夢の世界での異種族交流③
その邪竜は、呪詛のようにぶつぶつと呟く。
「は?は?は?黄金が一番かっこよくて素晴らしいに決まってるが?黄金こそが至高。財宝の代名詞にして、欲を刺激し、誰もが手を伸ばす最高最強の宝だが?価値で黄金に勝てるものなどありはしないが?」
その雪の結晶は、呆れたように、諭すように語りかける。
「はぁぁ。これだから……お馬鹿さんは幸せそうでいいですね。いいですか?銀は神聖を宿す唯一無二の金属にして、品性と風格を一斉両備する、他の追随を許さない至高の聖物なのです。品の無いギラつき方をする、視覚のうるさいどこぞの下賎な代物達とは格が違うわけなのです」
俺は、その身に秘める信念と共に訴えかける。
「いや、お前ら2人ともわかってねえから。金剛石が一番だから。なんてったって一番硬い上に、綺麗、さらに高級ときたもんだ!品格も強さも一番上!まさに最強!」
俺たち3人は互いに睨み合う。
三者三様の意見が、曲げられない信条と己の誇りを賭けてぶつかり合う。
普段温厚な俺でも、流石にこればっかりは譲れない。絶対に負けられないのだ。
この戦いに負ければ、俺が長い時間をかけた可愛い我が子達……
『煌々《きらら》』『アダマスン』『剛』『モス10』『メタル帝』『劈・開王』……
俺の、六匹の愛おしいダイヤモンド○ライムちゃん達に顔向けできなくなる。
俺は必ず勝利を手にしてみせる!
なぜこんなことアホみたいなディベートが開かれているのかというと、少し時は遡る−−−−− • • • •
今日はルウと共に、『ユートピア』を利用しにやって来ていた。お金を払おうとしたら、『オーナーとも呼べる君から料金をもらうなんてできやしないさ』と、マギアさんに断られてしまった。
あまりしつこくするのもどうかと思い、お言葉に甘えさせてもらうことにした。
「す、すごいね……現実と全然変わらない。これ本当に夢の中?」
「夢の中だよ。ほら、こんなこともできるし」
そう言い、俺はラミアさんから頂いた黒いマスクとマントを想像する。するとそれらを装着した姿に変身した。
「わ、ほんとだ!すごい!」
「ルウ、お前も一応顔くらいは隠しときな」
呪いの制御ができているとはいえ、一応人狼なので顔くらいは隠しておいても良いだろう。
「ん、わ、わかった」
そう言い目を瞑り『むむむ』と集中し始める。するとルウの顔に、俺がつけてるのと一緒の仮面が装着された。
「へへ、お揃いにしてみた」
なんて可愛いことを言うんだこいつは。これ以上俺をどうしたいって言うんだ。
お小遣いか?お小遣いが欲しいのか?
確かに、お小遣いくらいあげないと保護者とは言えないよな。今日帰ったらお小遣いをあげよう。決して可愛さにやれたわけでは無いので悪しからず。
目の前には複数の扉が並んでいる。扉には文字が付いており、『○○広場』や『○○について語ろう』と言ったようなことが書いてある。
前世に合った連絡ツールのアプリのような感じだ。まぁこういうふうに提案したのは俺なんだけどね。
「ルウは好きなところ行って、友達増やして来な?あ、変な人がいたらすぐ逃げろよ」
友達が少ないのって本当に悲しいからね。
ルウからはよくクエストのパーティメンバーの話を聞いたりしている。みんな良い人っぽいから安心はしているが、やはり交友の輪は広げるべきだよね。
「んー……一緒じゃダメなの?」
「俺とならいつでも、いくらでも、一緒にいられるだろ」
「それもそっか……わかった!じゃああの広場?みたいなとこ行ってくる!」
元気に手を振りながらその扉の先へ向かっていった。
さて、俺はどこに入ってみようかなぁ〜?
並んでいる扉の前をうろちょろしていると、ふとした文字が目に止まる。
『財宝について語り合おう〜黄金こそ至高〜』
なんとなくあの厨二龍の匂いがほのかに香ってくる。まぁ、面白そうだし入ってみるか。
俺はその扉に手をかけ、意気揚々と入室した。
進んでいくと何やら言い争いの声が聞こえてくる。
「……からぁ!……が…高に決まっているだろう!」
1人は聞き覚えのある声。やはりあの厨二竜だ。
「……からそれが……んです!…………に決まって……か!」
もう1人は聞いたことのない幼い女の子の声。ウィッチさんではない……。
2人の姿が見えてきた。
1人は、所々に金色の混ざった黒髪の少女。髪が長すぎて松ぼっくりを彷彿とさせる。その隙間から突き出す金と黒の混じった捻じ曲がった角。
肌のところどころが…小さな範囲で鱗化している。その箇所は例によって金色だ。
だるんだるんのオーバーサイズの無地のTシャツ、のようなモノを着ている。
シャツには『みだす・のわーる』と、幼い子供が書いたような字体で写っていた。
お前厨二病ならもう少しかっこよく映し出せよ。
まさか、それ現実でも同じやつ着てないよね?ていうかそれが本当の姿なの?めちゃくちゃ幼いじゃねえか。
そしてもう1人……いや、これ1『人』って言っていいのか?
そう思わざるを得ないほどにその姿は人から……いや、生き物からかけ離れていた。
それは巨大な結晶。この形は…雪だろうか?
綺麗な雪の結晶から幼い女の子の声が響いているのだ。しかもぴょんぴょん跳ねながら。
なんかポケモンのスター○ーみたいだ。
自認雪の結晶ってことぉ?!世の名にはいろんな人がいるんだなぁ……。
この厨二竜……あのメンバー以外にも知り合いがいたのか、それとも初対面で喧嘩しているのか…せめて前者であれ。
そう思いながら幼女っぽい2人の言い争いに割り込み挨拶をする!
「Yo!Yo!おじょーちゃん達〜。なにべしゃりしちゃってんのー?俺も混ぜてくれメンス〜」
「……なんなのですか?あなた」
とんでもなく冷たい声。少女(?)が放っていい冷気ではない。
「む!この気配!まさか貴様は……?!」
「そう!数多の種族を愛し!全てに平等を施す者!私の名は博あ「その声、我が眷属ではないか?」……」
「うぉっほん……っ!いかにも自分は博愛の「ぬしもこの女に言ってやってくれ!」……」
二回も邪魔するとか……こいつ絶対わざとだろ。
山月記っぽい問いかけだったから、俺のレベルのは高い対応力を見せつけて、博識ぶりを披露してやろうとしたのに、何邪魔してやがんだこいつ?
「どなたか存じませんが、あなたもこの方と同じなのですか?」
「いやいや、お嬢さん。私は博愛主義者……意見を聞かずに片一方に肩入れすることなどございません。何があったのか説明してくださるかな?」
彼女は訝しみながらも、説明を始める。
「………この方が、銀よりも金の方が高い価値を有しているとおっしゃるので…それは間違いですよ、と懇切丁寧に説いてあげているのです」
「ぬぅぁなにをぬかすかこの小娘が!金のが上に決まっておろうがっ!」
「はぁ、これが教育の格差というものですか、これもやはり貧富の差から起こるものなのでしょうね……。わたくし、嘆かわしいのです」
「確かに、知らないっていうのは可哀想だよね……だけどそれは君もだよ?」
「……何が言いたいのですか?」
「金も銀も、あの至高の宝玉の足元にも及ばないんだよ……そう、金剛石にはね……」
「は?」
「あ?」
「お?」
俺含めた3人の稲光のような激しく鋭い視線がぶつかり合い、バチバチと弾ける。
この瞬間、ゴングが鳴り響いた。
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