4 みんなの願い事って、なぁに?
根っこさんたちは何やら話してる。助けても強い力で抜け出すこと出来なくするんだろうか。
「僕、嘘ついてないよ。く、苦しいよ・・・」
みんなは滑らないように、つまづかないように気をつけながら、根っこの上をヨイショって歩いたけれど。ううん、ヘビ君は体が細いから隙間に入ってしまってるんだ。
ああ、そうか。細いけれど、あれだけ食べたんだ。お腹がふくらんでそこが引っかかってるみたい。
キツネ君が顔の方から引っ張るけれど、尻尾とでは、どっちからがヘビ君が楽そうなんだろうね。お腹がへこむまで待つしかないのかな。
「根っこさんの古い場所をクマ君の力で、ばきっと折れば出られるかな。
でも木が痛い思いするもんね」
「ね、このななめになってる所から出られないかな。」
「そうだね、リス君。僕のくちばしでヘビ君を持ち上げられるかな」
「コマドリ君の口だとヘビ君は痛いんじゃないかな。とがってるもの」
「ヘビ君。僕たち、君のこと気にかければ良かったな。背中にのせていくとかね・・・」
「君たち、君たち。茶色の葉っぱが落ちてるだろう。
それをどかしなさいよ。小さな隙間だけど、ヘビ君には広いと思うよ」
えっ? 根っこさんが教えてくれたみたいだ。
アライグマ君が葉っぱに気づいて手に持った。そこには5センチ位の隙間があるよ。ヘビ君は絡まった根っこの上から光を感じた。「ここだ!」と、にょろにょろと出てこられた。
「わあ、根っこさん。ありがとう!」
だけど、どうしてかな。どうして教えてくれたんだろうね。
「君たち、ヘビ君のことを信じて助けようとしたね。僕たち木のことも折ったりしないで考えてくれた。素敵な仲間だね。
彼は嘘をついてないし出せる方法を考えて、君たちを見ていてとっても気持ちが豊かになったよ。ほのぼのさせてくれて、ありがとう。
さあ、おいき。もうすぐだ! いいかい、橋に気をつけて」
「どうもありがとう」
「僕、食べる時は飲み込まないで、よく噛んでたべることにするよ」
・・・ ・・・
トコトコ ズンズン 歩こうね。
根っこ広場を出ると、また視界が広くて明るい空が見えた。だけど、少し風が強いのかな。大丈夫、大丈夫、歩いてるとポカポカしてるしね。
右へ右へと進んでいくけれど、本当に静かで風の音しか聞こえない。辺りは人も住んでいないし、同じように【冒険】してる人はいないようだね。
大きな川が見えてきた。ボートが並んで通れるくらいはあるし、岩も所々にあるよ。川の流れは穏やかだけど風のためか水面が揺れてるね、魚はいるのかな。いたら、水の中で怖がってるかしら。
「ねえ、矢印とどんぐり池って書いてあるよ」
コマドリ君が見つけた。
だけど川を渡るには、ほら、ここにも書いてあるよ、「オンボロ橋」とーー気をつけて、風がある。ちょっとだけ吊り橋の紐が揺れている。
「こ、ここを通ってくんだね」
「クマ君、心配そうだね」
「体が小さい子は一緒に行こうか。それでクマ君が歩くのを応援しようよ」
アライグマ君、キツネ君、リス君が渡り始める。
真ん中を通って、そう、川を見ないで行くつもりなんだね。
ふう、3人は渡ったよ。怖くてドキドキしたから橋の向こう側で座り込んだ。さて、ヘビ君が少し前に行き、クマ君は後を行く。コマドリ君とヘビ君が羨ましいよ、落ちにくそうだ。そう思うと足が進まない。
「ゆっくりでもいいよ、慣れたら速くてもいいよ」
「う、うん。でも、風が強くなって、さっきより揺れてないかい?」
「大きく息を吸って、はいて。大丈夫!」
恐る恐る、一歩一歩。その間にリス君が落ちてる木の枝を何本か拾った。3人で柔らかい木の皮で繋いでいる。クマ君に届くかな、これをつかめば安心してこっちに来られそうだけど。
「クマ君、リス君たちがね、君が持てるように枝を繋いでる。
もう半分も進んだね。いいよ、大丈夫だから」
クマ君はしっかり目を開けて深呼吸するとコマドリ君とヘビ君の誘導で進む。あっ! 強い風だ。のばした枝をつかんだ。よし、クマ君は怖い気持ちが少なくなったよ。
ヨイショ、ゆっくり、ヨイショ、ゆっくり。渡ることが出来たね。
「みんな、どうもありがとう。とても嬉しい。僕、弱いんだよな」
「弱いとダメなの?」
「弱い子ってさ、なにかするときに慎重にゆっくり出来るんじゃないの?」
「そうさ、弱くても強くてもいいんじゃないかな」
・・・ ・・・
みんながホッとして、トコトコ ズンズン 歩き出そう・・・むむむ。
風の後は、なんだか空が暗いね。困ったね、雨宿りする場所がなさそうだから。
ポツポツと雨がふってきた。6人は右へ右へ、速く歩いた。ええ~こんなことってないよ、雨がザーザーに変わった。
寒いよ、冬の雨はとても冷たい。前も見えにくいしね。
「さ、寒いね」
「ヘビ君、アライグマ君。僕の背中にのって。まだ僕の毛はふかふかしてる。少ししたらコマドリ君とリス君と交代しよう。キツネ君ものれそうだね」
「僕も毛がふかふかで、ふさふさだから温かいよ。誰か乗っていくか抱いていけるよ」
コマドリ君はキツネ君に抱かれていく。
6人は交代で温まりながら進んだ。ザーザー、まだまだふってくる。
「僕、地面を行くよ。動いてると温かいだろうし道を教えるね」
ヘビ君は地面をヒョロヒョロと先頭で進んだ。
「クマ君、キツネ君。疲れてないか?」
「全然、平気だよ。ヘビ君は体いたくないかい?」
「地面は慣れてるからね」
トコトコ ズンズン ゆっくりと。
ゆっくりだと寒いけど、雨で転ぶといけないから。体をくっつけてると少しは暖かいね。だけど、まだ夕方でもないのに辺りは暗い。
「あっ!」
ヘビ君が大きな声を出した。みんなも行くと池が見える。きっとそこに違いない。だって、そこから先は道はないようだから。
雨の降り方が弱くなってきた。コマドリ君がぶるぶるっと体の水をとばしてヘビ君の横に来た。
「ちょっと見てくるね」
そう言って飛んでいこうとしたとき、雨がやんだ。だんだんと空が明るくなってきて、みんなは、一度手をあげて伸びをした。キツネ君とクマ君に乗った子は「ありがとう」と言い、小枝を探して石をカチカチと。
濡れてるから上手く火がつかない。下側の濡れてない葉っぱを探してカチカチすると焚火が出来た。あのうさぎのおじさんとおばさんの家の暖炉のように体がポカポカしてきた。
「どんぐり池だよ!」
「ついたんだね、コマドリ君」
「うわぁ、やったね」
みんなは飛び跳ねたり抱き合ったり、握手したり。
・・・ ・・・
「池はそこだけど、どんぐりがないね」
「うん。それがないと願い事きいてもらえないのかな」
「どうなんだろうね・・・えっ? もしかして、あるよ」
体にぼこぼこってあたるものがある。ヘビ君が葉っぱや小枝をかきわけると、どんぐりが見つかった。
「わあ!」
「あれぇ、あっちにもあるよ」
みんな、どんぐりを拾い、火を消して池に向かった。歩いてるとたくさん落ちていた。
願い事がかなうかどうか忘れて、夢中で拾って6人はどんぐりを手にいっぱい。
「きれいな水だね」
「本当に、澄んでいて」
「ねぇ、こうすると自分の顔がうつるよ」
「鏡みたいだ」
寒いことをすっかり忘れて、みんなにこにこ顔で水面をみる。
さあ、やっと着いたドンクリ池で一体何をお願いするんでしょうね。だけど、みんな、大事そうに拾ったどんぐりを持ちながら、まだ動かずに座って池や空を見つめている。
「疲れたけれど、気持ちいい」
「寒いのに暖かい」
「うん、僕も」
「願い事、僕のは・・・。
あのさ、声に出さなくてもいいかな」
「みんなに聞こえなくてもいいってこと?
僕も、そっと願ってどんぐりを投げようかな」
「じゃあ、聞いてもらいたい人は声に出してね、静かに願いたい人は心の中でさ」
「そうしよう!」
美しい池に誰かがどんぐりを投げ込む。水面がまあるく広がっていく。
まるでみんなの夢や願いが広がるように。
誰かが次に投げると、みんなはシーンとして見守っている。
水面の動きも見て、順番を決めなくても一人一人どんぐりを投げた。
大切なことや大事にしてきた願いは自分だけの心に秘密にしたいこともあるし、人に聞いてもらいたいこともある。どっちでもいいんだよね、大切なことにはかわりないから。
みんなが自分たちの住んでる方を見た時、7色の、逆さまになった虹が出来ていた。雨上がりの美しい虹が。心も美しいみたいだね。
「遠くなのか近いのか、わからないな」
「遠くだよ、昨日から歩いて泊まったりしてさ」
「【冒険】したんだよね」
「うん。このこと、大人になっても忘れないと思う」
・・・ ・・・
ねえ、最後にみんなで願い事して一緒にどんぐりを投げたらどうなの? 何をかって?
今度、虹を近くで見た時に6人、そこに座れますようにって。
そうだわ、私にどんぐりを1つ、ちょうだいな。
「あのさ、時々さ、空かどこからか声が聞こえてきてなかった?」
「僕も聞えたよ。おばけじゃないかって思ったら優しそうな女の人の声が」
「クマ君の後ろにいるよ!」
「ひゃあ」
「あはは、クマ君。ごめん、冗談だよ。でも、本当に誰だろうね」
「虹の精かな。『虹に座れますように』って聞こえたし」
「どんぐり池の女神かも」
「きっと、きれいな人だよね」
「僕もそう思う」
あら? ふふ、どうもありがとう。気をつけて帰りましょうね。
読んで下さって、どうもありがとうございました。