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偽るキスと恋心  作者: ハルカ カズラ
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6.好きって?

            6.好きって?



未喜貴みきたか~~! お前、ひでーよ! 起きたらすでにいなかったじゃんよぉ」


「それは俺のセリフな。何がオールだよ。みんな寝落ちとかアホかよ。俺と志倉しくらだけだったぞ? 最後まで起きてたのは」


「すまんかった。やっぱ、アレだよ」


「最初に行くべきだった。そういうことだろ?」


「うむ。それな」


 普段から遊び慣れてる奴等なら、それもありだろうが津田はこう見えて……いや、単にうるさくてウザいだけの奴がずっと起きてるはずがない。そういう意味では案外に、コイツは素直な奴かもしれない。好きじゃないけど。


「なぁ、津田は女子たちとなにか話したのか?」


「そりゃあ、そうだろ」


「何を話す?」


「別に何でも話すよ。なに、なんかあんの?」


「何も無い」


「まぁ、待て! 未喜貴を好きな女子なら何となく、分かった気がするぞ」


「俺を好き? 何で?」


「そりゃあ、タイプだからだろ! うるさい奴でもないし、流行りものに付いて来てないし、突き放し系だし。モテそうな匂いがするぜ!」


「へー。そうか、じゃあな!」


「待て! 逃げるのか? 聞きたくは無いのか? 誰が貴様を狙っているのかをな……」


「どうでもいいな」


 津田のキャラは大体掴めた。それはともかく、俺を好きだとか言ってくる女子。そんなことを言われてもそれが何故なのか俺にはまるで理解出来ない。好きってなんだよ? どうしたら好きってなるんだよ。


「ふ……近いうちにソイツは貴様に告る! 俺には分かる。分かるぞ?」


「あっそ」


 ぎゃあぎゃあと勝手に喚く津田を放置して、俺は自分の席に着いた。着いた途端に、振動で驚いた。いや、驚かされた。俺は音を鳴らさない主義。だから、ケータイはほとんど見ないし出ない。


 が、とりあえず見てみた。どうやら誰かが放課後に俺を倒したいらしい。待ち伏せをしてるから屋上へ来いと書かれていた。


 文面から察するに、野郎では無く女子っぽかった。名前は書いてなかった。と言うよりは、俺は誰にも教えてないはずだった。もしかしたらカラオケで寝てる最中に、勝手に登録されてたかもしれない。


 普段、昼は開放されてる屋上は放課後にはさすがにいなくて、割と好きな場所だ。静かな場所が好きな俺は、寒くなければずっとここにいてもいいくらいに思っている。そんな屋上で、待ち伏せとは誰だ?


「ミキタカくん」


「お前、乙川おとかわ? 何か用か?」


「わたしさ、ミキタカくんが寝てる時にキス……」


「お前か? 俺にしたのは」


「ううん、わたしじゃない。けど、知ってるよ。知りたい?」


「知ってるなら教えてくれ」


「いいよ。じゃあさ、わたしを好きになってくれる? それなら教えてあげる」


 何言ってんだコイツ……? 


「は? 何でそうなる? 好きって何だよ。それなら教えてくれなくてもいい。じゃあな」


「待って! 嫌いなの? わたしを……」


「どっちでもない」


「じゃあ、可能性あるんだ? 答えられるなら答えて欲しいんだけど、いい?」


 あぁ、うぜえな。いつ俺がコイツに好かれるようなことをしたんだ? いや、そもそも好きになるってどういうことだよ? 口うるさいのは野郎だろうが女子だろうが面倒だ。そう思った俺は、黙らせるつもりで行動を起こした。


「――!?」


 ……で、すぐに俺は乙川に頬をぶっ叩かれた。黙らせるにはキスするのが一番だ。そこに気持ちなんて無くてもだ。頬を思い切り叩いてきた乙川だったが、叩いた頬にそのまま手を当てて泣いてた。


「ど……うした? 手、痛いのか?」


「ごめん、でも好き。好き……だから、キスしてくれた。それでいいんだよね?」


「……分からない」


「――そ」


 何で俺はコイツにキスしたんだろうな。好きという気持ちなんて無いのに。嫌いでもないが、どんな気持ちでしたんだ?


「わたしはミキタカが好きだから、覚えてて。じゃあ、また……」


 そう言うと、それ以上は特に何も言わずに屋上からいなくなってしまった。って、おい! キスした奴、教えていけよ! などと言っても誰もいない。俺は何の感情も動かないままそのまま、家に帰った。


 この、乙川へのキスをした日から、まだ名も知らない女子たちが俺に関わって来るようになることを、まだこの時の俺は知らない。知りたくも無い、興味も無い。ずっと、そう思っていた――

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