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偽るキスと恋心  作者: ハルカ カズラ
17/20

17.偽りの彼女


 ずっと避けられていた。俺はそう思っていた。みんなで行ったカラオケで寝ている間に、誰かにキスをされた。それを目撃したらしい乙川が、教えてあげる代わりに付き合ってよ。などとくだらないことを言って、そいつにも偽りのキスをした。何の感情も無いにも関わらずに。


 普段から遅刻をしまくる瀬織せおりは、俺や津田からは気のせいか分からないが、距離を置いて様子を見ていたような、避けられていたような気がしていた。


 そして、今日の昼。乙川に嫌われるためだけに、嘘の俺を全面に出して周りから女がいなくなった。そこに声をかけて来たのが、瀬織だった。


「どちらのキスが嘘なの?」


 俺はなんて答えればいいんだ。乙川へのキスは完全に偽りだ。だけど、瀬織へのキスはあの子だから、だからキスをしたんだ。そう答えれば展開が変わるのだろうか?


「……乙川へのキスが嘘だ」


 俺は正直に答えた。この場にはもう、俺と瀬織しかいないから言うしかなかった。


「わたしへは本当だったってこと?」


「お前も嘘ついてただろ。カラオケに行くとき、初対面って言ったけど違うだろ?」


「そうだけど?」


「は? どっちだよ」


「初対面じゃない方。だって、この学校来てすぐにキスされたし……」


 やっぱり、コイツだった。何で今になって、こんなことを言って来たんだよ。


「あのキスは何で?」


「お前、社宅に住んでただろ?」


「それは覚えてないけど。それとキスの関係って?」


「お前が俺の思い出の女の子だからだ。悪いかよ」


「だからキスしたんだ? こっちの気持ち無視して、あんなことするんだ?」


 気持ちを無視か。それを何故今になって、言ってくるんだよ。嫌いならそのまま俺のことなんて、相手にしなければいいじゃねえかよ。何でだよ。


「お前のことがす……いや、いきなりして悪いと思ったし、後悔もした。でも、嫌いな相手にバンバンキスとかしねえし。乙川の事だって嫌いってより、黙らす為で……そんなんじゃねえし」


「そうなんだ。ふぅん? 奈南のことはわたし、関係ないしいいけど。わたしのことは気にしてくれてるんでしょ? だったら、付き合う?」


「は? 何でそうなるんだ。付き合うってそんな簡単に……」


「気持ちとか深く知りたいなら、それが早いじゃん? とりあえず付き合えば、未喜くんが思ってる子とはかけ離れてるって分かるかもだし?」


「思い出の子をこの歳まで引きづってるとかねえし。だから、今の瀬織で見るけど。本気なのかよ?」


「偽りを重ねていいなら付き合ってもいいよ」


「何だよそれ……」


 いや、でも今の俺は仮とは言え、唯原と付き合ってるんだ。急にこんなこと言い出す女と付き合うのか? 迷いも何もないわけにはいかないだろ。ここは、唯原を追いかけて話すしかないはずだ。


「悪いけど、俺は今、仮でも付き合ってる奴がいる。だから、瀬織と付き合うとか無理だ」


「仮なんでしょ? だったらいいんじゃないの?」


 こうしてここで話しても昼が終わる。瀬織の言い方がイマイチ、気に入らなかったというのもあって、俺は唯原を探すことにした。少なくとも、言い方に問題があってそれで気分を悪くしたのは事実だ。


 だから俺は、今優先すべきなのは目の前の女じゃなくて、話をしてくれた唯原なんだと思った。


「……悪ぃな。話の続きはまた今度聞く」


「あーうん、それもそっか。じゃあ、後ででいいよ」


「じゃあな、瀬織」


「……じゃあね」

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