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彼はそれでもペットをもふるのをやめない  作者: みずお
第二章 クリムゾンリバレート
35/88

08.彼は妹のチームと語らう

 遅くなって(ry

 細かい構成は三章(大雑把な構成は五章くらい)まで出来ているのでとりあえず失踪はありませんのでご安心ください。

 コハネ達がお店に来てから三十分ぐらい経っただろうか、海猫亭は来客のピークが過ぎ今は人がまばらにテーブルに着いているのみである。

 女将さんはそんな店内を見渡すと皿洗いをしている俺のほうに振り向く。


「あんた。皿洗いが終わったら上がっていいよ」

「まだお客さんは残ってますよ?」

「いいんだよ。それにあの子らはあんたの知り合いだろ。だったら行っておやり」

「おー女将さんまじイケメン」

「あたしゃ女だよこのおバカ」


 女性である女将に対して若干失礼な感想を述べて怒られつつ、俺は好意に甘える事にして御礼を述べて皿洗いに精を出す。好意には誠意で返すのが俺の理想だ。理想であって体現できているとは言えないが。

 洗い物が終わったら女将にお礼を言い、テレシアにも声を掛けてエプロンを外す。


 裏口から一旦出て調理場という事で外に待たせていた朽葉を思う存分抱きしめて一人で待たせた事を謝る。

 システム的には抜け毛とかは無いのだが、調理場に動物を連れ込むのはどうしても抵抗があったので裏で待ってもらっている。

 ちなみにペットはプレイヤーの特殊アイテム扱いらしく女将さんもテレシアも厨房に連れても何も言ってこない。


(そんな反応を見るとやっぱりゲームなんだなーって感じるな)


 それでも動物持込は抵抗あるなーと思いつつ俺はくちはを胸に抱え、お店をぐるっと半周して正面からお店に入り直す。


「同席してもいいかなー?」

「あ、お兄ちゃんお疲れー。いいよっ」


 他の三人も頷いているのを見て俺は椅子を引っ張ってきて通路に面した短辺に座る。長方形の形を取るテーブルの長辺には女性四人が既に座り、テーブルは窓際に接しているので必然的に俺の位置はここになる。

 両手に花どころではない。


「少し遅くなったけど自己紹介しとこうかしら。私はガンシューターのヴィヴィアンよ。ヴィヴィって呼んでくれると嬉しいかしら」

「よろしくー」


 俺から見て左の通路側に座る褐色肌の女性が食後の紅茶から口を外し、こちらに快活に笑いかける。

染み一つ無い白いタンクトップの上に赤葡萄酒色の革ジャンを着込み、ホットパンツから覗く太腿が目に焼きつくくらい毒である。足には漆黒の厳ついブーツを履いている。

 年齢は俺より二、三歳上に見える。大学生くらいだろうか。溢れる男前オーラでつい姉御と呼びたくなる女性だ。


「ヴィヴィさんがこのチームのリーダー?」

「ヴィヴィでいいわよ。そんな大層なものじゃないのよ。ただこのチームは可愛い子が多いから寄ってくる馬鹿共から出来るだけ守ってるだけ」

「へえ。まるでお母さんだなー」

「何か言ったかしら?」


 凍える笑顔のヴィヴィの手にはいつの間にか拳銃が握られており、その銃口がこちらの頭に向けられている。

 俺は即座に降参のポーズをして素直に謝る。失礼な事を言ったのはこちらである。俺の母親に年齢関連の似たような事を言って折檻された記憶が蘇る。一部の女性に対して年齢の話は禁句である事をその時に学んだはずだが忘れていた。

 冗談よ。と銃を虚空に溶かすヴィヴィに苦笑いを向ける俺にアリシアと呼ばれていたブロンド少女が話しかけてくる。


「それでは今度は私が自己紹介を。私はアリシアです。この金属鎧からおおよそ想像出来ると思いますがパーティでは盾役をこなしています。よろしくお願いしますお兄さん」

「よろしくー。……ん、お兄さん?」

「何か変でしたか? 日本語に不慣れなので言い間違えましたか?」

「……いや、大丈夫。どこもおかしくないのでこれからもお兄さんと呼んでください」

「? 分かりましたお兄さん。よろしくです」


 素直に返事をして目礼するアリシアに内心和んでいると右足の脛を蹴られた。右を見るとコハネがぷにぷにほっぺを膨らませて怒っている。


「……あー、と。俺はリク。コハネの兄です。いつも妹がお世話になってます。この子は朽葉で俺の相棒。……んー釣り師兼コック見習い、かな?」


 右手でコハネを撫でて宥めながら空いた手でくちはをテーブルの上に乗せる。乗せてから行儀悪いかなー。と一瞬思ったが気にしない事にする。

 コハネはうぐっと唸った後風船が萎むように頬を緩め、仕方ないなぁという表情をした後にくすぐったそうに微笑む。

 どうやらお許しを貰えたようだ。周りからシスコンとか聞こえたが幻聴だろう。

 一方くちはは俺の手を離れてヴィヴィ、アリシア、と巡った後にナギの腕に納まる。俺の元に帰ってこない事に内心涙ぐむ。

 ヴィヴィにどうしてこのお店で働いていたのか聞かれたのでこれまでの経緯を話す。

 俺の話を聞いた皆が何とも言えない表情で俺を見てくる。


「分かってはいましたが先輩は何と言うか遠回りが好きですね。そこが先輩らしいですが」

「そうねー。普通なら必要素材集めたら稼ぎやすい狩場でお金貯めて装備作成を優先するわよね?というか稼ぎと収集を一緒にするわね」

「ここに篭ってクエストよりもMob狩るほうが圧倒的にお金溜まります」

「さすがお兄ちゃんっ! 私の予想の斜め上を行くねっ!」


 散々な言われように打ちのめされるながら俺は言い訳がましい台詞を吐く。


「こういったゲームに慣れてないから……」


 言った後に自分でも子供っぽい言い草だと呆れる。

 凛とした雰囲気を漂わせて考えていたナギが黒髪を揺らして小さく首を傾げる。


「あれ? でも先輩は最初にあった頃から仮想空間に慣れてましたよね?」

「……ん。そうだねー」


 いくら技術が発達してデータの体を思い通りに動かせると言っても、そこにはどうしても拭いきれない違和感が出る事がある。

 その違和感は仮想空間に居れば慣らすことが出来てその差異もいずれ無くなる。一昔前のMMORPGのようにゲームをやっていくうちにキーボードやマウスの使い方に慣れ、効率的にキャラを動かす事が出来るようになるのと同じであるらしい。

 もっとも俺はキーボードやマウスを使ったゲームの実体験が無いのでこの言は親戚のお兄さんの受け売りだが。


「さっき言った慣れてないってのはファンタジー系のRPGが初めてって事。前やってたゲームはモンスター相手の稼ぎとか無かったからなー」

「ああ、仮想空間自体は体験済みだったんですね」

「へえ。どんなゲームやってのかしら?」

「……もうサービス終了した名前も覚えてないほどの小規模なゲームだよ」


 俺は何時もの調子で答えながらコハネの様子を盗み見る。

 コハネは明らかに口数が減り心配そうにこちらを窺っている。俺はそんな妹の頭を優しく撫でる。突拍子のない行動だが俺はシスコンなので問題ない。いやまあシスコンじゃないけどね。


「このクエストも割りと楽しいよ。台所を借りれるからこんなん作れるしね。良かったら食べてみてくれないか?」


 自分のインベントリから手作りのハチミツクッキーの詰まった袋を取り出してテーブルに広げる。皆の視線がそれに集まるようにする。


「感想なんかを聞かせてくれたら助かる」


 では早速と言ってアリシアが一つ手に取り口に運ぶ。匂いに気付いたのかナギの膝の上に居るくちはが卓上に顔を出す。お菓子を発見するとテーブルに飛び乗りクッキーに駆け寄る。

 俺はそれを確認して更に追加でクッキーを広げていく。 

 各々がお礼を口にしてクッキーを手に取り食べていく。俺は皆の様子を眺めるが気持ちが逸りつい質問する。


「どーかな? どーかな?」

「美味しいわよ。リクあんたやるわね」

「お兄さんこれはとても美味です。うちの屋敷で雇いたいくらいです」

「う~。美味しいです~。妬ましいくらい美味しいですよ先輩~」

「お兄ちゃんが作るものは何だって最高だよっ!! むしろお兄ちゃんが最高だよっ!!」

「……皆ありがと」


 とりあえずヴィヴィの感想以外は意味不明なので深く考えないようにしてお礼を述べる。

 お尻をぺたんとテーブルにつけ、前足二本で掴んだクッキーをカリカリしているくちはの尻尾を撫でておく。

 するとくちはは一旦食べるのを止めてこちらに振り向き、美味しいと報告するようにきゅっと元気に鳴くとまたカリカリを再開する。癒される。


「ドロップで手に入れた蜂蜜を使ってお菓子作ってみてるんだ。くーちゃんにあげる分以外は売ってお金を稼いでる」

「なるほど。クエスト中は台所使い放題です。お兄さんはそうやって生計を立てているんですか」

「はっはっはー。俺だって何も考えてない訳じゃないぞー」


 アリシアの尊敬の眼差しに鼻が高くなる。ヴィヴィは苦笑して俺を見ていたが、思い出したように俺に問う。


「ねえリク。クッキー売ってるって言ってたけど『シエスタ』で売ってるのかしら?」

「……ん。そうだけど? 材料も揃いやすいし」

「ん? ああそう言えば『シエスタ』の近くには『イオ』があったわね」

「いお?」


 爆発系の呪文かな。


「『イオ』は豊穣の町と呼ばれる町の一つですよ。その名の通り農耕と牧畜を生業としています」

「……へー」

「確かシエスタから西部に広がる『黄金平原』の近くにあると聞きます」

「『黄金平原』?」


 何となく風の谷の映画を思い出していた。


「辺り一面に実った小麦の平原です。風が吹く度に黄金の波が流れる様はそれは美しく、その波に身を委ねると秋の匂いに優しく包まれるそうです。また黄金平原で採れる小麦は食べられる砂金とまで言われているんですよ!」

「ほー」


 俺が素直にナギペディアに感心しているとヴィヴィが意地悪く笑いながらナギに言う。


「ナ~ギ~あんた何時の間にそんな詩的な表現覚えたのよ。お姉さんびっくりしたわ」

「ち、違いますよヴィヴィさんッ!! これは公式の紹介なんですッ! 私の感想じゃないんですからねッ!!」

「ふむふむ」

「アリシアちゃん何メモしてるの?」

「先程ナギさんの言っていた事をメモしているだけですが?」

「やーめーてー! ごめんなさい公式じゃないです私の意見でしたー! 恥ずかしいから記録に残さないでというかなんでメモしてるのッ!」

「いい言葉だなと思ったので」

「――っ!」

「ほらほらナギ落ち着きなさい~。お店なんだから静かにね」


 ヴィヴィが顔真っ赤なナギを窘める。

 俺がそんなやりとりを見守っていると、コハネが俺の服を軽く引っ張り俺の耳元に口を寄せて囁く。


「皆面白い人達でしょ?」

「……そうだな」

「お兄ちゃんに紹介したかったんだ。前は紹介出来なかったから」

「……ああ」


 そういえば黒猫亭でナギを紹介して貰った時は他のメンバーは集まれなかったんだったなと思い出す。

 俺が偉そうに言える事ではないが彼女達なら安心して妹を任せられる。

 俺はそう安堵してコハネの頭をポンポンと叩く。


「……紹介してくれてありがとな」

「……うんっ!」


 そうして俺達兄妹は顔を見合わせて笑い合ったのだった。

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