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災難01 事故犠牲

 太陽の日差しに、思わず両の(まぶた)を閉じる。


 暖かな風。周りのソメイヨシノの木々からは、満開の桜の花びらが俺の周りをひらひらと泳いでいた。満開といっても、今日は誰一人としてお花見をしていない。何故か? それは今日が学校、ともに会社の登校日、あるいは出勤日だからだ。


 俺・鉄落(てつらく)(こう)()は、そんな広々とした、車しか通らない道を無言で歩いていた。


「今日から二年生かぁ~……。今年は運命の出会いとかは訪れないもんかね~?」


 失礼、無言というのは嘘です。独り言を呟いていました。

 ところで、ここで話を変えるが、事故というのは一体どれだけあるだろうか?

 唐突に変えすぎ? 気にするな。


 事故といっても、身体に起こる事故や、政権に起こる事故などさまざまあると俺は理解している。だが、ここでは政権的な事故というより、身体に及ぼす事故を中心的に例を挙げたい。例えば、俺の知る限りのよく起きる事故といえば――



・交通事故(交通安全第一!)


・爆発事故(地雷とか考えてる人はアホだぞ! 気をつけろよ)


・落雷事故(神様になれると思ったら大間違いだからな)


・水難事故(みんな人だ。水中でもがこうとするな)


・鉄道事故(都会とかではよくあるよな……)


・空港事故(これは機長に任せるしか他無いだろう)


・医療事故(何事にもミスはつきものだ。しかし、このミスは冗談抜きでやめて欲しい)



 頭に浮かんだ適当なものを出してみたが、俺の知識だけでもこれだけはある。全てがなんだか四字熟語ばかりでキモイと思ってしまう一面もあるが、そんなことを言ってしまえば、国語辞典とか高等学校という漢字四文字もキモイの中に入ってしまいそうなので、そこは極力言わないことにする。


 さて、何故俺が急に事故について考え始めたのか、それには理由があるんだ。


 それは――


「ん?」


 ふと前を、目を広げて見ると、俺から数メートルほど離れた道路を渡ろうと杖を付いているおばあちゃんが……まだ青信号にも関わらず渡ろうとしていた。その近くでは、猛スピードで走る車が……。


 危ない! このままではおばあちゃんが車に跳ねられて、骨が木端(こっぱ)微塵(みじん)になってしまう!


 そう思った俺は、無意識のうちに……そう、無意識のうちに、おばあちゃんの下まで駆け寄ってしまった。


「危ないおばあちゃん!」


 俺はおばあちゃんを助けようと、地面を蹴っておばあちゃんに向かって飛び込む。


「……あ、メガネ落ちたね」


 途中で、思わずメガネを地面に落とし、腰を低くして拾い上げるおばあちゃん。


「え?」


 対して俺は勢いよく飛び込んでしまい、おばあちゃんではなくさらに前――車に向かって飛び込んでいった。


『ちょ、なんなんだよっ!』


 運転手の男が声を上げている。あ、これ……やっちったな。


 俺は、水泳のクロールの泳ぎのように、手をバタバタさせながら


「ぐわっ、痛いのやめてやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 ドゴッ!


 勢いよく車のライト部分に腰を打ち、そのまま近くの川まで吹き飛ばされてしまった。


「なんさね、今の叫びは?」


 メガネをかけていないせいか、現状がまったく分かっていないおばあちゃん。わかったから、もうおばあちゃん歩いて行きなよ。


 ジャボーン!


 川に落ちる俺。今ので腰に痛みを感じたものの心配はない。こういうのはしょっちゅうで、しかも川に落ちたのでなんとか助かった。


 俺は、水に濡れた頭を掻いて地面に足をつこうとするのだが――


「って、ここ深いやんけ!」


 泳げない俺は、無差別に両手をバタバタさせながら、結局沈んでいった。


 ブクブクブク…………


 って、沈むかアホ!


 頭の先まで水がついたところで、川の底に足がつき、足に力を込めて勢いよく飛び上がった。


「はぁ……はぁ……」


 意外に深かったな。これで俺は今、交通事故と水難事故に遭ったわけだが……俺の頭の中に浮かんだ事故を全て経験するには、あと五種目を経験する必要がある。


「て、誰がやるかよ……」


 二つでこのザマなんだ。残り五つも遭いたくはない。俺は川から脱出し、濡れた制服を絞る。あぁ、このまま学校に行くのもなんだし、着替えてくっかな


道路を見ると、既におばあちゃんと引いた車はおらず、ただ桜が散っている光景しか映し出されていなかった。


 なんだろう? おばあちゃんはともかく、俺を引いた車の持ち主……引き逃げだよな? これ、通報するしかないよな。


 俺はポケットの中に入っていたケータイ(防水)を取り上げ、すぐさま警察に電話する。


「あーもしもし?」


『お掛けになった電話番号は、現在使われて――』


「……」


 警察に掛けて繋がらないって……事故後の俺は不幸全開だな。そう思いながら、手元のケータイをポケットの中にしまう俺。ズボンもびしょ濡れなので、なんだか感触が気持ち悪い。


「さっさと家に帰ろう」


 俺は、両手を横にまっすぐ広げ、少しでも肌に濡れた制服の感触を抑えようとしながら、元来た道を歩く。制服をあらかじめ数着買っておいて良かったぜ。あと、体した怪我もしなくて良かった。始業式早々、ひどい目に遭うのは流石に嫌だからな。


 今いる場所から家までの距離は、ざっと127メートルくらいだ。ここから俺の家まで、この桜並木がおよそ100メートル続くから、この範囲をまた警戒しないとな。また事故に遭いそうな人がいたら、またひどい目に遭ってしまう。


 ちなみに今日はいつもより早く家を出たので、遅刻はしないと思う。始業式に休むとか、ヤンキー同類だ。俺は、この127メートルの距離を腕を広げながら全力疾走する。


「うぉ~~~~~~~~~~~~~~っ!」


 よし、走りながら説明しよう。何故、俺がわざわざおばあちゃんを助けようとしたのか。それには理由があるんだ。


ランキングやご感想などを頂けると幸いです


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