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91話:醜悪

少し遅くなって申し訳ないですorz

 愁が黒い笑みを浮かべている前でゲブと門番の背筋には悪寒が走っていた。原因は目の前の愁から発されている殺気である。普通の人間がこれほどの殺気を出せるのか?と言えるほどの殺気を放っている。


 愁的には未だ半分程度の殺気である。全力で殺気を放つとこの世界の人間の中で殺気に耐えて自らを保てる人間はほんの一握りである。それこそ冒険者のSSランク2名は問題なく耐えれるであろう。しかしあくまでも耐えれる(・・・・)でしかない。愁が全力で放つ殺気と言うのはそれほどに恐ろしい物である。ちなみに今目の前にいるゲブと門番に対して本気の殺気を放つとほぼ確実に殺気に耐えれず精神を崩壊させる事を避けるために良くて気絶(・・・・・)するだろう。あくまでも良くて(・・・)である。


「さて、御二方、覚悟は出来ていますか?」


「ま、待つんだ。嘘をついたことに関しては謝る。何なら金だって払おう。いくら欲しいんだ?欲しいだけ金をくれてやろう。だから命だけは助けてくれ」


 ここまで来て醜い命乞いをするゲブ。


(・・・この世界の偉い人間と言うのはここまで醜い生き物なのか・・・まともな貴族や王族っているのか?)


 これまでパーマナリアの都市で生活してきて貴族や王族に対して接する機会があった。その都度思えるのはこの世界の人間の醜さであった。


 現代の世界、つまり愁が元居た地球では政治家の汚職等の様々な問題があった。しかしそれでも最低限の業務はこなしてはいた。しかしこの世界に来てどうだろう?国王は確かに業務はこなしている。しかしながら心の中は野心に満ち溢れていると言っても過言ではない。神との謁見で気が付かされた。この国の国王は愁を戦争のために利用しようと考えてあの興味本位のとんでもない質問を行ったのでは?と。実際のところはそうである。謁見の際に騎士をも怒らせるような答えの内容の質問を愁に対して行ったのは愁を自らの領土を広げるために利用しようと考えていたからである。


 そして貴族と言えばフレッグとヘモンズである。フレッグは愁が土の魔石によって手に入れたお金を手に入れようとして愁の手によって殺された。ヘモンズは己の叔父の敵討ちのために関係のない他人を巻き込んで愁を殺そうとして逆に殺された。


 愁が今まで出会ってきた偉い人達のイメージは最悪と言っても過言ではない。そして目の前にいる貴族も愁の期待を悪い意味で裏切らなかった。他人の事は放っておいて自分が欲しいからと言う理由でドラゴンが大事にしている竜玉を盗んで、街が襲われているというのに知らぬ顔をして逃げようとしていた。そして今愁の手によって殺される一歩手前だというのに金と言う汚い手段で自己保身を行おうとしている。


(この世界の人間、ハク、フィア、リムさん、カリンさん、グレイブさん、フロスガーさん、テオドールさん・・・いろんな人に出会ってきた。平民と言える人達は良い人たちであふれている。少なくとも現代世界の普通の人達よりも良い人達でいっぱいだ。しかし立場が上の人間は醜い集まりと言えるほどひどいな。全ての人間がとは言い切れないが、今まで出会ってきた立場が上の人間は皆自らの私欲を肥やすためにどんな汚い手段でも行う最低な人間だ。神の異世界転移の思惑とはこの世界の色んな場所に溢れている醜い人間達に対して罰を与えるためなのか?)


 愁は今まで出会った人たちの事を考えて異世界転移の目的が醜い人間たちに対する罰を与えるためという仮説を考えた。


(っと、話がそれたがとりあえず目の前にいるやつをどうにかするとするか)


 そう思って愁は目の前にいるゲブ達に視線を向ける。


「金がだめなら地位でも良いぞ?私は貴族だからな。冒険者の貴様如きではどうしようもない地位だろうと授けることが出来るぞ?遊んで暮らせるんだぞ?良いだろう?だから命だけは勘弁してくれ」


 未だに醜い自己保身を行うゲブ。それを見た愁はついに我慢の限界が来た。


「下衆が。死んで詫びろ」


「・・・貴様!冒険者風情が私の様な高貴な人間に向かって何を言う?ふざけるなあああぁぁぁ」


 愁の罵声に我慢の限界が来たゲブは懐に隠していた短刀を取り出し愁に向かって突き刺そうとする。しかしそんな動きで愁の事を殺せるわけもなくゲブの短刀は空を切った。


「何処を狙っている?」


 愁はワープを使いゲブの後ろへと立ち声を掛ける。


「くそっ、どうなってやがる」


 それからゲブはと言うと愁を短刀で刺そうと何度も試みる。しかし全ての攻撃において愁にワープを使い後ろをとられてしまう。


 傍から見れば愁がゲブで遊んでいるようにしか見えない。


「そろそろお前に付き合うのも飽きた」


 何度かゲブの後ろをとった後に愁は飽きて召喚武器である紅鴉を呼び出す。そして門番どころかその場にいた全ての人間が目視できない速度で居合切りを行う。もちろん等の本人ゲブでさえ何が起きたかわからない。そして突如ゲブの体から腕と足が切り落とされる。


「う、う・・・うわああああああああああああ」


 手足が切断されたことにより喚きだすゲブ。


「終わりだ」


 愁はその言葉と共に容赦なくゲブの頭と胴体を切り離す。それを間近で見た門番。そして知らされた自分達と愁の実力差。天と地と言う言葉ですら足りないほどの差が存在した。


「次はお前だ。さらばだ」


 愁のその言葉と共に生涯を終えた門番だった人間の遺体がドサッと音を立てて地面に横たわった。

最後まで読んで頂きありがとうございます!


次回は11日を予定しています。

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