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災難03 危険少女

 事故――それは、俺を正義の道へと誘う鍵!

 事故――それは、俺の力が試される、唯一の根性の見せ所。

 事故――そしてそれは……危ないもの……。


 家に着いてから着替え終わった俺は、また同じ道を呑気に歩いていた。科学が進み、機械の種類もたくさん増えたこの世の中。事故も多発し始め、死者の人数も半端ではなくなってきた。田舎はともかく、特に都会といえば、本来の寿命より早く他界している人なんて五万といる。


 俺は、桜並木を歩きながら、大きなあくびをする。

 はぁ……朝からとんでもない目に遭っておいて、学校にも行かなければいけないんだからもう嫌になっちゃう。


 目を見開く俺。目の前に咲き誇る満開の桜。(二回目)舞い散る美しい花びら。(二回目)そして、目の前で寝転がっている、俺の通う高校のセーラー服に身を包んだ女子生徒。(一回目)


「ん?」


 なんだ今の三つ目?


 俺は、あくびをしている口を無理やりにでも閉じ、目の前の光景を再度見直す。

 目の前に咲き誇る満開の桜。(三回目)舞い散る美しい花びら。(三回目)そして、道路まで転がりながら飛び出していった、制服に身を包んだ女の……


「って、なんだよそれ!」


 あの時のおばあちゃんのように、青信号にもかかわらず、ゴロゴロ転がっていく女の子。


「ちょっ、危ないって!」


 俺は、ゴロゴロな女の子に向かって、声を上げる。が、女の子は自分に言っているのが聞こえないのか、ずーっとゴロゴロしている。


 やばいぞやばいぞ! あのままでは、いずれ来た車に引かれてしまう。あ、車だ!なんか俺を引いた車と同じような……というか同じ車が来たぞ!


 俺は、仕方なく一向に道路から動こうとしない女の子のもとへと、カバンを放り投げて走り出した。


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 本日何度目だろうか? こんな大声で叫んだのは?いや、今はそんなことどうでもいい。一刻も早く、女の子を救出しないと! 俺は、全力で走って、女の子に手を伸ばす。


「ごろにゃんごろにゃんごろにゃんにゃんにゃん♪」


 え――……

 手を伸ばしたのはいいが、女の子は俺の手には捕まらず、何故か道路で猫のような声を上げていた。


 腰まで伸びている、薄がかったピンクの髪。少し幼さを残す顔つきに、白い肌。短いスカートからは、まさに『美』という漢字が似合うような、美しい脚が(あらわ)になっていた。


「……」


 可愛い。猫のような鳴き声を出しているのも合わせると、ゴッツ可愛い。だが……道路でするか、普通?


 俺は、女の子に手を伸ばすのをやめ、ただただその行動を見入ってしまった。


 ププ――――――っ!


「しまった!」


 見とれていたせいだろうか? 道路を走ってきていた車に目が行かず、いつの間にか俺の目の前まで、その車が来ていた。いや、ずっといたんだから止まれよ……。


「あれ? 私の前に人がいる?」


 不意に女の子は猫の真似をやめ、俺に気づき始めた。


「よぉ、こんな道路でふざけてっと、いつか大変な――」


 大変なことに、俺がなった。

先程クラクションを鳴らした車が、スピードを落とさず俺に突っ込んできたんだ。


「のわっ!」


「あ、もう逝っちゃうの?」


「い、逝かねぇよ……」


 等の女の子はというと、車のタイヤとタイヤの間の部分におり、見事その車を回避(?)していた。おのれ、そんな避ける方法があったとは……。


「ぐわぁ――――――っ!」


 俺は、車に無残に跳ねられ、桜並木を豪快に吹き飛んだ。


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