第三章 激動1
「……失礼しました」
そう言って軽く俯きながら重厚感漂うドアから出てきたノイリは、今し方扉の中で渡された書類とその内容に感情が高ぶるのを抑えられなかった。
今すぐ叫び出し、すぐさまどこか遠くへと走り出したかった。
しかし、そんな思いを誰かに悟られる訳にはいかなかった。
必死に感情の波をやり過ごしながら、ノイリは自室へと足を急がせた。
突然ですが、父上が死にました。
あっという間に葬儀が行われ、気づいたらマルス兄上の即位式まで後数日です。
父上が亡くなられたのは、川釣りに出掛けてから3日後の事です。
そりゃもう、見事にポックリと。
死因が公開されてなかったり、場合によっては数週間後に行われる葬儀までの期間が短かったり、演習に出掛けた軍が帰って来るのを待たなかったり、と引っかかる点は多々ありましたが。
多分、大方、間違いなくアル中で死んだ、なんて乾いた笑いしか出ないような死因を隠すために秘匿されたんじゃないかと、僕は思います。
あんだけ酒に溺れてたら、そりゃあ…ねぇ。
しかしながら、これで暫く王位に関するゴタゴタは無くなる、と僕はホッと胸をなで下ろしています。
あんなドロドロギスギスした空気、もう二度と味わいたくありません。
友人達に会えなくなるのは寂しいですが、他国に婿入りしようかと本気で考えた事もありますし。
兄上の即位により、さらば心身(主に心!)に悪そうな空気。
そしてウェルカム多少は平穏な日々!
……そんな思いは、イロイロぶっ飛んだ方向で実現しました……。