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偽るキスと恋心  作者: ハルカ カズラ
3/20

3.まるで初対面?


 翌日になって、早くも学校に行きたくなくなった。まだ一年目の始まりなのに、朝から憂鬱になるとは思ってなかった。俺が何にも考えずにキスしちゃった女子が同じクラスの遅刻魔女子とは、想像を激しく超え過ぎた。幸いなのは、そもそもまだ男も女も全体的に馴染んでないのが不幸中の幸いだった。


 むしろ余計なことをしそうな自称ダチの津田だけが、俺の内心をビクビクさせている。そしてそれは、的中する。


「おす、未喜貴! 昨日はどした? 電池切れのスマホみたく沈黙して心配したぞ?」


「たとえがアホだろ……どうもしねえし」


「おぉ、そういや、まだ来てねえけど遅刻魔女子なんだが」


「……」


「起きてるか?」


「で?」


「その子、フリーだぜ? 狙っちゃう?」


「フリー? 自由ってことか」


「未喜貴って……説明が欲しい系男子かよ! 面倒だがそこがまた、いい!」


「キモいからやめろ! 分かってるよ……ってか、今から付き合ってどうするんだ? どうせ3年後には別れるんだろ? 面倒だぜそういうの」


 高校で彼女出来る、付き合う、好きになる? それからどうする? キスをするのか。気持ちなんてマジで分からねえよ。誰か教えてくれよ。


「未喜貴って、アレだな。まだお子ちゃまなんだな……ううっ、分かったよ。よく、分かった。俺がバッチリサポートしてやろう! ダチ特価でやすくしてやっから!」


「タダじゃねえのかよ!? 世話焼きすんならそれこそフリーでやれよ」


 津田の他にももう少しまともなダチを作らねえとやばいな。余計なお節介を焼きそうだ。


「遅刻魔女子来たぜ?」


「……俺はここにはいない」


「面白いな」


 いかにして存在感を失くすか、これから会得して行かないとまずい。まずいはずだ……そう思っていたが、拍子抜けをすることになる。


 


「未喜貴! 喜べ! 昼に女子数人と、他の奴とでメシ友出来んぞ!」


「何だそれ?」


「学食で仲良く食べるお友達!」


「聞いたことないが?」


「今作った言葉だ! とにかくさ、せっかくおなクラになったし、行こうぜ? 未喜貴はモテるぜ?」


 俺がモテる? 男になら確かにモテてるな。良くも悪くもすぐにダチが出来るのは個性のおかげか。でも女子はどうなんだろうな。何を話せばいいのかさっぱり分からねえからな。そういう感情が本当に無い。


「コイツ、俺のダチ1号で未喜貴みきたか! よろ~~!」


 お前の名前は名乗らねえのかよ? 何で俺だけ晒し者になってんだ……


「……未喜貴樹みきたかき


 本名を名乗らないと名前が決まってしまいそうだったので名乗るしか無かった。津田がしてやったりな顔しててムカついた。


「初めまして。わたし、遅刻ばかりしててそれで有名になってますけど、瀬織せおりひよりです。よろしくお願いします」


 初めまして? そんな馬鹿な……あれ? 俺、会ったよな? しかもキスしたよな? な、何で?


「初めまして?」


「え? 未喜貴くんですよね? はい、初めまして……ですね」


 未喜貴で伝わりやがったよ。もうそれでいいや……人間、諦めが肝心だ。


「ウチ、ひよりの友達の乙川奈南おとかわなな! 未喜貴君、よろしく~! ついでに津田も」


「ついでかよ! 良かったな、未喜貴。俺の見込んだ通りだ! 女子人気かっさらった」


 かっさらうほどの人数じゃねえだろ……それにしても、ひよりか。いや、そもそもガキの頃に出会った女の子にしても、キスしちゃった女子も名前すら知らなかったわけだしな。相手も俺のことなんて何にも覚えてないんだろうな。初めましてって、それは無いわな。とりあえず、晒し者にならずに済んで良かった。

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