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金の卵を産む鶏(3)

 ステファニーと話し終え、書斎に戻ったルーカスは書斎机の前に腰掛けて、深く椅子に凭れた。

 立派な調度類に、貴重な文献や書籍類。

 辺りを見回して、それを「当たり前」と受け入れる自分がいる一方で、目を伏せるとスチールラックに漫画や教科書、それにテレビ台のところにはスポーツゲームやゲーム機を無造作に置いていた風景も思い返す。


(あの頃はこんな生活をする自分がいるだなんて少しも思わなかったな。)


 六畳間にはシングルベッドに勉強机。それから入口の右手には野球のグッズを置いて、制服とユニフォームは鴨居に引っ掛けてあった。


(部屋には紗良の奴が良く入り浸ってて・・・・・・。)


 二個下の妹が我が物顔で乙女ゲームをやっていて、部活帰りの自分を出迎えると「汗臭いのが帰ってきた」と文句を言う、そんな、もう戻れない世界――。


(あんまり入り浸るから、自分でゲーム機を帰って喧嘩したこともあったっけ。)


 だけど、その喧嘩の果てに「本当に面白いんだから! 漫画版もあるから読んでから文句を言ってよ!」と押し付けられた漫画を渋々読んだら、存外、ハマってしまって読んでしまったことも思い返す。


(単にヒロイン至上主義かと思いきや、王家を巡る悲劇が見え隠れするし、面白い世界観ではあったんだよな。)


 だが、それも「物語の世界」だからこそ面白いと思ったものの、今やその世界の中に生きている。


(・・・・・・思えば、あの時だったな。)


 父はルーカスの指摘に喜色満面になり、当時、まだ若き王太子殿下であった現国王陛下へ密やかに連絡を入れ、三国同盟に向けて関係各所に連絡をし、見事にノーランド王国に狙われていた港町を守った。

 そして、ルーカスに課されていた「半年間」を期限としていた判断は「一年間」に延長された上、「学園に入る事は認めるが、もっと他にも成果を見せろ。今後は自分の実務も手伝うように」と、エルガー子爵自身に領地経営のノウハウを叩き込まれた。


「ルーカス、お前の望みを全て受け入れよう。お前は確かに私の望む『跡取り息子』に成長したし、半年前、お前が話した数々の提言は、我が家に過分なる爵位と、莫大なる富をもたらしてくれた。」

「過分なる爵位と莫大なる富ですか?」

「ああ、そうだ。エラルド公国の第二公女を娶るというのに『子爵』では侮られよう? 王太子殿下の計らいもあって、我が家は『侯爵』の位を頂くことになった。しかも、王太子殿下が国王陛下となられ、エラルド公国の第一公女様とご成婚なさった暁には『公爵』の位を下さるとまでお約束下さっている。」


 そう嬉しそうに話す父は「お前は我が家にとって、金の卵を産む鶏のような子だ」と喜ぶから、ルーカスは「それは何よりでございます」と応じて「ところでエラルド公国からは何と?」と訊ねた。


「ああ、三国同盟を結ぶのにあたって、お前の話してくれた通り、ヴェールズ公国とは『関税引き下げ』で話が着き、エラルド公国とは『王太子殿下との関係強化』を望まれた。」

「ああ、それで政略結婚という事ですね。」


 現王太子殿下の息子の「オリバー王太子」はエラルド公国の公女の息子として育てられた設定だったから、それはシナリオ通りだ。


「そして、王太子殿下の他に『一番の忠臣』にその妹君も嫁がせたいとの話が出てな。王太子殿下より、ルーカスとどうかとの話が出たのだ。」


 聞けば公女の年齢は十余りでちょうど年回りも合い、お断りする理由も特にないので、「謹んでお受けする」と答えたらしい。


「ジェレミー殿下を推していた王太后殿下派は面白くなさそうにしていたがな、王太子殿下を推している一派としては悪くない話だ。おかげでしがない中立派から一気に王太子殿下派に食い込めた。よく三国同盟を思い付いたな。」


 父が自分を後継ぎとして正式に認めて、その旨を表明してくれた。そして、その事があとあと大きくルーカスの立場を変えた。


(本来なら、王太后殿下の死後、第二王子のジェレミー殿下派がクーデターを起こし、それを一掃する際にエルガー子爵が身を呈して王太子殿下を守り、殉職して関係で上がるはずの爵位が、三国同盟で与えられることになった。)


 しかも、原作なら「簒奪者」と言われて心を閉ざしたルーカスはきちんと「跡取り息子」として社交界にも認知され、「先見が出来る切れ者」として扱われるようになった。


 あの時からこの世界は自分の知るゲームや漫画の世界からは、似て非なる世界になっている。


(・・・・・・結局、私は『政敵を追い落とすためなら、毒を盛る事も、社会的に抹殺することも厭わない。国境近くの町や村がひとつ消されても眉ひとつ動かさない』と言う点では、あのゲームの通りになったのかもしれないなあ。)


 影に「不殺(ころさず)」の条項を加えたものの、社会的な抹殺に関しては否定しようがない。


(それに、ヒロインの『サラ』は我が家の家庭崩壊を招くのは変わらないようだし、『エリザベス』と敵対するのも変わらないようだ。)


 ルーカスの立場からすれば、サラは危険な存在に変わらない。

 彼女がオリバーに近付き、あの単細胞(おバカ)な王太子殿下が彼女に惚れれば、正教会の聖女として認められたサラは成り上がるようにして王太子妃になり、ステファニーを王太子妃にする未来が崩れる。


(だが、そうなったら宗教が政治に口出しをし始めるし、平和を維持するための三国同盟も崩れてしまう。)


 それにギルバートの離反の可能性。


(今のところ、ギルをサラから引き離せてはいるようだが・・・・・・。)


 もしサラが何かギルバートに甘言を囁いたとして、ギルバートは利があると見込み、エリザベスではなくサラを受け入れたなら――。


 原作通り、ギルバートがブライアンを陥れるような判断をすれば、それこそエルガー公爵家としては危機的状況に陥りかねない。


(コックス子爵家の子息と喧嘩しているくらいには心砕いているようだから可能性は低そうだが・・・・・・。婚約式までは安心はできない。)


 ルーカスは目を伏せると、胸の内に広がる不安を紛らわせるようにして深呼吸する。


(ここは架空の世界(ゲームの中)などではない。私はここに生きていて、未来はまだ決まってない。)


 一度、サラと思しき人物が、ハミルトン伯爵領内の街で見つかったと報告を受けた時は、付け髭を付けて会いに行ったこともあった。


(・・・・・・だが、彼女は「サラ」であって「サラ」ではなかった。)


 見た目はゲームのシナリオの通り――。

 しかし、その中身は自分と同じように違う世からの転生者で、自分が知りうる話と同じようなシナリオを口にしてきた。


『私はこんなところにいるべき人間ではないの。』


 「該当しそうな名前の人物はいる」と相槌を打ったところ、「ああ、やっぱり!」と嬉しそうにし「私はやはりオリバー王子と結ばれる運命なのね」と頬を染めて喜んでいた。


 すでに彼女の知る世界とは似て非なる世界になっているというのに――。


(サラはまだこの世界をゲームか、漫画の世界だと思っているのだろう・・・・・・。)


 確かに運命の歯車は、ある時は漫画の通りに展開が進み、また、ある時は自分の記憶にある話とは大きく食い違いながら進んで、ブライアン、ステファニーが生まれ、ギルバートが生まれてきた。

 そして、自分と同じ鳶色の目をしたギルバートを腕に抱いた時に改めて思ったのだ。


 三人の子供達が仲違いするような未来は見たくない、と。


(『オリバー王太子』の存在を考えれば、国王陛下とベアトリスの仲を取り持たねばならなかった。そして、ギルバートの婚約者だが・・・・・・。)


 あの漫画に描かれていたように、ギルバートが「サラ」なんて女に心奪われるような事があってはならない。それは、兄弟仲の不和になりかねないし、このエルガー公爵家の凋落にも関わってくる。しかし、かと言って、ウィンザー家に産まれてくるであろう「イザベラ嬢」であってもならなかった。


(彼女ではギルバートがサラを好きになる『抑止力』にはならない。)


 ギルバートに相応しい婚約者は、グニシアにおいては自分たちの派閥からか、中立派から貰うのが似つかわしい。


 そして、思いついたのだ。


 末の息子に似つかわしい婚約者を誰にするのか、を――。


 ◇


「ルーク、ねえ、ルークってば、聞いてる?」


 懐かしい声色にルーカスは直ぐにそれが夢だと気が付いた。

 それでもその懐かしい声色に、ルーカスは目を開くことなく、もう少しこのまま夢を見ていたいと思った。


「ルークってば。」


 美しい金色の髪を緩く巻き、空色の瞳をしたベアトリス=スペンサーの姿。彼女はヒースの花を思わせるような美しいピンク色のドレスを着ていて、まるで春の妖精が現れたかのようだった。


「なんだ、ビーか。どうしたんだ? こんな所で。」


 ああ、そうだ。あの日は王城で国王陛下の生誕祭が催されていた。


「それはこっちのセリフよ。何だってこんな所に今を時めく公爵様がいらっしゃるのよ?」


 王城の大広間から離れたテラスには、夏ながら海からの風が入ってきていて心地よかったのを思い返す。


「少し、人に酔ってね。近付いてくる人の中には気を遣う人も多いから逃げ出してきたんだよ。」


 夢だと心のどこかで分かっているのに、学生時代の時と同じようにして、ベアトリスはルーカスの近くに来て「大丈夫? 水でも貰ってくる?」と心配そうに上目遣いで見詰めてくる。


「大丈夫。さっき飲んでから、ここに来たから。」

「そう?」


 そして、ベアトリスはふわりと花が綻ぶようにして笑って「今なら誰もいないから、ついでに愚痴も話していったら?」なんて言うから、胸苦しい気分になった。


「愚痴?」

「そう、昔みたいに。あ、でも、もうルークは馬鹿にされるようなことはないか・・・・・・。」

「そうでもないよ? さっきも『第一夫人がダメでも、第二夫人は自国の令嬢から娶った方が良い』とか言ってくる人もいたし・・・・・・。」


 そう言ってルーカスがため息を吐けば、ベアトリスは「人気者は大変ね、ルーク」と苦笑する。


「本当だよ、こっちは三人の子供の父親なんだし、僕が直接、王家の出身というわけでもないのにね。」


 ベアトリスはそれを聞くと「そうよね」と悲しげな表情になる。


 ああ、これは過去だ。

 彼女はもう死んでいる。死に目にも会えなくて、知ったのは墓に埋葬された後で――。


 それなのに夢の中のルーカスは少し胸苦しさに顔を歪めたまま、「それより、ビーはどうなんだい?」と訊ねた。


「君は国の英傑エドガー=スペンサーの娘だろう? 国王陛下の覚えめでたい家柄だ。君を第一夫人に求める声も引く手数多、選び放題じゃないのかい?」


 あんな嫌味を言うつもりはなかった。

 だが、ベアトリスに心惹かれている自分を誤魔化したくて、当時のルーカスは無理やり話題を変えたのだ。


「・・・・・・実はね、困っているのよ。グレイ小侯爵からの求婚をお断りしたのだけれど、お父様とお兄様が大喧嘩をしてしまって難儀しているの。」

「大喧嘩?」

「ええ、お兄様は『何故、自分の後ろ盾になってくれる予定だったのに未来の侯爵夫人の座を断った?』って詰め寄ってくるし、お父様は『うちがどちらかの派閥につけば世が乱れることが分からんのか!』って怒鳴り出すしね。」


 ベアトリスは「二人とも私の気持ちなんて置いてけぼりで、『家』の事ばかりだわ」と肩を竦める。一方、ルーカスはそんなベアトリスをじっと見詰めた。


「・・・・・・それなら僕が助けてやろうか?」


 当時のルーカスの申し出にベアトリスが目を見開く。

 期待の混じるベアトリスの眼差しにルーカスは心苦しく思いつつも、「そこに嫁げば、エドガー様も文句が付けられないよ」と告げた。


 あれこそ、人生、最大の過ち――。


 あの夜、ルーカスはベアトリスの眼差しから目を逸らすようにして背を向けて、遠く王城内の庭を見つめて話した。


「・・・・・・国王陛下はね、第一王妃にお子が出来ないことを悩まれているんだ。」

「国王陛下?」

「ああ。同じ時期に結婚した僕の方には、三人も子どもが恵まれているだろう? だから、余計に比較してしまうのか、『何かいい案はないか?』と内々に相談を受けたんだよ。」


 戦時中、自分の地盤を支えてくれたエラルド公国の公女を第一王妃として娶ったものの、もう数年経つのに、いまだ懐妊の兆しはない。


「そんなの、天の采配じゃない。」

「ああ、だが、二人にお子が生まれなければ、グニシアとエラルドの同盟が危ぶまれるし、うちの子の将来にも影響が出るんだ。」

「ルークの子にも?」

「ああ、エラルド公国にとって前大公の血を引いている男児はうちの子達だけだからね。」


 ブライアンは嫡男として手元に置けたとしても、ギルバートは手放さなければならなくなる。


「今夜の国王陛下の誕生日会は、貴賎を問わず、多くの『候補者』を集めているんだ。」

「候補者?」

「ああ、国王陛下は乗り気ではないようだけれど・・・・・・。」


 国王陛下の側室となれる者を――。


「君のその美しいブロンドは第一王妃を彷彿とさせるし、きっと陛下は君を気に入る。」

「・・・・・・私に恐れ多くも国王陛下のお手付きになれって言うの?」


 後ろを見なくても、その声色だけでベアトリスがぎゅうっとスカートの裾を掴んだのが分かった。


「ああ、君の後見は僕がする。そうなれば誰も何も文句は言えない。初めは第一王妃の侍女として後宮入りさせて、折を見て側室に引き上げていただく。そうなれば、グレイ小侯爵も文句は言えない。」

「後宮だもの、確かに近づけないでしょうね。でも、それで? 陛下のお手付けになって、子供が生まれたら、その子を第一王妃に差し出せと言うの?」


 強ばった声で訊ねられて胸がギリギリと締め付けられる。それでもルーカスは苦々しげな顔になると言葉を続けた。


「ああ、そうだ。そうしなければ、また戦乱の世に逆戻りだからね。」


 ヴェールズ公国と縁のある第二王妃が先に懐妊すれば、エラルド公国は国王陛下を訴える事だろう。自国の血を引く子を後継者に据える約束のはずだ、と。


「私はエラルド公国の血など引いていないわよ?」


 ルーカスが「無理難題を口にしている事は分かっている」と言えば、ベアトリスはポツリと「だけど、それで多くの人が救われるのね?」と呟いた。


「ああ、救われる。この話を受けてくれるなら、実母であることは伏せてもらわないとならないけれど、側妃としてその成長を見守れるようには取り計らえるだろう。」

「分かったわ・・・・・・。」


 衣擦れの音で、ベアトリスは自分に失望し去っていくのだろうと思った。ただその事が酷く悲しくて堪らなかった。


(ゲーム通りのはずなのに・・・・・・ッ。)


 ゲームの世界の自分は、息子であるギルバートに「冷酷非道で目的のためには手段を選ばない人物」のはずだ。

 それなのに自分を「ルーク」と呼び、慕ってくれていたベアトリスの心中を思うと、胸が今にも張り裂けてしまいそうに苦しくて、テラスの手摺りをしっかり握ってなければ、今にも振り返り、彼女を自らの腕に閉じ込めたい衝動に駆られていた。


 胸がツキン、ツキンと痛む。


 と、不意に背中が優しいハグと温かさで包まれてギクリとする。


「ごめんね、ルーク。今だけでいいから、こうさせて・・・・・・。」


 声の主は振り返らなくても分かる。自然とテラスの手摺りを握り締める力がますます強くなる。


 長いような、短いようなそんなひと時――。


 やがて、ベアトリスは悲痛な声色で「その話、引き受けるわね」と呟くと、ゆっくりと腕を解く。


「国王陛下にご挨拶してくるわ。第一王妃の侍女としてではなく、一夜の過ちの方が後腐れもないでしょうから。」


 そういうとベアトリスは「私も奥様のように愛されたかった」と口にして踵を返し、部屋の中へと戻っていく。


 ルーカスは雷を打たれたようにして、固まってしまった。


『私もオリバーのように愛されたかった。』


 ベアトリスの面立ちを受け継いだ一人の令嬢。ストロベリーブロンドの髪に、エメラルドの瞳をした少女。


(あの子は・・・・・・。)


 あの漫画の原作となった乙女ゲームで唯一、バッドエンドしかない令嬢だと妹の紗良が話していた。


 彼女は産まれたばかりで弟であるオリバーとは生き別れになり、続けてベアトリス、エドガーとは死に別れる。


『なあ、この令嬢、別に悪役というほど悪役じゃなくね?』

『そうなのよ! むしろ、不遇も不遇。こっちが可哀想になっちゃうの。しかも、どのコースでもバッドエンドだからね。』

『そうなのか?』

『そうなのよ。一番酷いのは幽閉塔に監禁の上、処刑。他にも国外追放されたり、連座で修道院送りにされたり、意に染まない結婚の上、夫に殺されたり。絶対、生まれ変わりたくない人物ナンバーワン。』


 ルーカスはそれを思い出すと、慌てて後ろを振り返る。


(ダメだ、このままでは罪もないのに報われない子まで生まれきてしまう・・・・・・。)


 別に王太子殿下はベアトリスの子でなくてもいいのだ。探せば金髪碧眼の戦争孤児だって、どこかしらにいるはずだ。


「ビー、待ってくれ。」


 しかし、会場に戻れば再び多くの令嬢とその女親たちにつかまってしまって、ベアトリスは捕まえることは出来なかった。


 あの日――。


 この身体に縋るように巻き付いてきた手を取って、彼女を第二夫人として迎えていたなら、また違った「運命」があったのかもしれない。

 ベアトリスは彼女の父が助かったように死なずにすんだかもしれないし、エリザベスも軟禁生活を強いられて心虚ろな状態まで追い込むなど辛い目に合わずにすんだかもしれない。


 この「運命」の歯車を回したのは、確かに自分で、その責任を追うべきだとしたら自分なのだ。


エリザベス嬢(ビーの愛娘)の嫁ぎ先は、名付け親になった日から決めていた。)


 なかなかエドガー=スペンサーが首を縦に振らなくて難儀していたが、ギルバートの生来の誠実さが功を制したのか、あの頑固な男が首を縦に振ったのだ。

 言質とも言える婚約請願書も手に入れて、既に二人の婚約が内々とはいえ教会に認められた以上、今更、撤回させる気などありはしない。


 修道院送りも、処刑も、グレイ侯爵家の第三夫人にもさせるなど言語道断。目指すは三兄姉弟とエリザベス嬢のハッピーエンドだけだ。


(バッドエンドしかないというのなら、これからも良いように()()()()()。)


 末の息子に似つかわしい婚約者はエリザベス嬢の他には居ない。


 目を覚ました時には、書斎には青白い朝の光が差し込んできていて、ルーカスは窓を開け放って清々しい空気を吸い込んだ。

ギルバートのパパ目線三部作、一旦、終了です。

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