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一条春都の料理帖  作者: 藤里 侑
日常
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第三十三話 タンドリーチキン

 なんだか無性にスパイスを欲している。

 じゃあ今日の晩飯はカレーライスにするか。いや、でもなんか違うんだよなあ。スパイスを確かに欲してはいるが、カレーライスじゃない。でもカレー風味の何かが食べたい。

 四時間目が自習となった今、教科書を一生懸命読んでいますよ、という体で考え込む。

 カレー味は身近な味だ。カレーライスはもちろんだが、スナック菓子の味でもカレー味はある。カップラーメンにもカレー味があるしな。カレーうどんもいいし、ナンにつけて食べるのも好きだ。ドライカレー、うまいんだよなあ。

 でもカレー味の料理って、他に何があるだろうか。うーん、意外と思いつかない。

 あ、カレーっていっても、普段使うのってカレールーなんだよな。その印象が強いから思いつかねえのかもしれない。カレー粉……そうだ、カレー粉って思えばなんか思いつくかな。

 それこそスナック菓子とかに使うのはカレー粉だろうな。ルーじゃなくてカレー粉を使うとなったら、なんとなく本格的な料理の印象がある。そうだなあ、今までなんか食ったことのある料理あるかな、カレー味の……。

 そうだ、あれだ。タンドリーチキン。そういや最近なんかテレビで見た。給食でも食ったことある。

 いい、いいねそれ。肉だし。でも作り方よく知らない。何準備すればいいんだろうか。

 ……後で調べてみよう。


「タンドリーチキン……っと」

 スーパーに向かう道すがらスマホで検索してみる。と、大量のレシピが出てきた。

「どれがいいんだろうか……」

 とりあえずいろいろなレシピを見てみるが、とりあえずヨーグルトが必要だということは分かった。

 そもそもタンドリーチキンのタンドリーってなんて意味だろう。

「へー、魚とかもあるんだ。野菜でもいいのかな……」

 タンドリーフィッシュ、結構うまそう。やっぱ白身がいいのかな。

 でも今日は肉だ。肉が食いたい。

 よし。初めて作るものだし、一番簡単そうなレシピにしよう。


 俺は今、ものすごく悩んでいる。

 野菜を買って、ふと総菜コーナーを通り過ぎたら、そこにはタンドリーチキンがあったのだ。しかも残り一パック。

 出来立てではないが、そこはまあ、レンチンという手がある。

「むーん……」

 しかし量が足りるだろうか。足りない分はまあ、カップラーメンなり他のお惣菜なりで補えばいいのだが。

 焼く手間がないのは、すごくいいな。

 でもなあ、焼きたて、うまそうだったんだよなあ。それに手作りだと味の調節が自分でできるし。どうしようかな。

 よし、それじゃこうしよう。店の中を一周して残っていたら、買うことにしよう。

 鶏肉は今日使わなくてもあれば何かと便利だし、ヨーグルトも食べたい。カレー粉も何かに使えるだろう。ポップコーンをうちで作ったときに振りかけてもいい。フライドポテトの味変にも使えそうだ。

 さて、どっちに転ぶかな。


「えーっと、まずは?」

 俺は、スマホとにらめっこしながら台所に立っていた。

 結局一周したら、タンドリーチキンはなくなっていた。というか、目の前で買っていかれた。まあいいや。もし残っていたら、それはそれでまた悩んだかもしれないし。うん、よしとしよう。

 まずは鶏肉に塩コショウをする。

 そんでもって、肝心の味付け調味料である。おろしたニンニクとショウガ、トマトケチャップ、オリーブオイル、カレー粉、ヨーグルト、そして塩を少々。これらを混ぜて、そこに鶏肉を漬け込む。大体一時間ぐらいだ。

 これで下準備は終わり。あとは付け合わせの野菜とか準備すればいいかな。

 さて、漬け込む間にいろいろ用事を済ませておこう。明日当たり授業であてられそうなんだよなあ。

 そういえば咲良、うちに遊びに来るって言っていたが、いつ来るつもりなんだ? あいつのことだし予告なしで来る、なんてことをやりかねない。家には何回か来たことあるから場所は知ってるだろうし、突撃訪問されたらたまったもんじゃない。

 あ、咲良が遊びに来た時にカレー味のポップコーンでも作ってみるか。作ったことないし、うまくいくか分からんが、まあ、物は試しってやつだ。

「さて、と。そろそろいいかな」

 そうこうしているうちに一時間たったので、焼いていく。

 漬け込んでいる時点でカレーのにおいがすごかったが、焼くとさらに香りが立つ。いつものカレーを煮込むときの香りとはちょっと違う。もっとスパイスの香りが強いというか、お店で匂うような感じだ。

 食欲がわいてくるのは、共通しているが。

 付け合わせの野菜は、茄子、トマト、レタスだ。トマトとレタスは洗ってそのまま、茄子は素揚げにする。茄子って、いくらでも油吸うよな。うまいけど。

 これはご飯が進みそうだ。

「いただきます」

 こんがり焼いた皮目と、プリッとした身が黄色く染まっている。一口食べれば、カレーの香りがぶわっと口に広がり、鼻に抜ける。

 鶏の味とよく合う。こってりしているようでいて、以外にもあっさりだ。ヨーグルトが効いているのか、普段食べる鶏肉よりも柔らかく感じる。皮目もカリッとしていながらジューシーで、ご飯とかきこむと、とてもおいしい。

 素揚げした茄子もちょうどいい。カレーをつけて食べてもおいしい。茄子の味が消えるかと思いきや、遠くに風味がする。トマトは酸味が程よく、口の中がすっきりする。鶏をレタスで巻いてもおいしいな。

 思ったよりも簡単に作れたな、タンドリーチキン。焼くときは少し焦げやすいので注意しなければならないが、これ一品でなかなかの満足感だ。ご飯も進む。

 今度はタンドリーフィッシュも作ってみようか。野菜につけて焼いてもうまそうだ。豚とかでもできないか?

 でもやっぱり、鶏の淡白な感じがカレー味によく合うのかもしれない。

 焼きたてだし自分で作ってよかった。カレー粉まだあるし、近いうちにまた食べたくなりそうだ。


「ごちそうさまでした」


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