災難02 病名不明
―― 一年前 ――
夏休み。その日俺は一人で山登りに行っていた。
何故一人か? そこは気にするなよ! 別に友達がいないってわけじゃないんだぜ? ただ山登りを一緒に行ってくれる奴がいなかっただけなんだぞ! とまあ、そんなことはどうでもいい。
このときニュースなどでは天気予報が晴れの統一だったのに、その日は運が悪く、俺が山の頂上付近についた頃には既に雲行きが怪しくなっていたんだ。
「……やべぇ、こりゃあ一雨来るな」
そう思った俺は、雨宿りもするところがどこにもないので、急いで家に帰ろうとした。といっても、この山の高さは四桁を超える高さだ。少なくともすぐ帰れるほどの距離ではない。そう思った俺は、やっぱり帰るのをやめ、山の頂上で空の様子を伺った。
すると――
ドドドドドド――――(ピカピカ)
急に雨ではなく、光輝く稲妻が鳴り響き、その光が俺の足元に命中した。
「のわっ!」
これぞまさに落雷事故。
俺は、今の一瞬の出来事で痺れ、麻痺。を起こし、その場から動けなくなってしまった。
「……」
身動きが取れない。しかも、俺の真下は崖で下が急すぎて先が見えないほどのものになっている。なんだよ、この状況……。
俺は麻痺しながらも、頭の中では足が震えているような感覚に襲われていた。
真下は崖……。真上は稲妻……。頭は妄想……。
最悪の事態ばかりが頭の中を過ぎっていく。しばらく一人で恐れていると、さっきまで数回光り輝いていた稲妻に加えて、今度は雨まで降ってきた。
「……」
雨に全身を濡らされる俺。背中に担いている荷物も濡れ、やっとさえ重たい荷物がさらに重さを増していく。
あぁ、ダメだ。力が入らんや。
俺は、根性も虚しく、後ろにお尻を付く感じで座り込んでしまった。
ズシッ!
すると、その勢いのせいか、俺の座り込んでいる周辺の地面に亀裂が入ってしまった。
「あ、これは……」
嫌な予感がした。不意に声を出せた俺は、麻痺している体を動かそうと必死にもがいた。が、それはもちろん無理。俺の力は麻痺には及ばなかったのだ。
ズシズシと、俺のいる地面をさらに亀裂が走り――
「う、うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺は自分自身の長い悲鳴を聞きながら、土砂と一緒に崖を落ちていった。
これぞまさに土砂災害。災害も事故の一環だ。
そんなことを思っている暇なんて無かった。俺は、崖の先に体の至るところをぶつけ、動けないまま落下していた。
しばらくして見えた、落下の先にあったのは、錆びた黒い鉄の並んだ汽車専用の鉄道。
「…………」
俺は顔面を下に向けたまま、その鉄道に思い切り……体を打たなかった。打ったのは、通りすがりの汽車である。
「うごあぇ!」
もう、生きている気力さえ無かった。鉄道事故に遭った俺は、そのまま宙を飛び、海に落ちた。
「ぷほっ!」
海面から顔を出し、必死に……麻痺してて泳げんわ。
お地蔵さんが海に沈められていくように、直立しながら沈んでいった。泳げもしない俺にとって、一番嫌いな水難事故である。
「………………」
俺が次に目を覚ましたのは、病院の中だった。首はあまり動かず、体中には青アザがたくさん出てきていた。(唯一自慢できることは、骨折をしていなかったことだ)
「俺、どうなったんだ……?」
目の前を見てみると、そこには母さんと見知らぬ男が立ち並んでいた。
「あぁ、孝治。心配したわよ!」
俺に抱きついてくる母さん。
母さん、心配してくれてたのか。だが、俺はその前に――
「母さん、なんだよその男! あんた誰を連れ込んでんだよ!」
生きてる喜びを感じ合う前に、どうしても目の前の男が気になってしまった俺。すると、母さんではなく、その男が頭を下げて答えた。
「すいません。私、汽車の運転手の者でして……今回はあんなことをして、申し訳ありません」
なんと、汽車の運転手様だった。となると、俺が溺れてから救出してくださったのは、この運転手様ということだろう。まさに運転手様様だ。
「あ、これはどうもご丁寧に」
俺は運転手に頭を下げ、運転手自信から、「自分は邪魔だと思いますので、失礼いたします」と言って病室を出ていった。それとは入れ替わりに、ピンク色の看護 師用の衣服に身をまとった看護師が来て、俺に言い放ったんだ。
「患者さんの様態なんですが、あまり問題ありませんでした。ただし、一箇所『治療ミス』をしてしまい、少しいつもと違う症状が出るかもしれませんので、辛い症状が出たとお思いになられましたら、すぐさま病院に来てください」
「ちょっとまった――――っ!」
なんだよ、治療ミスって?それになんだよ、一箇所って?
俺は、看護師をすぐさま呼び止めようとしたが、等の看護師はいつの間にか病室から姿を消していた。
それから一ヶ月くらいで、学校に再び行けるようになったのだが、俺はその時、自分にとんでもない症状が出てきていることを発覚した。
病状は不明――
というか、これを病状と言ってもいいのかすらあやふやだ。
そう、俺の病状は――
――事故に会いそうな人を、助けたくて堪らない――
という、厄介な病にかかってしまったのだ。