転職師のスキルを解放するために
武具屋で色々な武器を買い込んだ俺は、ひとまず虎猫亭に戻って武器を置いた。
鉄剣はその場で売却したものの、槍まで持ち歩くのは不便だから。
新しく買い替えた鋼の剣とショートワンドを装備してみる。
名前 アマシキ ツカサ
LV9
種族 人族
性別 男
職業【魔法使い(転職師)】
ジョブLV6
HP 91
MP 795/795
STR 98 (+30)
INT 112 (+20)
AGI 68
DEX 42
試しにステータスを確認してみると、補正のある武器を装備したお陰で数値が上昇していた。いい武器があるのとないのとでは、かなりステータスに影響があるものだ。
だったら同時にたくさんの武具を装備すれば、かなりドーピングができるのではないか?
なんて思ったが、そんなことをすれば装備した武具が邪魔過ぎてまともに戦うことが難しくなるだろう。ちょうどいいバランスが大事だな。
ちなみに今回、防具は購入していない。武器を買い過ぎて持ち帰ることができなかったのも理由の一つだが、ドランにやめるように言われたからだ。
俺のレベルは九。あと一つレベルを上げると十になる。
そうすると、装備レベル十の防具が身に着けられるようになり、よりよい防具が手に入るからだ。今ここで防具を買っても、すぐに新しいものを買うことになる。
売れればいいなどと言っていた癖に、ドランは意外とお人好しだった。
そんなわけで、次は防具を充実させるためにレベル上げ作業だ。
新しい装備を纏った俺は虎猫亭を出発して、冒険者ギルドに向かう。
扉を開けて中に入ると、ギルド内にいた冒険者がこちらに振り返った。
いつもならばすぐに霧散するのだが、今日はやけに見られている気がした。
不思議に思ったがいくら気にしても仕方がないので掲示板に向かう。
今までならFランクの依頼を見ていたが、一昨日に昇格したのでEランクの依頼も問題なく受けることができる。
当然、昇格を目指している俺はEランクの依頼を物色する。
『ゴブリンの討伐』
『ビッグフロッグの討伐』
『ガロンの討伐』
「さすがにEランクになると、討伐の依頼が増えるな」
Fランクの依頼書は薬草採取や、荷運びといった雑用依頼が多めだったが、Eランクになるとそれらの割合はかなり減っている。
とはいえ、採取依頼がまったくないわけではない。
採取方法が難しい素材や、危険な魔物が徘徊している場所に植生している素材。
そういったレベルの上がった採取依頼がEランクにはあるようだ。
Fランクでたくさん採取依頼をこなしてきたんだ。Eランクになっても採取依頼ばかりをこなしてもつまらない。
俺のレベルを上げるためにもやっぱり討伐依頼を受けるのが一番だな。
そんなわけで俺はゴブリンの討伐依頼を受けることにした。
二十匹の討伐が達成条件。
数ある依頼の中では、これがもっともレベル上げに効率良さそうだ。
依頼書を引っぺがすと、ルイサのところに持っていく。
「こんにちは、ツカサさん。早速、Eランクの討伐依頼を受けるのですね。ポーションは手に入れることはできましたか?」
受注の手続きを進める中、ルイサが話を振ってくる。
「はい、なんとか手に入れることができました。なんというか錬金術師の方は、個性的でした」
「固有職持ちの方はああいった性格の方が多いので。勿論、ツカサさんのように良識のある固有職持ちの方もいるので気になさらないでください」
「そうですね」
リゼルのようにきちんと話の通じる固有職持ちもいた。
固有職持ちのすべてがああいった性格ではないと俺は信じたい。
●
ゴブリンの討伐を受注した俺は、ラッセルの近くの森にやってきていた。
ゴブリンはコボルトの出現していた地点に棲息しているので、以前戦った場所までズンズンと進んでみる。
すると、コボルトとは違う小さな人型の魔物が三匹いた。
緑色の肌に小さな角を生やし、ぎょろついた黄色い瞳。
依頼書に書かれていたゴブリンのイメージイラストそのものだ。
ゴブリン
LV6
HP 32
MP 3/3
STR 28
INT 7
AGI 25
DEX 15
鑑定してステータスを覗き見ると、こんな感じだった。
コボルトよりも少しレベルが高く、HPやSTRが少しだけ高い。
しかし、知能面はコボルトに劣るようで、完全に魔法方面の素養はないと言っていいだろう。
「転職、剣士」
俺は剣士に転職すると、盗賊のパッシブスキルを使用して気配を消した状態で接近。
距離が縮まったところで死角から一気に斬りかかる。
ザンッと音を立てて、一匹のゴブリンの首が飛んだ。
「ギギイッ!?」
突然の奇襲を受けて二匹のゴブリンが慌てて棍棒を構える。が、その頃には二匹目のゴブリンへと迫っており、隙だらけの胴体を剣で薙ぎ払った。
三匹目のゴブリンは棍棒を振るって攻撃してくることができたが、稚拙な攻撃は俺に掠りもしない。
ステップで躱すと、上段から剣を振り下ろす。
ゴブリンは反射的に棍棒を盾にするかのように掲げた。
鉄剣ならば防がれてしまう可能性もあったが、鋼の剣なら問題なくイケる。
そんな直感を抱いた俺は、棍棒ごとそのまま斬ることにした。
「はぁっ!」
結果として俺の振り下ろした剣は棍棒ごとゴブリンの頭を叩き斬ることに成功した。
脳漿をまき散らしながらゴブリンが倒れる。
「ちょっと装備を変えただけで、これだけ威力が上がるのか……」
前に装備していた鉄剣ならば、できなかったごり押しだろう。
やはりSTR+30される効果は伊達じゃないようだ。
新しい武器によるステータスの恩恵を感じていると、レベルアップの音が響いた。
名前 アマシキ ツカサ
LV10
種族 人族
性別 男
職業【剣士(転職師)】
ジョブLV2 (転職師ジョブLV10)
HP 98
MP 805/825
STR 106 (+30)
INT 115 (+20)
AGI 74
DEX 46
どうやらレベルとジョブレベルが上がったようだ。
いつもなら数値の上がり具合を眺めて終わりなのだが、ステータス表示で気になる部分があった。それは追加で表示されている転職師のジョブレベルである。
「……転職師のジョブレベルが上がったのか……」
剣士のジョブレベルは変わらず二であるが、代わりに転職師のジョブレベルが十になっているのがわかる。
基本的に他の固有職に転職した状態で過ごしているので、転職師のジョブレベルはまったく確認していなかったな。
非表示にしておくと忘れそうなので、今後も表示にしておくことにしよう。
薬師はジョブレベルが十になると、新しいスキルが解放されていた。
ということは転職師もジョブレベルが十になったことで、何かしらのスキルが解放されたのだろうか?
気になってステータスウインドウを開いて、転職師のスキル詳細を確認してみる。
『アイテムボックス』
転職師が様々な固有職に合わせた装備や道具を収納するための箱。
収納容量はMPの多さによって変動する。
収納中は道具などの経年劣化はない。生き物などは収納することができない。
「アイテムボックスだ!」
固有職に合わせた装備を揃える問題として、俺が欲してやまなかったアイテムボックス。
まさか転職師のジョブレベルが上昇することによって、手に入れることのできるスキルだとは思わなかった。
【条件を解放していないためにアイテムボックスの使用はできません。
五つの固有職のジョブレベルを十まで到達することによって解放されます。
現在の到達固有職、薬師】
早速、アイテムボックスとやらを使ってみようと思ったが、続く詳細説明によってそれが無理だと理解。
どうやら転職師のジョブレベルを上げるだけでなく、他の固有職のジョブレベルを上げるのが解放条件のようだ。
つまり、あと四つの固有職のジョブレベルを十にしなければいけない。
それだけでアイテムボックスが手に入るのであれば、やらない手はないだろう。
「そうと決まったらジョブレベル上げだ!」
ゴブリンの討伐証明である耳を剥ぎ取ると、俺は次なる獲物を探して突き進んだ。
『面白い』『続きが気になる』と思われましたら、ブックマーク登録をお願いします。
本作を評価していただけると励みになります。
 




