表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ある虐められっ子の叫び

作者: かふぇおれ

私の価値感を、どう受け取るかは個人の問題です。

否定しても、賛同してもどちらでも構いません。

どれだけ他人の影響を受けていても、自分で考え、自分で答えを出しているなら叩いても構いません。

ただ、他人の言葉を自分の答えの振りをするのだけはやめてください。



「ふざけんなっ!!!」


ある学校で一人の少年が叫ぶ。


「何で俺が悪いんだよ!!」


「竹田君、落ち着いて」


担任である伊藤先生が少年を窘める。

けど、それは逆効果だった。


「黙れよ!何も知らない癖に!お前に俺の苦しみが理解出来るのか!?」


「どんな状況であれ、手を出した方が悪いんだから…」


「バカかお前は!!手を出さなきゃ何をしてもいいのか!!手を出さなきゃ毎日暴言吐いて物を隠しても許さなきゃいけないのか!!」


完全に頭に血が上り、興奮している彼はもう我慢出来なかった。

ずっと、ずっとずっと一人で耐えてきた。

だけど、もう我慢の限界。

彼は心に抱えていた闇全てをさらけ出す。


「虐められてたんだよ!それを相談しても無視する奴の言葉なんか信用出来るかっ!!」


「虐められる側にも原因がある?ふざけんじゃねぇよ!!」


「その原因作ったのもあいつらだろ!」


「他人とコミュニケーションを取れてない?ふざけんな!!」


「人より不細工だからか?人より運動が苦手だからか?人より勉強が出来ないからか?どんくさい、気持ち悪い、汚い、菌が移る」


「そうやって俺を突き離しておいてどうやって他人とのコミュニケーション能力を磨けばいいんだよ!!」


「俺が頑張って手を伸ばしても振り払ったのはあいつらだ!!」


「頑張って話しかけたら話しかけるなだぞ!!話しかけられた気持ち悪いだぞ!!」


「協調性が無い?ふざけんな!!」


「協力しようとしても拒否されるんだよ!お前なんかがって言われるんだよ!!」


「お前に俺の気持ちが分かるのか!!何をしても否定され、バカにされる俺の気持ちが!!」


「味方なんて誰一人いない孤独な俺の気持ちが!!」


彼の叫び声が教室中に響く。

騒ぎを聞きつけてやってきた他の教師も、彼の担任も、誰もしゃべれない。

誰も彼の心の叫びを止めれない。


「一人でいるから虐められる?友達を作れ?」


「全部敵だぞ?どうやって敵と仲良くなればいいんだ?」


「普通の友達すら作ることを許されなかった俺に、どうやって敵と友達になればいいんだよっ!!」


「いじめに加担してない奴?そんな奴はいない!」


「見て見ぬ振りして見捨てた奴は俺を虐めてるのと同じなんだよ!加害者なんだよ!」


「勇気を持て?バカだろ!」


「勇気を持って何をすればいいんだ?なぁ?誰に頼ればいいんだ?」


「俺を虐める奴か?俺を無視して見捨てた奴か?相談したのに無視した教師か?」


「なぁ?俺は誰に頼れば助かったんだ?なぁ!!教えろよ!!」


教室が静まり返る。

彼の抱えていた闇は深く、重かったからだ。

子供達は、彼をここまで追い込んでいると思わず、ただ、いじめを楽しんでいた。

大人達は、自分が担当している子に、いじめは無いと思い込んでいた。

いや、正確に言えば、いじめがあったとしても、自分が担当している時に問題さえ起こさなければどうでもいいとすら思っていた。

他の先生が解決してくれる、時間が解決してくれる。

だから、自分は当たり障りのない答えを言っていればいい。


「いじめに気付くことが出来なかった。一言相談してくれれば解決の為に尽力出来た」


「いじめに対処出来たと思っていた。結局は自分が見えない所で今まで以上にいじめが行われていた。自分の中で、終わったと思い込んでいただけだった」


終わってから力不足でしたと言えばいい。

そう、思っていた。


「どうした……?なんで誰も答えない?先生なんだろ?教えてくれよ?」


それでも、誰も答えることはない。

答えを持っていないからだ。

いつの時代も、いじめはダメだと、いじめを無くそうなんて言ってるのはいじめられたことが無い奴だ。

本当にいじめを受けた人は、いじめが無くならないことを理解してる。

どれだけ足掻いても、どれだけ耐えても、何も変わらないことを理解している。

彼もまた、足掻き、耐え、変わろうと努力した。

その努力もバカにされ、否定され、笑われた。

そして、何も変わらないことを理解してしまった。


「はっ………はははっ……結局無視か。俺なんかの質問に答える価値は無いってことだろ?」


さっきまであった彼の怒りが完全に消えた。

その代わり、彼の声や目、顔には諦めが映っていた。

まるで、ここで終わるかのような。


「いいよ……もう。生きてればいいことがあるって嫌になるくらい聞いた」


「けど、もうどうでもいい。先にどれだけ楽しいことがあっても今辛いなら意味が無い」


「俺を殺したのはお前らだからな?一生背負って生きて行け」


そう言って、彼は教室から飛び降りた。

学校の3階から、頭から飛び降りた。

窓を突き破り、死ぬ為に飛び降りた。


その光景を多くの子供や大人が見ていた。

けど、誰も止めなかった。

止めれたはずなのに誰も止めなかった。

言葉から死のうとしていたのは誰にでも理解出来た。

けど、それを理解しようとしなかった。

自分のせいだと思いたくなかったから。




「きゃあああああああああああ」

「いやああああああああああああ」




外から響く、女子生徒と思わしき叫び声。

その声を聞いてようやく、その場にいた人達は理解した。


今、目の前で、人が一人死んだ

自分達が追い込み、彼を殺した


そう、ようやく自分達がしたことの重さを理解した。

そして、理解したからこそ色々な思いがこみ上げてくる。


「うっぉおろろろろろろろろ」


何人かがこみ上げてきた思いに耐えきれず、吐いてしまう。

けど、この程度の苦しみでは足りない。

自分達が殺した彼の苦しみには足りない。





















彼が死んだ為、このいじめは終わりを告げた。

多くの人の心に傷を付け、このいじめは終わりを告げた。

誰一人幸せになることなく、完全で、完璧なる不幸で終わった。


その後、学校は保護者に謝罪をした。

もちろん、世間に対しても記者会見を用い謝罪した。

その映像を見て多くの人は無責任なことを言う。


あるコメンテーターは心が全く籠っていない、台本通りの「御冥福を祈ります」と。

あるいじめ専門家は台本通りの「学校の対応がー」と。

ある掲示板では「死んだら全てが終わりだから」「虐められる側にも問題がある」と。




彼は死んだ。

彼は殺された。

報道された為、多くの人が彼の死を知った。

けど、それは何日も持たない。

次のニュースが流れる時には忘れられる。

一つの命が無くなったことを忘れる。




彼は死んだ。

彼は殺された。

受け持っていた担任が彼を殺した。

助けを求める声を無視すると言う形で殺した。

けど、そのことを忘れてしまう。

時間が経てば経つほど彼のことを、彼の死を忘れてしまう。




彼は死んだ。

彼は殺された。

いじめをしていた子供達が彼を殺した。

彼を嘲笑い、彼の努力をバカにし、彼の全てを否定し、彼を殺した。

けど、そのことを忘れてしまう。

自分達の行いを、自分達が殺した存在を忘れてしまう。






自分達を守る為に、人は辛いこと、苦しいことを忘れる。

だから、彼の死は忘れられる。

だから、彼の存在は忘れられる。




自分達を守る為に、人は辛いこと、苦しいことを忘れる。

だから、彼らはまた同じことをする。

だから、悲劇は終わらない。





この世界から悲しみは無くならない。





いじめを無くすと言っている人を信用してはいけません。

なぜなら、いじめを無くすことは絶対に無理だからです。


理性で動く大人が、大人をいじめる話はよくあります。

それなのに、感情で動く子供のいじめを無くすなんて理想論を掲げるのはバカのすることです。


本当にいじめを無くすのであれば、いじめを行った子共と教師を終身刑もしくは死刑にする必要があります。

一人の人生を壊す以上は、この程度でも軽い罰だと思います。

それでも、世の中はやりすぎだと反発します。

もしも自分達が関わったら嫌だから反発します。

そんな残酷で残虐な人間が、無関心で事無かれ主義の人間が、いじめを無くすなんて理想を掲げる。

とても面白いですね。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] その「ある掲示板」だけかもしれないし、虐められる方にも問題云々書く奴は ネット上でもたまにいるけど 大体はネットの掲示板ってこういう事件が起これば「いじめやった連中や担任の特定まだか!…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ