第二章 侍女(と書いて家政婦とよむ)はみた
※今回、閲覧注意です。
ノイリ様が作られた、ご本人の可愛らしい見た目に反して男らしい料理(塩焼き)をおいしく皆で頂いた後、夕方には帰るという予定通り(気は進まないが)王城への帰路につく。
途中通った城下町も、数年前に比べて明らかに人々も活気がなく、暗い顔をしていた。
「……また増税だってよ」
「ぁあ、あたしも聞いたよ。
ウチの家計は既に火の車だっていうのに……」
「国王陛下は何してるんじゃろうか……」
「爺さん、分かりきったこと言うなって。
未だに酒に溺れておれ達の事なんぞ心の片隅にもないに決まってる」
「王侯貴族なんて、そんなもんさ。
あいつら結局自分の利益ばっかり追い求めてあたしら民衆の事なんかこれっぽっちも考えやしない。
あ~ぁ、どうせあたし達が納めた税も横領されるんだろうねぇ……」
……聞こえてくるだけでもこんな会話ばかりだ。
アルフェ様がなくなられて以来、戦争も無いのに税は重くなる一方。
このままだとこの国は近いうちに革命でも起きるんじゃなかろうか。
さて、城に帰りノイリ様が夕食(王族とは思えない程質素)を召し上がり、入浴されてお休みになったあと、私の1日の仕事が終わったため自室に帰る途中のことだった。
私は見てしまった。
第一王子のマルス様が一目を忍びながらどこかへ行かれるのを。
此処でこっそり尾行するのが侍女の勤め。
なぜなら、侍女というのはえてして噂好きなのだ。
人目を気にしつつもマルス様が向かったのは、今は使われていない一室。
怪しい、怪しすぎる。
そう思った私は気配を消しつつ、中の会話を盗み聞いてみる。
その会話の相手は、宰相のイアン様だった。
その内容はおそらくどの人にとっても衝撃的なモノであった。
↓以下、その内容↓
「ああ、イアン。会いたかった」
「殿下……」
「殿下では『どの』殿下か分からないと、いつも言っているだろう?」
「申し訳ありません、マルス殿下」
「うむ。
……ところで、何か話があったのではないのか?」
「そうでございました。
実は例の物が手に入りまして……」
「それは本当か!」
「はい、これにございます」
「おぉ……、これが……!」
「はい。一度使えば天国に旅立てるそうですよ」
「それ程強力なのか、これは」
「ええ。
……今、使われますか?」
「……いや、止めておく。まだすべき事があるのだ」
「そうでございますか。
では、いつお使いになられますか?
私はいつでも構いませんが……」
「そうだな……、三日後でどうだ?」
「わかりました。ではそのように」
「……いつもすまないな、イアン」
「いいえ、いいえ、マルス殿下。
私はあなた様のためだけに行動しているのです」
……………
……………………
………………………………
これ以上の盗み聞きは野暮のようだ。
……うん、以前からお二人がこそこそしているという噂があったのは知っていたが、本当だったとは……
とにかく、こんなにイイ噂の種は滅多にない。
私は同室の(私の上をいく)噂好きの侍女にこの話をすべく、自分に割り当てられた部屋へと足を急がせた。
…第二章舞台裏…
ノイリ(以下ノ)「どうも、腹黒に加えて野生児キャラまで付加されそうなノイリだよ。ドウシテコウナッタ
……それはともかく、宰相とマルス兄上のベーコンレタス風会話の解説を作者から委託されました。
が、面倒だからカンペを朗読するよ。
『「殿下では『どの』殿下か分からないと、いつも言っているだろう?」
→暗に自分が他の王位継承権保持者より上位だ、と言っている。
「実は例の物が手に入りまして……」
→伏線につき、詳しくは秘密。
「はい。一度使えば天国に旅立てるそうですよ」
→伏線につき以下略。温泉に浸かって「極楽、極楽♪」……みたいな意味じゃない、とだけ。
「いいえ、いいえ、マルス殿下。
私はあなた様のためだけに行動しているのです」
→一応、ここも伏線。私の前に何か一言付く』
……だってさ。
結局、ミーシャの勘違いだって」
最初からこういう風に読めてた方には申し訳ない。
蛇足かもしれませんが、一応。
…因みに本来ならこの章、川釣りから帰る途中に何者かに襲われて、ノイリが川から落ちて行方不明になる予定でした。
更にその前の予定では、城下の川のほとりでひとり釣りをしているハズでしたが、『流石に供の一人もないのってどうよ?』って考えが浮かび、そこでミーシャ誕生。
ノイリの池ポチャならぬ川ポチャ段階では、見てしまったのは密会現場ではなく事故現場。
当初の予定はどこへやら………。
そしてこの場を借りて、お気に入り登録してくださった方に、精一杯の感謝を。
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