00.されど彼は過去に囚われる
VRMMOは初めて書くので至らぬ点が多々みられると思いますが、御指摘戴けると幸いです。
初回なので短めです。
──近付いてくるプレイヤーを、見らずに斬り捨てる。
握り締めている剣が重く感じる。仮想空間の筈なのに、それはずっしりと俺の心にのし掛かる。
現実世界では竹刀すら持ったことが無い。しかしその片手剣は手にしっくりと馴染む。
──斬り掛かってきた二人のプレイヤーを纏めて『スキル』で薙払う。
それもそうか。と苦笑する。一年間も剣を振っていれば、どんなに才能が無くても様にはなる。
それに加え、ここは現実世界とは違う仮想空間。システムのアシストもあるし、莫大なステータスの補正もかかる。
──飛んでくる矢やナイフの投擲物を、高速で叩き落としていく。
致命傷になるものしか落とせなかったので、体のそこかしこに傷が走る。自分のHPが、半分以下までガリガリ削れた。
仮想空間といえど痛覚はある。体の怪我が熱を持つ。その熱さえも動力源にして、俺は仮想空間を駆け回る。
敵を蹴り殴り斬り払う。投擲物を空中で掴んで投げ返し、魔法はアンチスキルで打ち消していく。
プレイヤーを殺して殺して殺し尽くしていく。俺の周りには、死んでいったプレイヤーの残骸である光り輝くポリゴン片が幾つも漂い溶けていく。
ポリゴン片を突き破って向かってくる敵達を迎撃しようと剣を振るい──剣が砕け散る。
限界か。砕ける蒼い片手剣を眺めながら、ぼんやりと俺は悟った。
どんっ。と体に軽い衝撃が加えられ、俺の胸に剣が深々と突き刺さる。その一撃を皮切りに敵対プレイヤーが戦えなくなった俺に群がる。
俺の体を沢山の武器が蹂躙し、鈍い痛みが走るが、俺は気にしない。
俺の意識は目の前のプレイヤーに向けられている。酷く怯え憔悴しきった表情と、不安でいつまでも揺れ続ける瞳を、俺は無感動に見つめ返す。
俺は息を吐き、静かに目を閉じる。
(ようやく、……終わった)
──そして俺の意識は、覚醒する。