15.理想崩壊へのカウントダウン
「嘘、アレが寡黙な未喜?」などと、ヒソヒソが聞こえて来る。俺に対して、勝手なイメージを抱いている女子たち。元から寡黙を演じていた訳でもないし、モテようとしてそうしていた訳でもないのにな。
俺は好意を押して来る乙川を突き放す為に、俺自身を偽って過ごすことにした。もちろんこれは、学校の中だけの話だ。他のチャラめな男と同じになれば、俺も他の奴と同等な扱いをされるはずだからだ。このことを知っているのは提案した唯原だけだ。現時点で俺の彼女でもある。
だが、教えてもいないのに俺のちょっとした変化に気付き、話しかけて来るあざとい野郎がいる。志倉真。自称俺の幼馴染だ。俺のことを少しでも知っている奴を騙せれば成功と言えるだろう。
「おい、未喜。お前、どうした? そんなキャラじゃないだろ。俺が知ってる未喜はクールなSのヒドイ男だったはずだ。お前、いいのか? 遅刻魔女子に知られたら……」
「何のことか教えてくれないか? シンくん」
「なっ!? お、お前、人格が崩壊してるぞ? ガキの頃からクールぶってモテてた奴なのに。熱でもあるんか?」
「俺に触るな!!」
気でも狂ったのか、俺の額に手を近づけて来たせいで地が出てしまった。
「おっ、それがお前だよ。安心したぜ。それだけだよ、悪かったな」
「何言ってんだ? 男に触られたらジンマシンが出るだけだ。お前、俺に触られても何ともならねえの? だとしたら疑いをかけられても仕方ないぞ……」
「あ、アホか!! 違うぞ、断じて違う! じゃ、じゃあな」
単純な奴で助かった。それに遅刻魔女子ひよりに知られたからって関係が変わるわけじゃ無いだろ。相手は俺のことを会ったことが無いなんて言い放った女だ。俺のキスの記憶を抹消したんじゃないのか?
俺から見ても間違いなく瀬織ひよりが、俺の思い出の女の子に間違いないはずなんだ。それを、いや、まるで関わりたくないかのように、同じ教室にいても話をしない。大人しい性格だからなのか、遅刻魔だからなのかは分からないが、他の女子とも違う。だから気になっている。だが今はそれどころじゃない。
元はと言えば俺がやったキスが原因なのだが、思い出にある意味囚われすぎている俺は、そうすることが正解だと思っていた。俺の兄貴からずっと教えられてきた事をしただけだ。
うるさかったり、怒っていたり、女の子は感情が目まぐるしく変化する。そん時は、外国の親が子を寝鎮めるために口付けをするということをお前もやればいい。などと、どこかの間違った知識と先入観を、俺に教えてくれて今に至る。
「乙川、昼だけど行くか?」
「そ、そうだね。じゃあ、私と苺花、椎名も一緒に行くから。未喜貴くんは羽多を誘ってるんだよね? 他に男子はいないの?」
「誘うわけないだろ? 俺は野郎が嫌いなんだ。好きなのは女だけだ。それも可愛い子限定のな」
「ふ、ふぅん……そうなんだ。なんか、ひどいね」
「ん? どうした?」
「それって、本音なの? 可愛くなければそうじゃないってこと?」
「さぁ?」
「……」
この反応はアレか。俺と一緒に行きたくなくなってる。こんな人だとは思わなかった的な、何かを抱き始めているのか。だったら、とっとと俺に近付くのをやめて他のいい男に好意を寄せろよ。
俺はあいつ、ひよりともっと近づきたいだけなんだ。偽りを重ねて本当の俺を出せなくなるのはごめんなんだ。だから俺から離れてくれよ。




