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Toy ガンナー  作者: チョーゆんふぁ
第二章 別世界の入口
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ハンター

「本当にすみません」

僕はひたすら謝っていた。

「もういいから、声もかけずに近づいたオーガにも非はあるんだから」

そう笑ってゆるしてくれているのは狩人風のマギさん。レンジャーと呼ばれるパーティーでは偵察と弓支援が役割の爽やかな青年だ。

「オーガじゃねえ、どっからどう見ても人だろ。それもかっこいい剣士様だ」

このプリプリと怒っているのが僕にオーガと間違えられて目潰しをくらった剣士のダニロさん。街道を歩いていたら焚き火をしている僕を見つけ一緒に野営しようと頼みに来たんだそうだ。

その出会い頭に土を投げつけられ、理由がオーガと間違えたからって言われたら怒っちゃうよね

でも暗がりに頭に被っていた兜の飾りの角が光って見えたんだから誰だってびっくりするよ

せめて兜をとるか人間ですよって言ってもらわないとこの先も間違われるから

「坊主が間違えるのも無理ないさ、俺だって時々オーガと間違えて切りつけそうになるからな」

確かに若返ったけど坊主って、君の方が年下だから

僕を坊主呼ばわりするのは後からやって来た剣士のブロン、年は28らしいけど10才は老けて見える3人組の最年少。

ダニロさんにオーガと間違えたことを何度も謝っているのだがマギさんとブロンがからかうもんだからその度にダニロさんがヒートアップして堂々巡りだ。


いい加減面倒になったから強引に話をそらすため、

「お詫びに晩飯をご一緒しませんか」

と木の実の入った袋を取りだし3人にふるまうことにした。

リュックに手を入れ中でステンレスの皿をアポーツする。それを取り出して木の実をザッとあけどうぞと勧める。

「ありがとう、いただくよ」

とマギさんは手を出したがダニロさんとブロンは困惑している。

「木の実がお前の飯なのか」

「坊主、こんなんじゃ大きくなれないぞ」

だから僕の方が年長だ

「がさつな奴らでごめんね、こうして君と出会えたのも何かの縁だ。よかったら私がしとめた獲物も一緒に食べよう」

しとめた獲物って肉ですか

「飯はやっぱり肉だろ」

「肉喰って大きくなれ、坊主」

ブロン、お前はただの脳筋だ

マギさん、あなたはなんてイイ人なんだ、最初に矢を射かけられたのも、僕の謝罪をまぜっかえしてくれたのも記憶から消去します

「肉なんて久しぶりです、マギさんに出会えてよかった」

「そういわれると照れるね、獲物ってただのウサギなんだけど」

そう言って取り出したのはどこかで見覚えのあるウサギだった。

「そのウサギはどちらで狩ったんですか」

なんか気になる

「君とあう直前に街道に飛び出してきてね、晩飯にちょうどいいやってしとめたんだ」

あの時の主殿じゃないですか

「今ただのウサギって言いましたか」

「そうだけど」

「ただのじゃないウサギっています」

マギさんは意味がわからないと首をかしげる。

「たとえば角で人を襲うとか、前歯で首をスパッとはねるとか」

いるよね、そんなウサギって

「なんだそりゃ、聞いたことねえな」

たとえダニロさんが知らなくても世界は広いし

「坊主のよたばなしより飯にしようぜ」

ブロン、お前はもうしゃべるな

「ウサギはたとえ魔獣化しても人は襲わないよ」

僕は何と戦っていたんだろう

ブロンがウサギを捌いて焚き火で炙りはじめた。

主よ、君のことは忘れない

「よくわからないけど肉を食べようよ。久しぶりなんでしょ、足りなかったら干し肉もあるから」

何かに傷つく僕にマギさんは一生懸命励まそうとしてくれた。




こんがり美味しく焼けた主を食べながら僕はマギさん達に自分の身の上を打ち明けた。もちろん異世界から来たなんて言えないのであらかじめ設定していた架空のプロフィールだ。

「両親が病で死んでしまい畑は兄が相続したので、村を出てハンターになろうと思ってこの先の町に行く途中でして」

「なんだ、昔の俺達と同じじゃねえか」

よくある話だとダニロさんが笑った。

「私たちは同じ村の幼なじみだったんだよ、私は三男でダニロは次男、ブロンは村長の家の五男」

「俺達3人どうせ家は継げないし村にいたって耕す畑もないしな。ハンターになって一旗あげようって飛び出したくちなのさ」

分かったけど口に物をいれながらしゃべるな、ブロン

「ハンターを目指して旅をしてるのはいいけどよ、その妙な格好はなんだ。それにその武器、ナイフと木刀はないだろう」

「確かに、それは鎧なのかい。布で出来てるようにしか見えないんだけど」

「そいつはすげえ、布の鎧に木刀かよ。俺達より度胸があるな」

みんな揃って言ってくれるよ。日本の一般市民に何を期待してるんだ

「村ではなまくらな剣すら手に入らなかったんで装備は全部町で揃えようかと」

初めからそのつもりだったし、別に悔しくなんかないし、魔法だって使えるし

そうだった

「実は魔法が使えるんですよ」

僕は頭脳労働担当なんだよ、君たち脳筋とは違うのさ

「君は魔法使いだったのか」

マギさん、存分にお見逸れしてください

「本当かよ、見直したぜ」

ダニロさん、筋肉が全てじゃないんです

「田舎育ちが魔法使い様かよ、こいつは本当にすげえぜ」

この野郎、信じてないな

「見てください、火球」

空に火の魔法を放ってみせたら3人とも僕の魔法を見て呆然としているよ

ぜひウチのパーティーに入ってくれとかスカウトされたらどうしようかな



「確かに魔法を使ったね」

「使ったよな」

「こっそりアレを使ったんじゃねえか、田舎育ちだから誰かにアレを魔法だとか教えられちまったとか」

3人でこそこそ話してるけど、じいちゃんに教わった通りの魔法だよ

ブロンのアレってなんだ

「私には本当の魔法にみえたけど」

「でもアレなら今のうちに事実を教えてやった方がいいだろ。ギルドに行ってからアレで魔法使いですなんて名乗っちまったら笑い者になっちまうからな」

だからアレってなに、僕の魔法って変なの

「俺らがごちゃごちゃ言ってもしょうがねえだろ。はっきりいっちまおうぜ」

ブロンはそう言うと僕の方を向き片手をだした。

「ほれ、坊主のショボい魔法の種を出しな」

ショボいっていうな。それに種ってなんだよ、木の実ならもんくをいいつつお前が食いつくしたろうが

「どんな田舎からきたか知らねえけどアレを使って魔法使いですで通用するのはお前のとこぐらいなんだよ。町じゃガキだって騙されないんだぞ」

ほれほれと手で催促してくる。

「悪いんだけど、ブロンの言ってる意味がわからない。実も種もさっきお前に出したので全部だ」

明日から何を食べればいいんだよ

「その種じゃねえ、しらばっくれても無駄だ。魔玉を出せよ」

魔玉、じいちゃんから聞いたことあるな

魔獣の骨とか牙から作った玉だとかで、その玉の質や大きさに見合う魔法を込めることで本来なら魔法の使えないような一般人の微弱な魔力でも大魔法を発動出来る。

例えるなら使い捨てのインスタント魔法ってわけだ

それで話の筋がみえた

つまりこの人達は僕のま見せた魔法が弱すぎて魔玉を使ったエセ魔法使いと思ったわけだ

ははは、魔力に関しては涙がとっくに出尽くしてるから、枯れちゃったから

「下級だけど一応は魔法使いです」

「そうか、あのさ、疑って悪かったな坊主」

僕の暗い笑みをみて脳筋もさっしてくれました。

「君が本物の魔法使いだって、私は分かってたよ」

「てめえ、一人だけずりいぞ。俺も信じてたからな」

マギさん、ダニロさん、いいんです

並み以下ですから、貧弱ですから、でも魔法使いなんです

「俺も一目見て坊主が魔法使いだと見抜いていたぞ」

ふんぞり返ってウソつくんじゃねえ、お前はダウトだ


「本当にごめんね、貴重な食糧は全部食べちゃうし、魔法は疑うし」

いいんですよ、これも一期一会です

「私たちも町に寄ろうかと思ってたし、よかったら町まで一緒に旅しようよ」

なんてイイ人なんだ、ブロンのせいであなたのイイ人度数は天井知らずですね

一人旅に不安を抱いてた僕には願ってもない申し出だ。

「お願いします、よければハンターの先輩から基礎とか心得なんかも教えて貰えませんか、雑用でも荷物持ちでもなんでもします」

真っ先に賛成してくれたのはダニロさんだった。

「いいんじゃね。悪いやつには見えないし、俺らも初心者の頃は経験者について色々と教わったからな。後進の指導もハンターの仕事だ」

かっこいい、オーガに間違えて本当にごめんなさい。

続いてブロンも、

「俺もいいぜ。後輩を持つってのも気分がいいしな、なにより魔玉に魔法を込める代金がかからねえのがいい」

なんか俺様で利己的な理由だけど根っ子の部分に器の大きさを感じる。こういうヤツがいずれは仲間から頼りにされる兄貴分とかになるのだろう

「私も賛成だ。これで今から君は私達の仲間だよ。お客さん扱いはしないからそのつもりでね」

最後にマギさんがそう言ってしめた。でもその目に一瞬だが寒いものを感じた。きっとそれは気のせいではなく自分達を騙していたり裏切るようなことは赦さないという彼の強い気持ちなのだろう。

マギさんはそうして陰に日向にパーティーを支えてきたのだ。


だからこの気のいい男達に僕も誓う、

「後悔はさせません。よろしくお願いいたします」


ギルド未加入ではあるが今僕はハンターになった。


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