魔法式を組み上げながら右足で強く地面を踏んだ。


「土杭」


 円錐状の土杭が地面から突き出ると、地面を這うようにして接近してきたレッドキャップの腹部が貫かれた。


 三体のレッドキャップを片付けると、今度は後方から気配を感じた。


 反射的に頭を下げると、俺の頭があった場所を大きな鎌が通り過ぎた。


 相手が着地する瞬間を狙って俺は魔力を多めに込めた岩弾を飛ばす。


 レッドキャップは大鎌を盾にするかのように構えたが、岩弾はあっさりと大鎌を砕き、肉体を破壊した。


 計八体を討伐すると、ようやくレッドキャップがいなくなった。


「ふう、十階層までやってくると、それなりに面倒な魔物も増えるんだな」


 通常のゴブリンなら何度も討伐したことがあるが、レッドキャップとは初めて戦ったな。


 一体一体が歴戦の戦士のようであり、仲間と連携してくるのでそれなりに厄介な魔物だった。


 赤いナイトキャップを被っているだけなのに、どうしてこんなにも変わるのか不思議でしょうがない。


 倒したレッドキャップにナイフを突き立てて魔石を回収しようとすると、俺の索敵スキルが新たな魔物の到来を感知した。


「また魔物か……」


 十階層にやってくると単純な魔物のLVが上がるだけでなく、遭遇頻度も上昇するようだ。


 足音が近づいてくるにつれて微かな獣臭がした。


 魔狼

 LV19

 HP 105

 MP 65/65

 STR 72

 INT 66

 AGI 82

 DEX 47


 漆黒と赤の体毛に包まれた狼たちが次々と通路の奥から現れた。


 その真っ赤な瞳は薄暗い通路の中でも爛々と輝いており、狂暴な顔つきを歪ませながら唸り声を上げて接近してくる。


 遠吠えを放ちながら戦闘の一体が凄まじい勢いで突っ込んできた。


 俺は土魔法を発動し、岩弾を射出して頭部を吹き飛ばす。


 続けて岩弾を射出し、五体の魔狼の胴体に穴を空けた。


 しかし、魔狼の中には岩弾を回避して、こちらに肉薄してくる個体たちがいた。


「なるほど。固有職といえど、迷宮に一人で挑戦するのは確かに危険だな……」


 一階層で忠告してきた赤髪の女の言葉はあながち間違いではない。


 しかし、それは固有職を一つしかもたない場合だ。


「転職、剣士」


 俺は即座に転職師としてのスキルを行使。魔法使いから剣士へと転職を果たす。


 腰から剣を引き抜いた力を利用し、飛びかかってきた魔狼を切り上げる。


「確かに並の固有職であれば一人では困難だろう。しかし、俺は転職師! 状況を打開するのに最適な固有職に転職すれば、大抵の窮地は乗り越えることはできる!」


 時間差で飛びかかってきた二体目には柄を逆手に持ち替え、頭部へと真っ逆さまに振り下ろし、そのまま地面へと縫い付けた。


 七体が殲滅されたことにより彼我の実力の差を理解したのか、残っていた一体の魔狼がジリジリと後退する。


 再び仲間を集めて襲われたら面倒だ。


 俺は魔狼へと近づいて斬りかかろうとする。


 が、途中で地面に違和感があることに気付いた。


 茶色くなった地面に視線を向けると、盗賊のパッシブスキルがそこに罠があると教えてくれた。


「……お前、俺を罠にはめようとしていたな?」


 罠の手前で足を止めると魔狼が動揺したようにビクリと体を震わせ、脱兎のごとく逃げ出した。


 まったく迷宮の罠を利用しようとするとは、小賢しい真似をする魔物だ。


 俺はため息を吐きながら剣に魔力を込めて、逃げ出した魔狼の方へと振るう。


「衝撃波!」


 剣から放たれた衝撃が魔狼を後ろから縦に切り裂いた。


 二つに分かれた体がボトリと通路に落ちる。


 索敵による魔力ソナーを放ち、今度こそ周囲に魔物がいないことを確認すると、俺は剣を鞘に戻した。


 連戦による時間経過があったからかレッドキャップの死骸は既に崩壊しており、魔石だけが転がっていた。レッドキャップの魔石を拾い上げ、魔狼たちからも魔石を回収すると、俺は罠のあった場所へと戻る。


 盗賊としてのパッシブスキルが危険を教えてくれるが、それがどんな罠なのかはわからない。


「鑑定」


 試しに地面を鑑定してみると、落とし穴であることが判明した。


 一階層から九階層では罠の類を見かけることはあったが、素人でも見分けられる稚拙なものだった。


 どうやら十階層になると罠のレベルも上がるらしい。


 現在、盗賊のジョブレベルは15だ。


 階層を下っていくと罠を見分けるのはさらに難しくなる可能性もある。


 今後の迷宮攻略のためにも盗賊のジョブレベルを上げておいた方がいいかもしれない。


 俺は剣士から盗賊へと転職を果たした。


 地図を片手に十階層の通路を進んでいくと、魔物の気配を察知する。


 何度も戦闘ばかりしていては一向に先に進むことができないので俺は盗賊のスキルを発動させることにした。


「潜伏」


 自身の存在感を限りなく薄くするスキルだ。


 通路にある岩石の裏でスキルを発動ジーッとしていると、レッドキャップらしき魔物がやってくる。


「グギャ?」


「グギャギャギャ?」


 レッドキャップたちが困惑した声を上げている。


 音や気配を頼りにやってきたが何も見つけることができなくて戸惑っているようだ。


 レッドキャップたちはギョロギョロと周囲に視線を向けており、その視界内には恐らく俺も入っていただろうが潜伏によって存在感が限りなく薄くなっているので認識することはできないようだ。


 やがてここには誰もいないことがわかると、レッドキャップたちはその場を去っていく。


「潜伏スキル、便利だな」


 魔狼のような嗅覚の鋭い魔物や、一部の聴覚の発達した魔物には見破られる確率が高いみたいだが、それ以外の魔物についてはやり過ごせる確率が高い。


 まあ、戦闘を避けてばかりでは腕が鈍ってしまうし、ジョブレベルだって上がらないので多用はできないが、選択を間違えなければ非常に有意義なスキルだ。


 よしよし、このまま固有職を使い分けながらどこまで行けるか試してみよう。


 レッドキャップをやり過ごした俺はそのまま十階層の奥へと突き進むのであった。




 ●




 迷宮での探索を切り上げた俺は手に入れた魔石を換金するために冒険者ギルドへと戻ってきていた。


 夕暮れ時になるとギルドの換金カウンターは混雑していた。


 皆、俺と同じように探索を切り上げて戻ってきているようだ。


 俺はヘネシーを探したが、彼女のいる列は特に冒険者が並んでいた。


 あれだけ見た目が良い上に愛想もいいのだから人気が出るのも当然か。


 適当に空いている列に並んでもいいが、礼は早めに言っておきたいので時間がかかるのを承知で後ろに並んだ。


「あっ!」


 すると、隣にいる冒険者がこちらを向いて間抜けな声を上げた。


 ふと視線を上げると、一階層で余計なお節介をしていた赤髪の女がいた。


「げえっ」


「人の顔を見るなりげえって失礼ね」


 探索を終えて疲れているところに面倒な女に会ったのだ。


 そんな言葉が出てしまうのも仕方がない。


「思っていたよりも長く潜っていたのね? はじめての迷宮攻略はどうだったのよ?」


「まあまあです」


「まあまあってなによ。もっと具体的に教えなさいよ」


 適当に言葉を濁すと、赤髪の女が不満そうに言ってくる。


 その口ぶりから俺が一人で潜って苦労したっていうのを聞きたいんだろうな。


「別に一人だからって迷宮で苦労はしていませんよ」


「ふーん? ということは、十階層より下には降りていないみたいね。十階層は迷宮における一つの節目で低階層の魔物とはレベルは比べ物にならないし、群れで現れることが多いわ。高ランクなら問題ないでしょうけど、Dランクの魔法使い一人じゃ絶対に攻略はできないから絶対に一人で潜るんじゃないわよ?」


 念を押すように言ってくる赤髪の女。


 いや、もうすでに一人で潜っているんだが、それを言うとまたうるさくなりそうなので黙っていることにしよう。


「次の方、どうぞ」


 赤髪の女のありがたい講釈を聞き流していると、ヘネシーから声がかかった。


「昨日はいい宿を紹介してくれてありがとうございます」


「気に入ってくださったのであれば嬉しいです」


 お礼を伝えると、ヘネシーはにっこりと微笑んでくれた。


「今日は迷宮に潜ってきたので魔石の換金をお願いします」


「かしこまりました」


 俺は魔物の魔石が詰まった革袋をカウンターに提示した。


 革袋の蓋を開けて、ヘネシーが魔石を確認していく中、隣の列にいた赤髪の女がこちらを覗き込んでいた。


「……なにをしてるんですか?」


「あなたが攻略した階層を教えてくれないから魔石を見て判断しようと思ってね」


 あちらも精算の途中みたいだが、こんなにも露骨に人の取引きを覗いてもいいのだろうか。


 文句を言うこともできるが、騒ぎ立てて変に注目されるのも面倒なのでそのままにしてヘネシーの査定を待つことにする。


「え? レッドキャップと魔狼の魔石? こっちは殺人人形の魔石!?」


「ええ!? 殺人人形と生きる鎧は十五階層以上じゃないと現れない魔物よね!?」


 ヘネシーが目を大きく見開き、査定結果を聞いていた赤髪の女が驚愕の声を上げた。


「……ツカサさん、もしかして十五階層より先の階層までいきました?」


「はい。十八階層まで進みました」


 おずおずと尋ねてくるヘネシーに俺はきっぱりと答えた。


 本当はまだまだ潜ることができたが武具の消耗が激しく、これより先に進んでいくには良質な武具が必要だと思って切り上げた。


「魔法使いのソロがそんなところまで行けるなんてあり得ないわ!?」


「嘘じゃないですよ。ちゃんとギルドカードに到達階層が記録されています」


「ほ、本当に十八階層まで進んでる」


 疑いの視線を向けてきた赤髪の女であるが、ギルドカードを提示してやると素直に認めた。


 冒険者ギルドが発行しているギルドカードを偽造することは不可能だからな。


「たった一日で十八階層まで攻略するなんて前代未聞の快挙ですよ!」


「ありがとうございます」


「私、ツカサさんの迷宮探索担当官になりたいです! いいですか?」


 ヘネシーがこちらの両手を包み込むようにして言ってきた。


「迷宮探索担当官?」


「高位の冒険者や有望な冒険者にのみつくギルド職員のことです! 迷宮探索についてアドバイスや情報、依頼の斡旋などとよりツカサさんに便宜を図ることができます!」


「担当官がついたからといってお金を支払ったり、稼ぎを取られることはないんですよね?」


「ありません!」


「じゃあ、いいですよ」


「ありがとうございます!」


 了承すると、ヘネシーは嬉しそうに担当官としての手続きを進めてくれる。


 そんな様子を赤髪の女が可哀想なものを見るような目で見てくる。


「俺が迷宮に潜ってギルドに利益をもたらせばもたらすほどに職員の功績にもなるんでしょう? それくらいわかっていますよ」


 俺が確かな実績をもたらした途端にこの提案。


 急激にお金を手に入れてしまった顧客に飛びつき、融資を持ちかける銀行職員と似ている。


「意外と冷静なのね……」


 担当官という精度は高位の冒険者や有望な新人冒険者を逃さないためのものだろう。


 冒険者は見目麗しいギルド職員に便宜を図ってもらい奮起し、ギルド職員は自身の出世のために冒険者を手のひらの上で転がす。


 俺が年相応の精神年齢であれば、見目麗しいギルド職員におだてられて死地へと赴き、貢ぐことになっていただろう。


 残念ながらこういったハニートラップじみた接待は経験済みだ。


 外から見える実情はどうあれ、そこは上手く利用し合えば問題はないのだ。



新作はじめました。


『異世界ではじめるキャンピングカー生活〜固有スキル【車両召喚】はとても有用でした〜』


異世界でキャンピングカー生活を送る話です。

下記のURLあるいはリンクから飛べますのでよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n0763jx/

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こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『異世界ではじめるキャンピングカー生活~固有スキル【車両召喚】は有用だった~』

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