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彼はそれでもペットをもふるのをやめない  作者: みずお
第一章 彼は新しい世界に触れる
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01.彼は穏やかに日常を過ごす

あらすじ:家族

「お兄ちゃん! 朝だよ、ご飯だよ、終業式だよッ!!」


 胸に軽い衝撃を受け、俺は目が覚めた。

 薄く目を開けて胸の上を見ると、年頃の娘が俺に馬乗りになって瞳を輝かせている。


「ほらほらお兄ちゃんっ! 私に何か言うこと無いかなっ?」

「……おもい」

「お兄ちゃんならそう言うと思ってたけど、いざ言われるとやっぱりムカつくーッ‼︎」


 中学の制服を着ている妹が、俺の胸の上で暴れる。胸に負荷が掛かり息苦しい。


「……くれは、いたい」

「ああ、ごめんごめんお兄ちゃん」


 俺が非難の声を小さく上げると、妹の二条にじょう 紅羽くれはは素直に退いてくれた。

 上半身を起こすと、ベッド際に立った紅羽が、暴れたせいで少し乱れた制服を整える。


 こうして自分の身嗜みに気を使っている所を見ると、年相応の女性に成長したのかと思うと感慨深いが、そもそも年相応の女性は兄に馬乗りにはならない。

俺はその残念さに小さく溜息をつく。


「お兄ちゃんどうしたの? 胸が痛むの?」


 紅羽が綺麗な眉を八の字に曲げ、こちらを心配して聞いてくる。


(いい子なんだよなー。……ちょっと元気過ぎるだけで)


 母親曰わく、紅羽がテンション高めなのは、俺が生まれる時に母親のお腹に置き去りにしたテンションを受け継いだから、とか訳分からんこと言っていた。


「……大丈夫だよ。紅羽は軽かったから何ともない」


 そう言うと紅羽はほっと安堵し、嬉しそうに微笑む。


「そっか。良かった! ご飯出来てるから早く降りてきてねっ!」


 ぱたぱたと俺の部屋から出て行く。俺はそれを苦笑して見送り、さっきまで見ていた夢を思い出す。


(もうあれから一年以上経つのか)


 俺は暗い靄がかかったような気分を首を振って払い、さっさと着替えてリビングに降りる。


「……はよー。父さん、母さん」

「ああ、おはよう御座います理紅りくさん。今日もいい天気ですよ」


 朗らかに俺に挨拶を返してくれたのは俺の父親、二条 はじめ


「おはよう理紅。朝御飯用意してるから食べなさいねー」

「……んー」


 自分の席に座り返事をする。母さんは俺の前に緑茶を注ぎながら呆れる。


「まったく。せめて返事くらいはちゃんとしなさいな」


 母さんは腰に手を当て小さな胸を張って俺を窘める。母さんは威厳を出そうとするが、あまりに身長が小さいのでいまいち迫力がない。父さんもそう感じたのか微笑ましいオーラを醸し出し、


くれないさんは相変わらず可愛いですね」

「大さんッ!? 私は注意の為に威厳ある雰囲気を心掛けていたんですよッ!?」

「ああ、それは済まない事をした。つい本音が出てしまった」

「も、もう大さんったらッ!」


 ぷりぷり怒りながらでも嬉しそうにエプロンの端を弄る母さんは、見た目も相まって二十代前半に見える。何それ怖い。

 いい年していちゃつく両親を見ているとお腹いっぱいな気分になるが、何とか一つも残さず朝食を終わらせる。


「まーたやってるねー」


 支度を終えた紅羽がリビングに入ってきて、いつもの調子の両親に苦笑いする。


「お兄ちゃん一緒に学校行きたいから待ってるねっ!」

「……んー。わかったー」


 女の子の紅羽と比べると段違いに短い時間で支度を済ませ紅羽と並んで玄関に立つ。


「「いってきます」」


 同じ台詞を高低の異なるテンションで発して俺達は家を出た。

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