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Rebel(レベル)  作者: 青葉堅吉
3/3

20200414-1

朝6時。

 制服に着替えていると、スマホが鳴った。学校からの通知だった。

 『昨日夜8時。本校生徒が不審者に襲われ重症を負いました。最近、学校周辺で事故や事件が多発しています。登下校時は気をつけてください。なお、本日はこのことに関して全校集会を開きます。本日の朝課外は中止します。いつもの時間に登校してください。

                                生徒指導部より』

 ―――どうでもいいじゃないか。どうせ事故にあうのは一部の人だけだから。

 着替え終わって、朝食を食べながらテレビを観ていると、県内のニュースの中に気になるものがあった。

 『次のニュースです。昨夜十時ごろ、八代街本町区アーケード街の飲食店「麒麟」が倒壊する事故が発生しました。この事故により、会社員の荒田 孝平さん(45)が意識不明の重症です。』

 ここまではどうでもいい。たまにはこんなこともあると思っていた。が。

 『当時同じ店にいた会社員数名に話しを聞くと「荒田さんが黒くなった。」「酒で酔っていたかもしれねぇが、新さんから手が何本も生えたように見えた。」「課長が店を壊した。」などという証言が出ています。警察は過度な飲酒による器物損害の疑いも視野に入れて調べています。』

 不思議だ。きちんとした建物なら、そう簡単に人力だけじゃ壊せないはず。現地にいた人がスマホで撮影したであろう動画を観る限り爆発した様子はなく、建物の外見からしてまだ新しいものだった。

 昨夜から俺の身の回りは不思議なことだらけだ。起きたら銃を握っているし。人力で店壊した(?)みたいなニュースはあるし。

 俺って呪われやすい体質なのか?そう思って自分を振り返ってみる。

 名前、明石 優。16歳。自称超。ただ家からあまり出たくないだけで、不登校とかはない。成績はインドア派並(少し良くない)、運動神経はニート並(体育の成績など気にしない)。友達は・・・学校行ってるからちゃんといます。人と変わった点は、ただただオタクでゲーマーだということ。あと、視力はメガネ必須で、しかも左目には髪がかかっているからとにかく周りが見えないということ。

 はい、悪いことは何もしていない(たぶん)。呪われたわけではなさそうだ。


 朝食を食べ終わり、学校に行こうとしたときに思い出した。銃。朝起きたら握っていたもの。隠し場所を考えたが思いつかず、とりあえずバックにあの銃をしまい、駅へと走った。

 いつも利用している駅―――高浜駅に行くと、いつも一緒に学校に通う一人の生徒が待っていた。

「うす!ラッキーやな、朝課外なしやぞ!」

 「ん、まあよかったな。」

 この九州弁を話す少年は、沖田 慎太郎。同級生。同じクラス。小学校は一緒だったが、中学校では別々だった。家は100mしか離れてないから、本当に離れ離れになったわけではなかったが、四日前から再び一緒に学校に通い始めるとなんとなく懐かしい感じがした。

 で、彼は声や性格はアウトドアなのだが、少しひょろっとした体つきと常にタブレットを持ち歩き画面を見ている点がインドアである。

 「ニュース見た?出るらしいな「妖怪」。」

 「妖怪?」

 「あー、知らんか。」

 知るか、妖怪なんて。

 「朝からの通知読んだやろ。先輩が一人怪我しとったって。」

 「うん、まあ・・・」

 「あれについてのチャットは周ってきてないんか?」

 俺はスマホを確認した。通知を切っていたので気づかなかったが、クラスのグループチャットに確かに新着があった。

 「そこに数枚枚写真あるやろ。怪我した先輩がとった写真らしいぞ」

 そこにあった写真のほとんどは周りの建物が写っていて、どれもピントが合わずぼやけていた。しかし・・・一枚だけ。男性が一人写っている写真があった。

 現実なのか加工してあるのか。その男性は禍々しいオーラを纏っていた。まるでゲームのラスボスのように。

 「・・・これ、どうやって入手したの?」

 「それ上げたん女子やろ?先輩が送ってきたそうやで。」

 そして、沖田は目を輝かせ、

 「おもろいのは、これ観てみ。」

 彼は自分のタブレットに保存された写真を数枚公開した。

 「これぜんぶネットから落とした画像、あかんほどに全部にとるんや。

 確かに、そこに写っているのは同じようなオーラを纏った人。

 「・・・最近はやりなのか?写真の加工」

 「だから加工じゃないて、これリアルすぎやろ本物やん!」

 そうこうしているうちに電車が来た。

電車の中は程よい温度で、夜更かしをしていたのであろう沖田はすぐに昇天(つまり熟睡)した。

暇なので、スマホで昨夜もらった銃のことについて調べてみることにした。ただ、俺は銃への知識はほとんどない。知っているのは引き金を引けば弾が出ることぐらい。

 あの銃を見ながらネットで検索してみると、これは「ハンドガン」というタイプらしい。弾を込めるマガジンはグリップの中にあり、銃口には「サイレンサー」とかいうやつは着いておらず、「バレル」という部分も長くない。そして調べると、引き金を引き続ければ弾が出続ける「マシンガン」や「アサルトライフル」などとは違い、連射できない・・・らしい。

銃のことはまあまあ理解した。 

もう一つ考え事をした。。昨夜、夢の中で、確かあの男―――マクベスはこう言っていた。

 『君は明日「悪」に襲われ、死ぬ運命にある。これは事実だ』

 ネットで「悪」と検索しても、悪魔のイラストとかしかでない。

 信じがたいことばかり彼は言っていた。果たしてあれは本当なのか。本当なら、この銃は持ってきて正解だった。

 ところが。後から気づいたが、この銃には・・・弾が入っていなかった。これじゃただの鉄の塊だ。


 そうこう考えているうちに終点・・・八代駅に着いた。

 駅から自転車で10分ほど。そこに俺たちの通う学校・・・八代学院はあった。


 正式名称、県立八代学院。小学校から高校まで一貫して教育を受けることができ、全校生徒4000人あまりが通う大きな学校だ。校舎はその辺の大学よりも大きく、設備が充実。そして、毎年難関大学への合格者を出している。

俺は中等部の新規入学組で受験し、この学校に入った。理由として、高校受験をしたくないのと、地元の小学校では少し頭が良かったからだ。

 

 この学園の入学式があったのは四日前。4月10日(金)それから新入生のオリエンテーション(参加自由・もちろん俺は不参加)、主に部活紹介が土日であり、朝課外は今日からある予定だった。

 「今日の朝課外なくてもよかったんじゃね?どうせ中学の復習だろ?」

 「朝眠いしー、だるいしー」

 学校に着いて教室に入ると、こんな声が漂っていた。

 俺も沖田も同感した。

 「優、なんで入学四日目から課外あるの?」

 「しらん。というか中学から課外あったから分からん」

 「まじかよ!」

 「といっても、プリント数枚。」

 「良かったー・・・」

 「ただし問題数が全部で二十五問全て大学受験の問題又は先生が出題しやがる恐ろしく鬼クラスな問題更にその中には東○大学とか京○大学とか阪○大学等難関大学の問題更にそのほとんどが平均正答率二パーセント以下・・・」

 「はあああぁーーーーーー??????」

 「いかん・・・取り乱した」

 「あかんな、この高校・・・」

 「・・・おう」

 「とにかく、課外がなくてよかったやん。」

 

 8時過ぎ。

 高等部の生徒2000人ほどが入る講堂に高等部の全生徒が集められた。

 ステージに上がったのは、名物生徒指導部の鬼体育教官。

 『・・・全員知っているとは思うが、本校生徒一名が襲われ重症を負った。更に言えば、このような事態が最近多発している。生徒諸君には十分に気をつけて生活していただきたい。今日は県警から警察官の方が一名、この事件と諸君にできることについてお話をしに来てくださった。心して聞け。』

 長い長い話が続いた。一時限目の授業までつぶれた。だが、結局話された内容は「怪しいやつには近づくな」ということだけ。

 同じように解釈したのだろう。教室に帰る途中で沖田が言った。

「やっぱ妖怪だから警察もお手上げで何もできないから「近づくな」なんじゃね?妖怪にはやっぱにんにくと十字架やん!」

 それはドラキュラ。

 この話しを聞いて、警察が手を出せないということは少し察した。てことは、これがマクベスの言っていた「悪」なのかもしれない。だとしたら、銃では勝てないはず。だって警官も銃は持ってるから、射殺くらいできるだろう?それに人間なら、周りの人間が攻撃すればどうにかなる話だ。やっぱり何かがおかしい。


 マクベスの予言がいつ訪れるのかゾクゾクして待っていたが、結局何も起こらなかった。

 授業全6コマが終わり背伸びをしているところに、沖田がやってきた。

 「明石はどの部活入るん?やっぱパソコン研究部やろ」

 「おまえは馬鹿か。入らないという選択肢がある。」

 「あ、そうか。さすが超インドア」

 「俺の理想としてはあらゆる光をカーテンでカットして24時間夜と化した部屋の中でヘッドホンを付けて光と音を独占してゲームの世界に溶け込みたい・・・!!!」

 「・・・もうええわw」


 帰り道。俺は自転車で八代駅を目指した。

 結局何も起こらず一日は終わった。死んでいない。完全に一日が終わったわけではないが、もう何も起こらないだろう。家に帰って戸締りすれば、近所にはコンビ二もあるし何かあれば人がいないわけじゃない。

 俺は一日を生き延びた。後は電車に乗って帰るだけ。


・・・のはずだった。


 午後5時。八代駅前。

 明らかにおかしかった。

 何がって?

 ・・・人がいない。

 

 異変に気づいてスマホを出して110と思ったそのときだった。

 目の前にそれは現れた。


 禍々しい赤黒いオーラを纏い、目が赤く光り、全身にとげが生え、全身に力をみなぎらせた人のような何かが。


 このとき、今日見たもの、聞いたもの、知ったものの全てが重なった。沖田が見せてくれた妖怪。先輩を襲った大人。破壊された居酒屋にいた人々の証言。そして、マクベスが言った自分を死なせる「悪」。

 これだ。こいつだ。自分を殺しにくる「悪」とかいうのは。

 俺は逃げようとした。しかし足が震えて走り出せない。目の前のヤツはこう言った。

 「・・・アッ?コンドハキサマカ?オレノメノマエニタツトハイイドキョウダナ。メザワリナンダヨ・・・ニンゲンガ・・・コノヨノスベテガナ!」

 ここで俺は脚を動かした。が、自分の足が言うことを利かない。走れない。魔術か何かを使われたみたいだ。

 「オマエシラナイノカ?コノセカイデイチバンエライノハ・・・オレナンダヨ!」

 やばい。これは完全にやばい。

 「オマエ、オレノゲボクニナルカ?ムリダヨナ。オマエミタイナヒヨワナニンゲントカイウセイブツニハヨ!」

 ここで俺は思い出した。それは最後の手段。あれの出番だ。

 「ツカエナイヤツハ・・・シネ!」

 こちらへ飛びかかろうとしたヤツに向かって・・・弾のないあの銃を向けた。

 「あんたも所詮は生き物だ。撃たれたら死ぬんだよ!」

 ちょっと罵ってみた。が。

 「バカハオマエダ。オレ二タマガキクトオモウカ?オマワリニウタレテモコロサレテナインダゾ?」

あ、食らった後だったか。

というわけで。俺氏、死亡確定。

 「トリアエズシネ!」

やつが跳びかかってきた。

終わった。

はずだった。


バシュ。


ヤツの手が俺に当たるその瞬間、一発の雷がヤツに直撃。なぜかは分からなかったが、ヤツを吹き飛ばした。

 そして、女子の声が聞こえる。


「支配者を発見したゾ。速く来てくれ」


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