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吸血鬼さんのご褒美

ちょっぴりえちちな展開ですが、直接的なワードや行為は行っておりません。



「……じゃあ、私は帰るね?」


「あ、ラミアさん!ちょちょーっと時間とかあったりします?」

いつものように帰ろうとするラミアさんを引き留める。


「どうしたの?」


「そのー、良かったらなんですけど……一緒にお酒でも飲みませんか?静かに飲めるところがあるんですよ……へへへ」


そう!俺は一度レディ〜であるラミアさんとお酒を飲んでみたかったのだ!

でも、吸血鬼にお酒ってどうなんだろうか?飲めるのだろうか?美味しいものなのだろうか?それ聞いてから誘ったほうがよかったか?!


だがこんな心配をしている場合ではなかったと後から知ることになる。

心配するべきはラミアさんではなく自分自身だったのだ。




○●○●




リュートに誘われて街の酒場へやってきていた。まだそこまで遅く無い時間ではあるけど、それでもリュートが言ってたように静かなお店となっており、人も少ない。


落ち着いてて良いお店だ………だけど、一つ問題が生じていた。


「ねぇ……大丈夫?」


「ん〜?ぅへへぇ。だぃしょーぶれすぉ〜」


「どうしよう……べろべろになっちゃった」


少しして、もうすでにこんな状態になってじまったのだ。

リュートが飲んだのはまだ三杯ほど。それでもうこんな出来上がり具合だ。私は毒を無効化するから、アルコールも効き辛い。



「んふ、んふふぅ。酔ってないれすよぉ。まだまだいけるれふからぁ!マスター!おかわりぃ!」


「………」


カウンターの向こう側にいる寡黙な店主が、グラスを拭く手を止め、リュートに水を差し出す。

や、やっぱりそうだよね?普通の人間から見てもこれはべろべろだよね?


その水を手に待ち、勢いよく飲み干す。


「んぐっ、んぐっ、んぐっ、ぷはぁ〜。これこれ〜。やっぱ美味しいですね〜?ラミァさんもおかわりいりぇあす?」


もう水とお酒の区別もついてないし……


「んーん。私のは残ってるから……」


「あ、ほんとら。すんまへん、急かしてしまったみたいで……ふぇへへ」


「リュート、そろそろ帰ったほうがいいと思うよ?」


寂しいけど、仕方ないよね。人間ってすぐに体調崩すらしいし……すぐに死んじゃうし………あんまり無茶はさせられないよね。



「んえ〜?もっとラミアさんといたいんれすけど〜」


「っ?!……で、でもでも。あの人狼の子も心配してるんじゃ……」


「ん〜〜…………」


「リュート?」


「だめぇ、ですかぁ?」


「う、うぅ〜」


か、かわいい?!いつもの飄々とおちゃらけた感じじゃ無い!す、す、すっごく甘えてくれる?!

どうしよう……帰したくないなぁ。こんなレアなリュート次いつ見れるか……もうちょっと一緒いたいし、欲を言えばもっと甘やかしたい……



「良ければ……」


悶々としている中、急に話しかけられる。その声は寡黙な店主の声だった。


「2階に宿泊用の部屋があります。ご利用なされますか?」


「らみぁさぁん?」


すぐ2階には寝泊まりができる宿。隣には酔って意識朦朧な中、甘えて来るかわいいかわいいリュート。

こんなのもう答えは決まってる。


「に、2階の宿を……借りよう」




○●○●




「ん〜……あれぇ?ここどこですかぁ?んぁ?」


鍵を受け取り、ベロベロのリュートを連れ、指定された部屋へ入る。

2階に上がった時点で匂いで分かった。ここは人間がそういう営みをする為に使われてる場所なのだと。


つまり、リュートは初めから、そ、そ、そういうつもりで誘ってきたってこと……?

ん、んへへ、だとしたらかわいい。

じゃ、じゃあじゃあ!今から私が沢山甘やかしてトロトロに蕩けさせてもいいってことだよね?!最初からそのつもりだったんだもんね?!



ベットの上に寝かせて、未だにふにゃふにゃのリュートの上に馬乗りになる。


「ねぇリュートぉ……いつも血をくれてるからぁ、ご褒美……あげようか?」


今がチャンスなの……いつもは何かをしようとしてもすぐ『申し訳ないから』って断られる。だけど今の甘えん坊な状態ならきっと効くはず!


「ねぇ?知ってる?吸血鬼(ヴァンパイヤ)はね、血と血を混ぜて子を作るの。なのに、私達には人間と同じ生殖器がついてるの……不要なはずなのにね。……何でだと思う?」


「んんん、わかんなぁい、でぇす!」


「んふ、それはね?自分の眷属達を褒めてあげたり〜、慰めてあげる為にあるの?……だからね、眷属がリュートしかいない私の()()はぁ……」


体を倒し、体を密着させ、彼の耳元で囁く。


「リュート専用ってことだよぉ?」


こ、これでいいんでしょ?人間ってこういうのが興奮するんでしょ?流石のリュートも辛抱たまらなくなるんじゃ無いの?!



「んー……」


え?なになに?なにしてるの?指を自分で噛んで–––あ、血が流れて、美味しそ…じゃなくて!今は私が誘惑してるんだから、簡単に地に食いついちゃダメ!


「んむっ?!」


葛藤している私の隙をつくように、その血に濡れた人差し指で私の唇をなぞった。

芳醇な血の香りが鼻腔をくすぐり、ゾワゾワと吸血鬼の本能を刺激する。


な、何でこんなことを……



「俺、ラミアさんの唇と舌すっごい好きなんですよね〜」


その言葉と共に、その指が口の中まで入り込んでくる。


「んぇっ?!」


その甘い鉄の味を纏った指が舌をの上で遊びまわる。


「れぇ、むぅ、んぅぅ」


あまり口に入れない固形物が、大好きな血の味をさせながら自分の舌を擦ったり、絡めたりして弄んでくる。

液体よりも硬くて、柔らかくて暖かくて、血でぬるぬるしてる。


初めての感覚に脳が痺れて思考が乱される。


「いい子ですねぇ〜。可愛いですねぇ〜。舌やわこい。きもち〜。あはは、いい子にはご褒美あげないとですもんね〜?」


「ぷぅぁっ、はぁ、はぁ、」


彼の指が口から抜ける。

それが少し、もの惜しい気持ちになってしまっている。


あ、ダメだ。このままじゃ私が堕とされる。主人であるはずの私が、彼の言葉にどんどん逆らえなくなってゆく。眷属として配下にしているのに、そんなの関係なしに、契約も何も関係なしに、強制力も形も何もない目に見えない精神的な優位性を奪われてしまう。単純にただただ虜にされてしまう。吸血鬼であるはずの私が、人間のリュートに魅了されてしまっている。



リュートは血の混ざった唾液のついた指で、(マーキング)のついた首をなぞる。

私のつけた、私とリュートを繋げるその印を、

誘惑するようになぞる。


「どうぞ。ここ、ラミアさん専用ですよ?」


「はぁぁ、はぁぁ、」


いつものように首に食らいつこうとして、我に帰る。

ダメだ。

こんな、我慢もできずにみっともなく貪りついて、これじゃ品性のない下級の吸血鬼と一緒。みっともないって思われる。失望される。でもでもでもでもっ!


このままじゃまずい。私が主導権を握らないと。気を強く持たないと、気を……



「いいんですよ?遠慮なんてしなくても。いつものように好きなように吸ってください」


ダメダメダメダメ。こんな、この私が、許可をもらって血を飲むなんて、これじゃ私が躾けられてるみたいじゃん。

リュートに血を飲んでくださいって言わせなきゃダメなの。お願いされて、献上させて、懇願させて、それを甘やかすように、血を飲んであげないと。じゃないと、、じゃないと



「あれ?今日はそんな気分じゃないんですか?俺、ラミアさんに血を吸ってもらうの結構好きなんですよ〜?きもちいいし。飲んでくれないと、俺寂しいなぁ〜。噛んで、舐って、吸って、いつもみたいに、俺のこと支配して下さいよ」


彼は、呆気なく私の望みをその口で叶えた。

なんでそんな……なんでそんな私の言って欲しいことがわかるの?なんでそんなに私の心を転がすように、押したり引いたりできるの?

私が求めるものを差し出せるの?


私はもう我慢ができず、気がついたら彼の首元に顔を埋め、牙を立て、魅惑の赤い体液で喉を潤し、欲を満たしていた。


「あはぁ、上手に血飲めて偉いですねぇ〜」 


リュートは嬉しそうに笑う。


「んむぅ?!」


血を味わっていると、耳に温かく優しい感触。

彼の指だ。


「耳って触られるの気持ちいいですよね〜。すごーい吸血鬼の耳ってこうなってるんですね、形がなんかトゲトゲしてるや。くすぐったいですか?ビクビクして可愛いですね?」


指先がそっと私の耳に触れ、耳の形を辿り、ゆっくりと内側へと向かってゆく。初めての感覚。

こんなにも自分の耳は敏感なのかと嫌でもわからせられる。


快感とくすぐったさを縫い合わせたような甘い痺れが背筋に走る。

その焦ったいほどの優しさが、余計に感覚を鋭くさせ、敏感にそれを感じ取ってしまう。

気持ちの良い感触が肌をゾワゾワとさせ、体から力を奪い取ってゆく。

たった指先一つで、私の体は支配されてしまう。

視界がチカチカする。声が脳に溶けわたってゆく。快感が肌を刺激する。


酔ってブレーキの効かなくなったリュートに、私は一晩中耳や舌、を弄くり回され、褒められ甘やかされ、トロトロに蕩けさせられるのだった。



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