目指すべき上位固有職
ブラックウルフを討伐した翌日。
冒険者ギルドにてやってきた俺は、ステータスの確認をしていた。
名前 アマシキ ツカサ
LV17
種族 人族
性別 男
職業【魔法使い(転職師)】
ジョブLV10 (転職師ジョブLV14)
HP 276
MP 1139/1139
STR 228
INT 235 (+40)
AGI 220
DEX 186 (+40)
昨日、ブラックウルフを二十五匹討伐したお陰で、全体的にステータスが上がっていた。
現在は魔法使いに合わせた装備を身に着けているので、戦士の時よりもSTRとDEXは下だ。
代わりに防刃繊維の組み込まれたローブやINTをアップさせる指輪をつけているので、ステータスは微妙に変動していた。
それでもちょっと頼りなく思えるが、あの突出したSTRとDEXは戦士だからこそ出せる数値であって、あれを基準としてはいけない。
さて、現在の全体的な固有職のジョブレベルを纏めてみよう。
魔法使い、剣士、槍使い、盗賊、薬師のLV10。
転職師がLV14、錬金術師LV6、戦士LV7、狩人LV4。
こんな感じだ。
アイテムボックス解放のために上げた固有職の五つが十になっており、転職師のジョブレベルが突出している。
それ以外の使用頻度の使いジョブレベルは十を下回っている感じだ。
これらを総合した上で、今後の方針をどうするべきか。
まだまだ俺が転職していない固有職はたくさんある。
僧侶、騎士、付与術士、吟遊詩人、商人、鍛冶師、魔物使いなど。
これらの固有職のジョブレベルを上げて、全体的なステータスの底上げし、数多のスキルを獲得する。
あるいはその先にある上位固有職を目指し、大幅なステータスの上昇と、より強力な能力やスキルの獲得を目指すか。
上位固有職とは、固有職のさらに先にあると言われている固有職だ。
魔法騎士、聖騎士、暗殺者、召喚士、神官といった通常の固有職とは一線を画した能力やスキルを扱えるのが特徴であり、これらの上位固有職は転職師である俺でも最初から転職することはできない。
ただし、転職師の恩恵のお陰か、上位固有職に至るための道筋は示されている。
たとえば、魔法騎士であれば、魔法使いと剣士のジョブレベルを三十にまで上げることで転職可能だ。
重騎士であれば、戦士と騎士のジョブレベルを四十ずつまで上げることによって転職できる。
しかし、上位固有職のすべてがジョブレベルを上げれば、転職できるわけではない。
暗殺者であれば、盗賊のジョブレベル四十にまで上げるのが最低条件であるが、特殊項目として魔物と人間を三十ほど暗殺する必要がある。
他にも特殊な魔物を討伐しなければいけないケースもあったりと様々であり、上位固有職に至るのは容易ではないのだ。
でも、ルイサが話してくれたSランク冒険者のように上位固有職に到達している者はいる。
俺以外の一般人は、転職できるわけではない。
そんな中で【魔法使い】と【剣士】のジョブレベルをどうやって上げたのだろう?
転職でもできなければ、魔法剣士になるのは不可能のような気がする。
俺が知らない上位固有職に至る道があるのか、あるいはこれら条件は転職師である俺だから課せられたものなのか。今のところ判別はつかない。
ただ仮にわかっていようとも固有職持ちの人は秘匿するだろうな。あるいは一子相伝として家族にだけ伝えるか。
これだけ固有職が特別な力を秘めている世界ならば、十分にあり得るだろう。
話は逸れてしまったが、そんなわけで俺が取れる方針は二つだ。
他の固有職のジョブレベルを上げるか、現状最も目指しやすい上位固有職の魔法剣士を目指すか。
「よし、魔法剣士を目指すか」
順当に進めるなら様々な固有職のジョブレベルを上げるのが手堅いのかもしれないが、やはり上位固有職というのが気になった。
俺はジョブホッパー。様々なキャリアを積み上げて、より高みを目指すもの。
より高いキャリアをつかみ取れるので、あればそれを逃しておく手はない。
そんなわけで、ひとまずの目標は魔法使いと剣士のジョブレベルを上げることだ。
魔法使いのジョブレベルを上げやすい依頼を探そう。
「なあ、あんたが最近有名な【魔法使い】のツカサだよな?」
そう思って依頼書を見ていると、不意に声をかけられた。
振り向くと、明るい髪色をした同年代くらいの男と、仲間らしい男と女が一人ずついた。
「は、はぁ」
「悪い。先に名乗っておくべきだったな。俺の名はグレン。Dランク冒険者だ。こっちの槍を持っているのがスミス。弓を背負っている女がジレナだ」
グレンという男が紹介をすると、仲間らしくスミスとジレナがこくりと頭を下げた。
スミスはちょっと遊び人って感じがしてチャラく、ジレナは冷静で真面目そうな女性だな。
「ちなみに俺は【剣士】の固有職を持っている」
どこか自信にあふれた笑みを見て、鑑定をしてみると確かにグレンは剣士の固有職を持っていた。
このギルドにも固有職を持っている冒険者がいたのか。
「はじめまして、【魔法使い】のツカサです。それでグレンさんは私になんのご用でしょう?」
「率直に言おう。俺たちと一緒に討伐依頼を受けないか?」
「……それはパーティーを組むってことですか?」
「そうだ。とはいっても正式なパーティーじゃなくて臨時だ。勿論、【魔法使い】のツカサがうちのパーティーに入ってくれるなら大歓迎だがな」
などと陽気に笑うグレン。
決して丁寧な態度と言葉遣いとはいえないが、不思議と不快感を抱かない相手だ。
相手の懐に潜り込むのが上手いのだろう。やり手の営業職仲間を思い出すようで懐かしい。
「なるほど。まずは詳しい話を聞かせてください」
「わかった」
グレンから詳しい話を聞くと、今回の討伐はスケルトンという魔物らしい。
場所はラッセルから南西に七キロほど離れたところにある、嘆きの平原。
そこに沸いたスケルトンは数が多い上に、魔法を扱うスケルトンメイジという個体がいるらしい。さらに地面がぬかるんでいることもあって、剣士であるグレンがいても、ちょっと危険が大きい依頼のようだ。
後衛に弓を使えるジレナがいるが、スケルトンの身体は非常に面積が小さく、スムーズに処理できるとは言い難いようだ。
そんなわけで戦線を安定させるために、魔法使いである俺を誘ったらしい。
「誘っておいてアレだが、ツカサのレベルを聞いてもいいか?」
経緯を軽く説明すると、グレンが尋ねてくる。
他人のレベルをいきなり尋ねるのは失礼だが、パーティーを組む以上は共有しておいた方がいい。適正レベルの高い場所に、レベルの低い者を連れていくのは自殺行為だ。
「レベルが十七で、魔法使いのジョブレベルが十です」
レベルとジョブレベルを告げると、ジレナ、スミス、グレンが軽く目を見開いた。
「Eランクにしては高いわね! 私と同じじゃない!」
「さすがはソロでハイゴブリンを討伐するだけはある!」
「スケルトンの平均レベルは十五だが、それだけのレベルと固有職があれば十分だな」
ちなみにグレンのレベルは二十二、スミスが十九でジレナが十七だった。
しかし、多数の固有職の恩恵があるお陰か俺よりもステータスの数値はかなり低い。
彼らでも通用するのであれば、俺が通用しない道理はない。
「依頼の概要としてはこんな感じだ。どうだ? 俺たちと一緒に依頼を受けてくれるか?」
グレンたちが俺を誘った理由も理解できる。話していて不快にもならず、不審な点も見当たらなかった。
錬金術師のような高慢な感じもしなかったし、グレンたちとなら一緒に依頼を受けてみるのもアリだろう。
ちょうど魔法剣士を目指すために、魔法使いのレベルを上げたかったところだ。
それになにより自分以外の固有職持ちが、どのように戦っているのか見たい気持ちも強い。
「わかりました。臨時でパーティーを組みましょう」
「おお! ありがとな! よろしく頼むぜ、ツカサ!」
こうして俺は臨時パーティーを組み、スケルトンの討伐に向かうことになった。
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