短編の間#5- 包み隠さず、中まで美味い
大学生の染谷慎也は子供のころから偏食な所があった。
誰にもバレず、大人の階段を上ってきたが、ある日同級生の相葉誠と中華料理屋に行くことになった。
俺は今、背中に汗を隠している。
今は誠の話が一切入ってこない。ここまで守り抜いてきた化けの皮が剝がれそうだ。
俺はガキの頃から、飯の皮が好きだった。餃子の皮に、ピザの耳。おにぎりの海苔とかそういったやつだ。
家では皮だけ食って残りは弟や両親に食ってもらってた。
中身が嫌いではない。周りの所が強烈に好きなんだ。
一人の時にこいつらは食べられない。他人には尚更見せられない。
見せたら、異様に聞いてくるだろうし、どうせ中身のない奴だとか馬鹿にされる。
誠は良き友人だが、それでも見せたくない。
餃子がテーブルに届く。
食べないの?心に刺さる。どう思われてもいいやと箸で皮を開き、中身を取り出す。
「食べれないものあった?ごめん。先に聞けばよかったね。」
良いんだ。誠…。汁の残った皮を一目散に口へ運んだ。
ビビりながら彼の顔を見た。当然驚いていた。呆れられたんだ。
「中身も美味しいよ。」
「馬鹿にしないのか…。明らかにおかしいだろ。」
「しないよ。好きなんでしょ、その食べ方。もし、中身が苦手じゃないんだったらそっちもどうぞ。」
正直、遠ざけていた中身を嫌いになっていると思った。食べなくてもそんな気がしてた。
震えた箸でパクっと一口。なぜか涙が零れてきそうだった。美味い…。
こんな俺を肯定してくれた人がいるのに、なんて俺は表面的な男だったんだ…。
次の一口は大きく、どこか複雑で豊かな味だった。
むしゃむしゃ頬張る俺を見つめる彼の笑顔がとても印象的だった。




