オモチャのガンマン
僕たちが休暇に入って3日目の夜、ボウガンの設計の目処がたち僕とマギさんは町をふらついていたブロンを誘い臓物煮込みで評判の飯屋にいった。僕とマギさんは通常のボウガンにいくつかオリジナルのギミックを組み込んだ新しい武器のすごさでもりあがったがブロンは全く興味がなくひたすらモツ煮を喰っていた。
晩飯をおえて宿屋の4人部屋に戻るなりダニロさんが待ち構えて宣言した。
「カマキリ退治に行くぞ」
カマキリって虫のカマキリですか
「もしかしてまた火属性禁止ですか」
「察しがいいな、虫なんて燃やしちまうのが一番早いが剥ぎ取りがあるからダメだ」
となると電撃か、ハンターの依頼で狩るカマキリだからでかいんだろうな。電撃きくかな
「なんでカマキリ退治なんて仕事とったんだよ。あいつら煮ても焼いても喰えねえじゃねえか。売れるのは鎌ぐらいだろ」
ブロンは乗り気じゃないようだ。
「街道になわばりを張っちまって商人が泣きついてきたんだよ」
「他のハンターに任せりゃいいだろ」
ブロンはとにかくやる気が無いみたいだ。
「カマキリの種類と報酬はいくらなんです」
パーティーの番頭さんでもあるマギさんが気にするのはそこらしい。
「オスのカマキリで大きさは3メートル、ただでかいだけの虫だよ。報酬は400ベスタ」
カマキリ一匹で銀貨4枚か微妙だな
「場所はどの辺りですか」
「街道を西に歩きで2日ってところだ」
むむ、微妙に赤字じゃないかな
「ほらみろ、往復4日で400ベスタじゃ割りにあわねえよ、止めとこうぜ」
ブロンは是が非でもやりたくないらしい。
「依頼人が獣車を出してくれるから片道1日で行ける」
新しいキーワードが出た。獣車って何
「はい、僕は賛成です」
獣車に乗りたい
「それなら私も賛成だよ」
マギさんも乗った。あとは
「お前ら相手はカマキリだぞ、虫だ。斬ると気持ち悪い体液でドロドロのグチャグチャだぞ」
なんか嫌がると思ったらブロンは虫がダメなタイプなんだ
「大丈夫だよブロン」
僕は優しく語りかけた。
「何が大丈夫なんだよ」
決まってるじゃん
「僕もマギさんも後方支援だからあまりグロくない」
前衛さん、頑張ってね
「俺がよくねえ」
吠えるなブロン、夜中だぞ
「3対1だ、諦めろブロン」
「銀城てめえは」
「決まりだな。明日は朝イチでギルドに行くぞ。そのまま獣車で町を出て現地で野営、夜が明けたらカマキリ退治して帰る。以上」
ダニロさんが明日は1日獣車に揺られるからもう寝とけということで、早いけど就寝です。おやすみなさい
「虫は嫌いだ、体液が臭いんだぞ」
ブロンうるさい
翌朝ギルドで依頼を受ける手続きをして獣車とご対面です
「ウボーー」
すげえ、恐竜好きにはたまらないトリケラトプスの頭だ。なのに体はでっかい犬か狼になってる。体長は2.5メートルぐらい茶色の毛並みは艶々と輝いている。
モフモフで三本の角って最強じゃない
「銀城はトライホーンを見るの初めてかい」
マギさんがそのトライホーンの首の辺りを撫でながら聞いてきた。
「初めてです。こいつも魔獣なんですか」
ああ、僕も触りたい
「この子も魔獣だけど草食だから安全だよ」
ボフッ、フサフサモフモフで最高ですな
脇腹をワシャワシャ撫でると気持ち良さそうに目を細める。
可愛いのう、ええ子じゃのう
ドカッ
「仕事しろ後輩、車に載せる荷物が片付かないだろ」
蹴るんじゃない、ブロン
「パパはお仕事ですからね、終わったらモフモフしましょうね」
「やめろよ銀城、気持ち悪いのは虫だけで十分だ」
馭者は僕がかってでた。
やったことはないけどこの子となら上手くやれるさ
マギさんの説明によると、トライホーンは一般でも飼われていて牛より速く馬より力があって賢く、そのトリケラトプスのような角の一撃はその辺の肉食系魔獣を軽く吹き飛ばす。
主に旅の商隊や軍などで利用されているそうだ。
蹄ではなく犬系の肉きゅうなので足音は静かで軽やかだ。
「肉きゅうが痛くなったらすぐパパにいうんだよ」
若干後ろの方で引かれる気配を感じたが、モフモフとプニプニ肉きゅうの前には些細なことだ
途中で何度か休憩をとりながら日の沈む頃にカマキリの出没地点の手前に着いた。
「何度も休憩しなかったらとっくに着いてたぜ。誰かさんのせいでな」
ブロンがもんくをたれる。
「ほぼ予定通りに着いたんだからいいじゃないか」
マギさんがブロンをなだめようとする。
「だけど意味のない休憩だって」
「やめて、この子の前で喧嘩しないで」
僕は二人の間に割って入る。
ドカッ
「お前に言ってんだよ銀城」
すぐ蹴るのはやめろよな
「この子が疲れてるとか、肉きゅうがかわいそうとかいってちょくちょく休みやがって」
この子は僕らの為に頑張って走ってくれてんだから少しぐらい休ませてあげたっていいじゃないか
「こいつは軍でも使われてる丈夫な魔獣なんだよ」
「うちの子を魔獣って呼ぶな」
「二人共うるせえ、そんだけ元気が余ってるなら今夜は二人交代で見張り番しろ。大人は獣車に揺られて疲れてるんだよ」
「「えー」」
「二人で仲良くね、おやすみ」
そう言ってマギさんは横になった。
「銀城のせいだからな」
「ブロンがグチグチいうから」
「「うるさい」」
はい
その夜はどちらが先に寝るか交代はどれくらいかでもめてろくに眠れなかった。
その声で何度もダニロさんとマギさんを起こしてしまい最後にはマギさんにマジギレさせてしまいました。
普段温厚な人を怒らせるのはやめましょう。はんぱなく怖いです
朝はブロンと食事を仲良く作った。その間ずっとマギさんの顔色をうかがいながらですが
ちなみにマギさんは昨夜マジギレしたことを覚えていませんでした。
朝飯を済ませたらカマキリの探索開始だ。
幸いというか相手は3メートルもある。保護色で背後の森の木に同化しているつもりなんだろうけどマギさんには遠目でも一発でわかった。
カマキリの逆三角型の両端にある複眼は視野が広そうだ。こちらに気がついてるかもしれないけど保護色に自信があるのか待ち伏せ戦法が本能にあるのかわからないが微動だにしない。
「さて、どうする」
ダニロさんがみんなの意見をきいた。
「動かないんだからこっちから一気に攻めてズバッと斬る」
脳筋
「森に入られるとめんどうだね、まずは銀城の草魔法で押さえ込んでから私たちが牽制しつつダニロとブロンで間をつめるというのは」
さすがマギさん常識があるね、誰かさんと大違い
「ふむ、銀城。草魔法の射程はどれくらいだ」
「10メートルが限界ですね。基本的に足元の植物を操りますから」
「離れた場所にある植物は動かせないのか」
「はい、魔法の発動地点から2メートル以内のものだけです」
ダニロさんはカマキリを見る。
現在の距離は30メートルある。
「つまりマギの作戦でも20メートルは策無しで走るしかないな」
ブロンの特攻と変わらないね
「しかたない、それでやるしかねえな」
ダニロさんはそう決断したみたいだ。
ふふふ、まだ手段はありますぜ、ダニロ親分
「待ってください。この距離で草魔法を使う方法があります」
「銀城は魔玉を使うつもりかい、でも魔玉が小さすぎて投げても届かないよ」
早合点はいけねえぜ、マギの旦那
「ジャジャーン」
と効果音を口ずさみながら両手を差し出すと、初公開のアポーツ
何もなかったとこからパッと1メートルちょっとの長い物体が現れた。
「「「おお」」」
ドッキリ大成功
「おまえ、これ、何がおこったんだ」
ダニロさん驚いた?
「魔法だろ、すげえな。変な魔法で変なもんが出た」
変て言うな
「何もないとこから物を出す魔法も驚いたけど、この槍、丸い剣見たいのはなんだい」
むふふ、マギさんも目を丸くしてるよ
「これは銃です。L96と呼ばれるライフル、僕専用魔玉発射武器とでもいえば分かりますか」
そう、僕のエアガンコレクションでも数少ないエアコッキングライフルだ。1ー9倍スコープ付き、調整は20メートルだけど的もでかいし屋外でのエアガンにそこまでの精度はないから細かい事は気にしない
「つまりこれで草の魔玉を30メートル先に撃ち込めるのか」
イエス
「変だけどすげえ」
「次から次へわけのわからないことばかりでついていけん」
ダニロさんの混乱がマックスだ。やりすぎたか
「ダニロ、今は気にするな。それより作戦は決まっただろ」
マギさんがフォローに入ってくれた。
「そうだな。銀城がその武器を使ってカマキリを押さえる、そのあとマギと二人で後方から援護、そのすきに俺とブロンで斬り込む」
「俺は後方から応援するってのは」
「却下」
いつかミミズ風呂にでも放り込んで虫嫌い治したほうがいいんじゃないかな
「他に意見はあるか」
「だから虫は嫌なんだよ」
「じゃあ始めるか。銀城、準備はいいか」
草の魔玉を込めたマガジンをは左手にアポーツし、ライフルにマガジンを差してボルトを操作、カシャッ
「いつでもいけます」
ダニロさんに親指を立てて見せた。
「草魔法が発動してカマキリを押さえるのを確認してからいくぞ、先走ると逃げられるかもしれん」
「ブロン、いい加減覚悟を決めるんだ。ハンターの先輩の意地を銀城に見せてやれ」
「クソ、いっちょうやってやるぜ」
マギさんナイス
みんなはいつでもいけるな、立ったままライフルを構えてスコープを覗く。
カマキリの頭をとらえた。ヘッドショットを決めてやる。
いやいや、草魔法を頭に撃ち込んでどうするのさ。
久々のエアガンでサバゲー気分になっちゃった、狙うのはカマキリの足元の草でした
「いきます」
パシュッとかるい音とともに魔玉が飛んでいった。無改造で安全基準を守っているから飛んでいく弾が目で追える。
風のせいか弾が狙いより左に3メートルはそれ着弾。
今度は当てるぞ
「銀城、いまのなんだけど」
マギさんが話しかけてくる。
「次は風を計算にいれて当てて見せます」
「そうじゃなくて、草魔法が発動しなかったよ」
しまった、普通に撃ってた
「わざとですよ、一発目は風を読むために発動させなかったんですよ。やだな、いくらなんでも魔玉に念を込め忘れるなんて失敗するわけないじゃないですか、ははははは」
「君の使う魔玉は小さくて落としたら回収出来ないから気をつけてね」
はい
「今度こそいきます」
は、恥ずかしい。カマキリくん、八つ当たりさせてもらいます
パシュッ
少し右めに撃った弾がゆるいカーブをえがきカマキリの足元に着弾。
それと同時に草魔法が発動し一本の蔓がカマキリに巻きつく。
パシュッ、パシュッ、と素早くボルトを操作しサラに2発の魔玉を撃ち込む。
「ブロン、ついてこい」
ダニロさんが先陣を走るとブロンも後を追う。
ふう、疲れる。
「まだ終わりじゃないよ。援護にいくよ」
そうでした
ライフルをテレポートし身軽になって援護をするために走り出す。
結果、僕もマギさんも援護を一発も撃たないうちにダニロさんが一太刀でカマキリの頭を落としちゃいました
終わり
3重の蔓で鎌ごと縛られ倒れたところをスパッ、哀れなカマキリだ。
ブロンは自分の大剣がカマキリの体液で汚れなかったからご機嫌だった。
剥ぎ取りは僕の仕事になったしね
「ハンターの勉強だよ」
マギさんに言われてしぶしぶだけどやりましたよ
カマキリの鎌なんて何に使うんだろうか、あと胴体の背の外殻が剣を弾くくらい固かったから殻の隙間にナイフを入れてガリガリと強引に切り出した。
剥ぎ取りに使った地球産のコンバットナイフもとぎに出さないとダメだね、刃は欠けなかったけど丸くなった。
鎌と殻を獣車に積んで帰ろうとした時、
「なにか来るぞ」
辺りを警戒していたマギさんが森から迫る影を発見した。
双眼鏡をアポーツしマギさんが指差す方角を見るとカエルが跳ねながらこちらに来るのが見えた。
「カエルです、かなり大きなカエルが3匹」
ガマガエルじゃないな、茶色いけど皮膚がツルツルしてる。見た感じ2.5メートルはありそうだ
「狙いはカマキリだろうな、私達が一足遅かったらあのカマキリはカエルに食べられてたんじゃないかな」
「ついてたな、報酬がなくなるとこだった」
「よっしゃ、カエルなら思う存分斬りまくってやるぜ」
ダニロさんとブロンが喜んでる
「マギさん、この場合カエルを倒したら報酬出るの」
依頼されてない魔獣は報酬とかどうなんだろう
「誰かが依頼を出していたらその報酬はもらえるよ。だけど依頼が出てなかったらタダ働きだよ」
やっぱりか
「バカ野郎、魔獣は狩れば何かしら剥ぎ取れるし、エーテルまみれの魔獣の魂はオーブが回収するからその魂をギルドに売ればいい」
ブロンがカエルを見ながら舌なめずりしながら吠えた。
カエルの肉は旨いんだぞとか言ってるし
魔獣の魂、そんな設定聞いてないぞ、こんなときにはマギさんが頼りだ
「マギさん、魔獣の魂ってなんのこと。サマージから何も聞いてないんだけど」
苦笑いしながらマギさんは教えてくれた。
ハンターのオーブは狩った魔獣の魂を回収して色が変わるのは解体屋のザーボから聞いた。色は黒から始まり紫、藍、青、緑と虹の様に変化していき最後は深紅になるらしい。
らしいというのは史上最強と呼ばれた伝説のハンターでさえ橙と赤の中間色で引退していたからだ。
普通のハンターは青から緑に変わり始める頃には歳で引退する。
40前で緑に変わり始めているダニロさんは一流に近い存在なんだとザーボが語っていた。
オーブの色がハンターの戦歴を証明するのだ。
そしてオーブのもう一つの役割は魔獣の魂の回収容器だった。
魔獣の魂はエーテルによって変異しているらしい、その魂をオーブが回収しギルドはオーブの中の魂を買い取ってくれるのだ。
ギルドは買い取った魂を東の暗黒大陸に住むドラゴノイドとの交易に使っているらしい。
さっきから、らしい、らしいと言っているのは実際に魔獣の魂を見た人なんていないからだ。ギルドが言ってるからそうゆうものだと思ってオーブを持っているし、実際にギルドがオーブの中の何かを買ってくれるから事実なんて誰も気にしていないのだ。
ギルドがオーブから集めた何かをドラゴノイドが欲しているのも噂だけでギルドの上級幹部か行政のトップしか関わっていない。
現場のハンターはそれで十分なのだ。
以上がオーブの説明でした。
悠長な話はそこまで、カエル達がもうすぐ森から出てくる。
僕はアポーツでショットガンのスパス12を出した。こいつは3発同時に発射することができるしエアコッキングだけど連射もしやすい。
マガジンはショットシェルの形で30発込められる、つまり10連射までOKなのだ。
魔法を使える僕がエアガンに頼るのは銃が好きという理由だけじゃない、それは理由の4割程度。
一番の理由は魔力の少なさと魔法の制御技術が低いからだ。
実戦で動く敵に当てるのも大変だし、休み休みならともかく20とか30発も連発したら途中で気絶してしまう。
それをカバーしてくれるのがこのエアガンだ。
魔玉は暇なときにコツコツ魔法をチャージしておけばいいから魔力の少ない僕むきの魔法の杖だね
そんなわけでまずカエルの動きを封じる為に草の魔玉を込めた緑のシェル型マガジンをセットする。
「作戦はカマキリと同じだ。銀城が動きを封じて俺とブロンが前衛、マギは弓で援護。カエルは丸ごと売れるからなるべく火属性は使うなよ」
ダニロさんの素早い指示がとぶ。
「さっきのより射程が短いんで前に出ます」
今度は僕が先頭に立つ。
三匹が跳び跳ねるから狙いづらい
真っ先に森から飛び出したカエルの着地を狙って、
ガシャコン、バシュ
3発の魔玉か同時に発動する。蔓に絡まれたカエルが抜け出そうと暴れる。
もう一度、ガシャコン、バシュ
更に3本の蔓が絡まり完全に封じた。
「銀城、次が来る」
二匹目が飛び出した、ガシャコン、バシュ
蔓がカエルに絡みつこうとしたがカエルのほうが早くジャンプして逃れた。
ちっ、舌打ちしてヤツを追う。
撃とうとしたがまたジャンプし僕の頭上を飛び越えた。
次は逃さない、そのジャンプは見切った
ガシャコン、バシュ
着地したカエルの右足を蔓が捕らえた。
まだまだ、ガシャコンとコッキングして左足を狙ったとき
「バカ野郎、後ろだ」
なんかヤバイと思い振り向かずにそのまま前方にダッシュ。
距離を取ってから振り返ると僕がいた場所のすぐそばに三匹目のカエルがいた。
危なかった。サンキュー、ブロン
そのカエルを捕らえようと銃を構えたがカエルが大ジャンプをしてダニロさんに飛びかかった。
草の魔玉は発動すると近くのものに無差別に絡みつく、下手をしなくてもダニロさんを巻き込んでしまう。
「銀城、こいつは俺達がやる。一匹逃げ出そうとしてるやつがいるからそいつをお前がやれ」
了解、ダニロさん
見ると右足だけしか捕らえられなかったカエルが暴れている。
「電撃で気絶するかな」
雷の魔玉を込めた白いシェル型マガジンをアポーツして緑のマガジンと入れ換える。
ガシャコン、バシュ
とカエルを狙い撃ったが6発の弾が銃口から飛び出しカエルの手前にバラバラと落ちた。
3発の雷光が地面ではじけ、3本の蔓が互いに絡み合った。
何故だ
それがカエルの気を引いてしまったのか、カエルが右足を押さえられながら僕めがけてジャンプを繰り返してる。
「しまった、草の魔玉をコッキングしていたんだ」
あぶねえ、下手したら魔玉が暴発してたかも。背筋が寒くなる
「お前らのせいだ」
今度こそカエルに雷の魔玉を撃った。
しかし、カエルは一瞬ひるむだけで効果がない。
「僕の電撃じゃ体の芯まで通らないんだ」
魔獣相手には力不足か、しょうがないダニロさんもなるべく使うなと言ったけど絶対とは言わなかったし。
赤いマガジンをアポーツして白と交換する。
「皮が無傷なら大丈夫でしょ、カエルこっち向け、そのでかい口を開けろ」
僕の言葉を理解した訳じゃないんだろうけどカエルは威嚇するように大きく口を開けてくれた。
「もらった」
すかさず口の中に撃ち込んだ。
赤のマガジンは火の魔玉だ。カエルの口内で3発の火球が炸裂した。
口から炎を吹き出し崩れ落ちる。
ダニロさん達を見ると矢ぶすまとなったカエルの下に潜り込んだブロンが心臓めがけて大剣を突き上げていた。
やるなブロン
力尽きたカエルがブロンの上にのしかかるがブロンは転がりながら逃げ出した。
剣はカエルに刺さったままだろ、予備は短剣しかないじゃん
残ったカエルはブロン抜きでやるしかないな
そう思って最初に完全に封じたカエルの方を向くと視界がピンク一色になり何かに吹き飛ばされた。
地面を転がり一瞬意識が飛びそうになるなか僕は見た。
カエルの口から伸びたピンクの舌が僕の銃をさらっていくのを、
そしてそのまま口の中に消えてカエルがゴクンと飲み込んだのを、
ダメだ、アポーツ、戻ってこい、アポーツ
カエルに盗られてしまった
この世界では手に入らないんだぞ、ゆるさん
「カエルごときが僕のスパスを、巻き蔓、巻き蔓、葉隠し、葉隠し、火球、火球、火球。死んで償え必殺コンボだ」
燃えろ、灰も残さず燃え尽きろ
焔の柱がそびえ建つ
「銀城、カエルは焼くなって言っただろ」
ダニロさん、これは仇討ちです。泉岳寺の殿の墓前にて仇討ちの成功を報告せねば
「皮はもったいないけど焼きカエルも旨いんだぞ。芯までこんがり焼いてくれよな」
ブロン好きにしろ、僕はこいつの首をとれればいいんだ
「銀城がカエルに武器をとられたの見たんだけど、こんなに燃やしちゃって大丈夫なの。腹を裂けば取り返せるのに」
「火事だ、マギさん消火用の魔玉下さい。水属性使えないんです、ダニロさんでもブロンでもいいから。誰か助けてえ」
その後、土属性魔法で土をかけたり水の魔玉を使いまくり何とか消火に成功し腹の中から無事に銃を取り戻せた。
地球ではオモチャにすぎない銃に命を預けるハンターは、帰り道はトライホーンとモフモフせず、獣車で黙々とスパスの分解掃除をしていました
めでたし、めでたし、
まだ続きます