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偽るキスと恋心  作者: ハルカ カズラ
11/20

11.付き合ってみれば?

   

「……で、未喜貴みきたかは誰が好きなん? 俺だけの秘密にしとくから言ってみ?」


「誰でもない」


 津田はまるで分かっているかのように言ってくるが、好きという感情は俺には分からない。まずはそこから言わなければならないみたいだ。


「津田、お前は好きな奴いるのか?」


「おおう! 俺に聞くんかい! 俺はいないかな~。ダチと遊んでる方が楽しいからな」


「いねえのかよ。なぁ、俺さ……好きとか嫌いとか分からないんだ。どうすれば分かる?」


「は? 未喜貴お前それ、マジな奴? てっきりそう演じてるかと思ってた。だから女子たちも警戒なしに近付いてたっぽいし」


 そうか、だからふざけながら俺に女子のことを勧めていたのか。


「それってガキの頃からの話か? ガキの頃に気になる子くらいはいただろ」


「ガキの頃は、同じ社宅に住んでた女の子が気になったことがあった。それくらい……」


「あるじゃんか! 未喜貴にとっての気になるってどういう感じ?」


「よく分からねえけど、もう一回会いたいとか、話をもっとすればよかったとかそんなもん」


「なんだ! お前、知ってるじゃねえか。好きってのはそれをもっとこう、倍増させたやつだよ」


 倍増ってなんだ? それが好きってことなのか。でも、そうじゃない気がする。よく、分からないな。


「乙川は何で俺のことが好きなんだ?」


「いや、俺もそれ知りたいんだが。未喜貴、あいつに何かした?」


 俺は津田になら話しても問題ないと思って、屋上での流れを話してみた。


「……ってか、マジで!? くぅーー! 俺が寝落ちてる間にキスをされたのかよ~。マジでうらやま! で、それを見たのが乙川で、教えてほしかったら好きになれって言われたと? その理屈が俺には分からんけど、うるさかったから乙川にキスをした。それで合ってる?」


「まぁな」


「……それはあり得ねえ! 未喜貴ってアレか? 実は女を黙らせたりするのにキス出来てしまうひどい奴なのか? それはないわ~。そんな奴は見たことないぞ……一応、聞くけど乙川以外の女子にやってないよな?」


「あるけど、いや。でも……」


「それは俺の知ってる女子?」


「知ってる。と言うか、同じクラスの奴のはず……たぶん」


 確信は無い。だけど、俺がこの学校で初めてキスをしたのは多分、あいつ。あいつが俺の思い出の女の子のはずだった。だからそのままあいつの口を塞いだんだ。それなのに、初対面なんて言われたら俺はどうすればいいんだよ。恋かどうか分からないのに、俺の思い出はどこへ向かえばいいんだ。


「遅刻魔のあいつだろ?」


「……ああ」


「だと思った」


「何で分かる?」


「メシ友の時に瀬織のコトを気にしていたろ。初対面って答えたアイツ見て、未喜貴が驚いてたから不思議に思ってた。お前にとっては二度目だったんだろ? なのに、初対面とか言われてがっかりした。だろ?」


「津田、ウザい」


 ちっ、やっぱりコイツはこういう話にかけては鋭い奴らしい。こういうことはコイツに聞くしかないのか。他に話せる奴がいないしな。


「そんな未喜貴に提案がある!」


「何?」


「とりあえずあれだ、付き合ってみれば?」


「あ?」


「だから、女子と付き合ってみればいんじゃね? そしたら好きとか嫌いとか、感情について学べるかもよ? ただ、お前の口調を聞いた限りだと乙川とは付き合うつもりはない。ってことだろ」


「あんな晒され方して付き合うとでも?」


 少なくとも同じ教室の連中は俺のことを敵と判断しているらしい。乙川は女子にも野郎にも人気みたいだった。普段は周りを気にしたことが無かった俺だが、乙川って女子は周りをよく見て接しているってことが後で気付いて分かったことだった。


「あーうん、アレはキツイよな。まだ学校始まってそんな経ってないけど、あいつは結構強敵だぜ? で、未喜貴と付き合う女子を呼んでおいた。喜べ! そいつ、ノーマークだから」


「は? 知らない女子に会うのはさすがに……」


「カラオケで会ってるよ。未喜貴のことが気になってるらしいし、そいつも恋とかよく分からないらしいから、たぶんお似合いだ。で、本題な。女子と付き合っていって、恋に気付いて来たら瀬織に告ればいんじゃね? 初対面ってあいつは言ってたけどたぶん、違うし」


「お前どこまで知ってる?」


「俺を頼りにしたまえ! んじゃ、紹介すんぞ」


 バーガー店で野郎二人で食っていた所に、見知った顔の女子が笑顔と意外な名前を口にして歩いてきた。


「まさ美~うい~す! 未喜貴くん、やっほ!」


 まさみ? どこの女だよ! なんて思っていたが、津田がどこかの方角をきょろきょろとし始めていた。コイツのことか!? その名前って、あの漫画家の名前じゃねえかよ。同姓同名の男かよ。


「お前、漫画家みたいな名前してたんだな。俺は何気にあの漫画好きで全巻持ってるからすぐ気付いたんだが、マジで受けるぞ!」


「く、くそ~! まさか未喜貴に突っ込まれるとは……しかも、全巻ってファンかよ! そ、それはともかく、羽多うたのことは覚えてるだろ? 俺はコイツと昔馴染みなんだよ。コイツなら彼女とかじゃなしに付き合えるはずだ」


「そ、まさ美のダチの羽多っす。どうどう? 付き合う?」


 津田の意外な名前が分かったこともあったが、羽多って女子は嫌な感じがしなかった。津田に勧められるままっていうのはシャクだったが、俺はとりあえず唯原羽多ゆいはらうたと付き合ってみることにした。何をどうすればいいのか分からないままだが、少しは何かが分かるかもしれない……そう思いながら。

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