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2 蛙のダンス

 ”トコトコ ズンズン 歩くのさ

 僕は空を飛んでいく ランランラ~ン”


 歌が好きなコマドリ君は口ずさみながら歩いてる。


「おや、君たち。どこへ行くの?

 歌をうたってピクニックかな」

「違うよ。【冒険】するんだよ、おばあさん」


 いたずら好きのリス君は、うさぎのおばあさんの足からひょいっと肩までのぼちゃった。そして、自慢げに大きな声で【冒険】と言う。


「おばあさんは、ドングリ池に行ったことあるの?」

「私はないね。聞いたことはあったんだよ、君たち位の年の時にね。

 願いごとがかなうんでしょう?」

「へえ、おばあさんも知ってたんだ。若い時に聞いてるって!

 じゃあ、たくさんの人が知ってるんだね」

「ヘビ君は初めて聞いたのね。知ってる人も多いと思うわよ。

それを信じてない人もいるしね」


 おばあさんは、ヘビ君に話しかけるために前かがみになりました。リス君はツツツとおりてニコッ。

「僕たちは信じてるんだよ、だから、行くのさ」


 うさぎのおばあさんは行きたかったけれど、半分信じて半分はそうじゃなかったんだって。もし足が強かったら今なら一緒に行きたいみたい。


「うん、うん。行っておいで。

 寒くなってくるよ。気をつけて、いってらっしゃいね」

「ありがとう」



 6人はどんな願いごとをするつもりなのでしょう。まだ、アライグマ君もキツネ君も誰も口にしてないね。きっと心の中では、たくさんの夢を持ってるんだろうね。


 トコトコ ズンズン 歩いてく。

まだかな、ねむの木は。それを知ってるコマドリ君は、

「僕は飛べるけれど。歩くともう少し時間がかかるかな」


 見えてきた、見えてきた、ねむの木が。

「はじめまして、ねむの木さん。僕たちね、ドングリ池に向かうんだよ」

「おかしいね、クマ君たら。木が話すはずないじゃないか」


「はじめまして。君たち【冒険】なんだろう。右へ進んで行くんだよ」

「ええ! は、はじめまして。いってきます」

「驚いた。木が話すなんて」


 どうして、ねむの木さんは知っていたのでしょうね、池に行くことを。きっと【冒険したい】という子のことが伝わるんだね。


 ほら、サンタクロースに欲しいものを手紙に書いておくと、靴下の中にプレゼントが入ってる。あれと同じなのかな。

 じゃあ、ドングリ池も6人が向かってることを知ってるかもしれないね。


 みんな、ねむの木まで着いてホッとしたよ。ゴールしたみたいに喜んだ。だけど、ここは目的地じゃないんだよね。第1の地点。


 右へ右へと進んでいくうちに、森の住人の姿は少なくなっていく。遠くまで来たんだ。森に近づいたのかな。


 アライグマ君の叔父さんが、まきを運んでた。

「やあ、久しぶりだね。どこか行くのかい?」

「こんにちは。僕たちはドングリ池に向かう途中」

「パパやママに言ってきたかい?」

「あっ、言ってないや」

「それは心配しちゃうよ。すぐに帰るわけじゃないんだろ?

 今度からは出かけるって教えなさいよ」

「わかったよ」

「また、近いうちにパパやママと遊びにおいで」

「はーい」


 君は出発前に、おうちの人に話したり紙に書いてきたかな?

 ふむふむ、5人はそうしたんだね。それだと家の人達は安心だからね。


 ・・・ ・・・


 トコトコ ズンズン 歩くのさ。

あれ、道が細くなっていく。そして、小道は3つにわかれている。

さて、困ってしまったよ。今まではただ右に進めばよかったのに、3つだとどうすればいいの?


 キツネ君は石をひろって言ったよ。

「あのね、1番右の道を選ぼうよ」

「それでいいのかな。迷ってしまったらどうするの?」

「クマ君、気になるかい。

 あのね、この石を置いておくのさ。そうだな、わかるように『6』って書いてね。

1メートルおきに3つ置こうよ」

「それ、何? あっ、目印かなぁ」

「そうだよ、ヘビ君。もし違う場所に行ったらもどるだろ。

 どんどん進むとまた道がわかれてたりしてさ、わからなくなったら戻って石を探せばバッチリさ」

「く、暗くなったら『6』なんて数字が見えないんじゃないのかなぁ」

「クマ君、大丈夫。きっと月の光で読むことできるさ」


 月の灯りは、真っ暗な夜の空をも絹のようなぼんやりした明るさで碧色みどりいろにも深い青色にもさせる。星が出ていればもっと明るいから。


「お月さま、迷ったら助けてね」

 コマドリ君がお願いするようにつぶやくと、上の方から、


「いいよ。今日は三日月だけど、君たちを照らすから」


 君たち、お月さまの声が聞えたかな。着くのは夜になるとは限らない。迷うとは限らないけれどね。

 アイデアを出して心配なことを1つずつ消していくんだね。



 トコトコ ズンズン 歩くんだ。

 ほら、野原が見えてきた。大きな木がなくて草原が広がっている。

 小さな山小屋があるよ。屋根が赤色のペンキで塗られていて窓があるんだけど、こんな広くてちょっと淋しい場所に誰が住んでるんだろう。


 山小屋に近づくと、裏には小さな池がある。だけどドングリ池じゃなさそうだ。水が澄んでないし本当に小さいから。


 水の中から蛙さんがゲロゲロ、

「こんにちは。ここはドングリ池じゃないよ。僕たちの池なんだ」

「やあ、こんにちは、蛙さん。ドングリ池じゃないのか」

「オンボロ橋を渡らないと着かないよ」


 蛙君は、珍しい友達が来たと嬉しくて仲間を呼んでダンスを披露する。それを見ていてコマドリ君が歌い始め、みんなも体が動き始めて踊りだした。


 いいかい、オンボロ橋って覚えておくんだよ。それが次の目標地点だからね。あれれ、どんな橋なのかダンスに夢中の6人は気にしていない。


 あっという間に時間が経っていたようだ。空を飛ぶ黒いカラスさんが、

「もうすぐ暗くなるからね」


 蛙さんたちは池が家だから、さよならしていく。

 すっかり暗くなるって体もひえてきた。


「夜になったかな。ええ~アライグマ君のせいだよ、最初に踊りだしてさ」

「ひどいよ。じゃあ、やめようって言えばよかったじゃないか、クマ君」

「どうするの、寒いし、お腹もすいてきたよね」

「そうだね、ヘビ君。僕は、もう帰りたくなってきた」

「ぼ、僕はだから、アライグマ君ってさ」

「僕のことがなんだよ、クマ君」

「君のことなんて、す、好きじゃなかったんだよ」

「ひどいな! 嫌いだなんて」

 6人はうんざりしてきて、もう話さなくなってしまった。



 キツネ君はそろりそろりと山小屋に近づいて小窓から中を見た。誰かいるのか少し怖かったけれど、そこで休むことが出来るかもしれないから。


 みんなの雰囲気が悪くなって、言いだしっぺのコマドリさんが困ってしまいました。ほら、誰かのことをにらんでる子もいるよ。

「待って。僕たち踊るの楽しんでたんだよ。

 人のこと好き嫌いってのは、遅くなったのとは関係ないことだと思うよ」


 そうなんだ。誰かのことを好きじゃなくても、悪い出来事をその人の責任にするのは意味がないんだよね。

 心の中で好き嫌いって思ってもいいよ。それは自由な気持ち。

 だけど、責任おしつけられたらどうかな。

 はっきり言葉にしたら、君ならどう?

「君のこと嫌いだよ」ってね。


 好きじゃない人と仲良く出来なくてもいいんだ。それでも、好き嫌い言って仲悪くすることって、傷つけあうだけなんだよね。喧嘩とは違うんだから。

3話は「うさぎのおばさんとおじさん」です


夜になってしまって6人は寒くなってしまうけれど山小屋が!

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