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彼はそれでもペットをもふるのをやめない  作者: みずお
第一章 彼は新しい世界に触れる
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09.彼は意外と短慮

あらすじ:毒味鑑定

 『カームの森』で釣りの真似事をして無駄な時間を過ごし青臭い薬草類を摘み取り『イース平原』でわんこと戯れるのが俺の日課になっている。


 今は森の中でしゃがみ採集をしている。ダンジョンやフィールドに生えている草花や茸手に入れるには、採集物のランクにあった【採集】スキルレベルが必要である。

 【採集】スキルはそれだけでなく採集物の正しい採り方をプレイヤーに教える効果もあり、もし正しい採り方をしなかった場合採集物はポリゴンと化し消失する。


 俺の手の中で半分に千切れた薬草が一瞬でポリゴン化するとガラスの割れる軽い音を発し砕け散った。俺は溜息をつくと俺の手元でくるくる回って遊んでいる朽葉を見る。


「……くーちゃんぇ……」


 適正レベルと知識があっても邪魔をされると意味が無い。

 俺は朽葉を捕まえると頭の上に乗せて作業の邪魔にならないようにする。

 彼女には特に不満がないのか大人しく俺の頭上に座っている。


 薬草は見た目ドクダミの葉っぱで葉の茎から摘み取るのがポイントだ。アイテム化した薬草を次々にインベントリに納めていく。

 他にもほうれん草のような山菜『ナチ』やまんまゼンマイの『マイマイソウ』も回収していく。


 ぴこーん。

 スキルのレベルを知らせる電子音を聞きスキル画面をスクロールさせて確認する。


【軽装】Lv8【見切り】Lv10【ダッシュ】Lv10【ジャンプ】Lv1【索敵】Lv9【隠密】Lv5【察知】Lv5【採集】Lv10【調教】Lv25


 薬草採りをしていたから【採集】が上がったと予想は出来ていたが、俺の興味はいつの間にか上がっている【ジャンプ】と尋常じゃない伸びを見せている【調教】にいっている。

 しばらく考えて思考を放棄し俺はイナサにメールを送る。そして採集を再開すると新たな発見がある。


「……なにこれ?」


 俺の手には一枚の青紫の葉。形は薬草と同じだがつやつやした色を持つそれはどう見ても薬草には見えない。じっと目を凝らすと薄青色のウィンドウが自動で開き説明が出る。


Name:?         Category:?


???


「……なにこれ」


 俺は先程とは違うトーンで同じ台詞を繰り返す。そこで思い当たる節がありスキル表を開く。

 【鑑定】Lv0。


「……これかー」


 まあ効果は鑑定と書いてあるし未確認アイテムの識別で間違いないだろう。見ると熟練度の所は半分以上溜まっている。

 《Unlimited Online》はそのスキルに応じた行動をするとスキルに経験値が溜まっていきレベルアップする。【片手剣】なら片手剣で攻撃を当てればいいし【軽装】なら軽装系防具を装備して攻撃を受ければいい。


 俺はアイテム欄から薬草を取り出し、少し躊躇した後それを食べる。口の中に青臭い臭いと苦味が広がる。そのあまりの美味しさに思わず眉間に皺が寄る。うんうまい、もういらね。


 すっと作業のように今度はナチを取り出し咀嚼する。薬草よりかは幾分か食べやすかったし苦くは無い。

 ただせめておひたしにして食べたかった。同様にマイマイソウも食べる。水辺に生えていることが多いからか思っていたより瑞々しい。茹でてマヨネーズで食べたい。この世界マヨネーズあるのか?


 ぴこーん。

 スキル画面を開いていたので鳴る前にレベルアップだと分かっている。先程の毒味まがいの行為で【鑑定】がLv1に上がっている。それを確認してもう一度青紫の葉を見る。


Name:解毒草       Category:?


???


 どうやら解毒草らしい。文字通り苦い思いをして分かったのは名前だけ。


「……帰るか」


 俺は虚しさが胸に広がるのを感じつつタームの森を後にする。



  ◆



『それは災難だったな』


 イナサが通話越しに笑った気配がした。俺はモンスターに捕捉されないように気をつけながらイース平原を歩く。


「……普通は?」

『普通は戦闘とかでポーション使うから勝手に上がるんだよ。【鑑定】はアイテムを使用するだけで経験値が入るからな。あ、ちなみに未鑑定でも鑑定済みでも経験値は一緒だぞ』

「……そうか」


 わざわざ今所持している三種類を食べたが無意味だったようだ。お金を少し無駄にした。その雰囲気が通話ウィンドウから伝わったのかイナサが苦笑いを返した。


『んでメールにあった【ジャンプ】だっけ。それについて知りたいんだっけか』

「……ん。頼む」


 俺の言葉にうーんうーん唸った後イナサは言葉を選ぶように


『確かジャンプの高さと速さに関係してたはずだぜ。隠しパラはスピードとスタミナだったような……』

「……無意味?」

『容赦ないな。高レベル帯になったら壁ジャンプで壁上ったり部屋でピンボールのように跳ね回る事が出来る。ソースは俺の忍者プレイしてるフレンド。今度紹介するわ』

「……なにその超駆動」


 残念スキルかと思ったら結構面白そうだ。いやどちらかと言うとそのフレンドに興味が沸いた。


『こんだけだっけ。他に聞きたいことあるか?』

「……ん。ありが...そうだ」


 【調教】の伸びがおかしいのもついでに聞いておこう。


『何かあんのか?』

「……ん。【調教】の成長がやばい」

『やばいのはお前の語彙と喋るやる気のなさだろ。伸びなくてやばいってんなら仕方ないぞー。あれはペットがいないとそもそも伸びないんだから――』


 そういえばイナサに朽葉の事を話してなかった。


「……いるよ」

『――は?』

「……ペット、いる」

『ちょ。おまっ。何時だよ手に入れたの早すぎるだろ! 狙って出来ることじゃないのにまだサービス開始から二週間も経ってないんだぞ!』


「……拾った」

『石ころみたいに気軽にいってんなーおい。……まあいいや、リクに言っても意味ないし。ああ後おめでとう。ようやくテイマーだな』

「……ありがと」


 イナサはなんだかんだ言って俺を心配してくれていたのだろう。

 だから今回のような調べれば分かるような些細な質問にも答えてくれたのだろう。

俺はそんな彼の優しさに報いる為に誠実に話した。


「……仲間にしたのは五日も前だがな」

『リクゥゥゥゥゥゥゥ!』


 こっぴどく怒られました。

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