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その日、白雪は深く長い眠りについた。
猛毒の魔女は言う。
「あの娘は私の毒を食らった。もう二度と、目を覚まさぬ」
呪いの魔女は言う。
「あの娘には呪いをかけた。毒を打ち消す呪いだ」
白雪は自分が一番優れた魔女だと主張する2人の魔女の標的となってしまったのだ。
処刑台に立たされた2人の魔女は、最後まで白雪がどこで眠っているのかを語る事は無かった。
最後に呪いの魔女が言う。
「あの毒は、王子のキスで無効化する呪いをかけた」
それはこの国の王子の耳にも届いた。ところがこの王子、とんだうつけ者だった。
「寝たきりの娘に興味は無い。どこにいるかも分からぬならば、それはいないも同義だ。私は花屋の娘を妃に望む」
王子は白雪の捜索を放棄した。
かつて、この国一番と謳われた少女は深い森の中で、3年もの長い時間を眠り過ごす事となった。
もう死んでしまっただろうとの説が有力となる頃、白雪は目を覚ました。
王子のキスで目を覚ました。
頭に2本の角を生やした、黄金の瞳を持つ魔界の王子のキスで目を覚ました。
王子は言った
「お前を、俺の妃に迎えたい」
白雪は答えた
「はい。喜んで」