04.眠り猫は約束の夢を見る
猫は昔の夢を見る。
少年のお陰で頭を覆っていた黒い靄は取り払われ、時折昔の思い出が鮮明に蘇る時がある。
これは、前のご主人から指輪を貰った時の記憶だ。
猫の瞳と同じ、金色の指輪。
主人は亡くなる直前、大事にしていたその指輪を猫に渡してきた。
受け取ってしまったら、主人の死が決定的になりそうで、猫は指輪を拒絶した。
そんな猫に主人は息も絶え絶えに優しく語り掛ける。
もし、傍に居たいと思える人に出会えたら、渡すといい。
指輪は猫とその人を結ぶ絆となり、加護となるだろう。
そう言って主人は優しく指輪を猫の尻尾に付けた。
そしてそのまま優しく撫でる。
猫は啼きながら主と約束した。
いつか、そんな相手に巡り合う事を――。
自分は大丈夫だから、どうか安心して眠ってくれと。
それを聞いた主人は笑っていた。
笑って、そして幸せそうに眠りについた。
そして猫は一人ぼっち。
いつしかその約束も忘れていた。
でも思い出した。血よりも紅く炎よりも熱い約束を取り戻した。
幸運な事に候補となる者は傍にいる。
まだ完全には認められないが、尻尾の先くらいは信用してもいいと思っている。
さあ、遠き日の約束を果たそう。
――≪『眠り猫』浅緋のキークエスト『エンゲージ』の発生を確認しました≫
◆
「ぶべらっ」
少年の声であさひは目を覚ました。
何故か少年は顔に白狐を貼り付けている。
その、何ともいえない威厳の無さにあさひは溜息をつく。
あまりにも情けなさ過ぎる。
やはりこの少年には自分が付いてやらねばならない。
そう、決心する。
あさひはもう一度嘆息すると、少年に肩に飛び乗った。
そうして彼と同じ物を見て、彼を見極めていこうと思うのだった。




