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「あかり……!」
焦ったようなお母さんの声がする。
目を開けると、いつもの天井と、泣きそうな顔で覗き込む母がいた。
「……ん……? お母さん……?」
まだ頭が霞んでいて、視界が滲む。
頬がひんやりしていて、私は“あ、泣いてたんだ”とぼんやり気づいた。
「ひな……いや、うさぎは……?」
私の声に、母はほっとしたように表情を緩め、机の上に置いてあった陽を取ってくれた。
「あかりは昔から、これが好きね……」
陽を胸に抱きしめると、甘い匂いがして安心が胸に広がる。
「……私、寝てたの?」
「そうね……昨日の夕方からずっと、泣きながら寝たり起きたりしてたの。お父さんも私も心配したわ。でも、よかった……」
母はそっと私の髪を撫でる。暖かくて、優しい手。
「お腹、空いたでしょ? ご飯食べようね」
部屋を出ていこうとするその背中に、私は小さく声をかけた。
「お母さん……私、明日は……行ってみようかな……学校」
心のモヤがふっと消えたみたいで、自分でもびっくりするくらい自然に言葉が出た。その声を聞き、母は驚いたように振り返りそして優しく目を細めて頷いた。
胸の中がほわっと温かくなる。夢の中で陽がくれた光が、まだどこかで灯ってる気がした。
夕陽が窓から差し込み、陽の毛がキラキラと光を反射してきらめく。
いつものやさしい顔が、「大丈夫だよ」とそっと背中を押してくれている気がした。
母も、父も、陽も。
みんな、私の味方でいてくれる。
きっと、大丈夫。
……陽の耳が、ほんの少しだけ動いた気がした。




