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魔女さんの誘惑

『ラミア・ノス・アディカリオ』のイメージイラストを挿絵として追加してます。

〔 ★ 〕マークのついた『吸血鬼さんとの出会い』と、人物紹介に、目あり、目隠れの差分を載せてます。


よければ見てみてください。


かなり頻度は遅いですが、少しずつイメージイラストも更新していこうと思います。




「はは、見せつけてくれるね」


「もう〜、茶化さないでくだよマギえもん〜」


「そ、そういんじゃないから!今はまだ、あったほうがいいかなって思ってるだけだから!」


ルウが照れてる。可愛いね。そんでもって、とっても良い子だね。


『とりあえず、調整はしばらく続けていこう。それくらいなら私でもなんとかできるからね』とマギアさんが言ってくれた。

本当にありがたい。ルウと一緒に、今度何かお礼をさせていただこう。



「マギマギったら、いつになく張り切っちゃって〜」

今度はマギアさんを茶化し出すウィッチさん。だがすぐに彼女の興味はこちらに移りだす。


「それにしてもぉ、……そんなに懐かれて……愛だねぇ〜?人間くん?」


小っ恥ずかしいことを言わないで頂きたい。そんなことを言おうとしてウィッチさんの方を見るが、俺に向けるその視線が身体に絡みつき、言葉を呑んでしまった。



「いいなぁ〜。あーしもぉ、()()()()()()


その瞳に、ぞくりと背筋に悪寒が走る。

俺はこの瞳を見たことがある。ラミアさんや、シャルもたまに見せる……俺を捕食せんとするような獣の目。


おかしい、そういう目線を向けるにしても、今の流れなら普通は俺じゃなくてルウじゃないのか?

いや、でもルウに向けられる方が困るな。




「は、はははは。………で!マギアさん!この袋は一体?!」


つついたらとんでもないものが飛び出しかねないと判断した俺は、なんとか視線を振り解き、強引に話を変える。

パンドラの箱には封をしておくのが一番だ。


それでも、いまだにその視線は俺の体に絡みついて離れない。蛇に体を締め付けられているようだ。


畏れと魅了を放つ蟲惑的な瞳。ただの鬼や蛇では済まなさそうだ。




「あぁ、そうだった。これは『ユートピア』で儲けた君の分前だよ」


「ほへ〜こんなに稼げたんすね〜。すげえっすね〜!ここから1割頂けるなんてありがたいっす!」


「いや?違うね」


「へ?」

え?なにが違うの?もしかして放置しすぎて流石に1割ももらえないってことぉ?


「言っただろう?これが君の分前だ。この袋に入った金銭は全て君の分だ」


……はにゃあ?



「こ、こんなに…?」


「どんどん広まった結果、客の方からリクエストを貰うようになってね…はは、今や()()()()()でご利用いただいているのさ。お偉いさんの怪しい取引から、人には言えない危ない恋の蜜月までね」


『もちろん内容によって値段も変えている』とマギアさんは付け足した。


客のリクエストに応じて色々魔法陣を弄って、『ユートピア』に与える効果を調整しているらしい。


例えば、夢魔さんやマギアさんが内容を把握できないようにしたりだとか……その人の記憶を背景として映し出したりだとか……




まじかぁ………。まじかまじかまじか?!

こ、これだけあれば…壁の修理費も借金も全部返せる……いや、全部返してもまだ半分くらい残るんじゃないのか?

ルウとちょっといいお店に行っていい飯をたらふく食ったり。「……さん?」ラミアさんやシャルに、日頃のお礼として、それなりに高価な贈り物とかも買えるかもしれない。「………ぃさん!」一日ゆっくり食べ歩きなんかしたり、今まで買えなかった嗜好品なんかにも手を出したり……あとねあとね–––––



「にぃさぁん!」

「ぶへぇ!」

大きな声と共に俺の頬に強い衝撃が走った。



「………はっ?!俺は一体なにを……?!」


「やははは、おかえり〜人間くん〜。すっごい顔してたよ?」


「え?え?」

なに…すっごい顔って。


「なんか、瞳が金貨みたいになってたし、口も汚泥の精霊みたいになってて……悍ましかったよ……暗闇の住人かと思った」


ルウが若干怯えた顔をしていた。いや、これはドン引きの顔だ。



「そ、そんなに酷い顔してた?」


確かにちょっとトリップしてたかもしれないが、そ、そんな化け物になってしまっていたとは……お金の力、恐るべし。


「人間くん〜、そんなにお金が欲しいならあーしが都合してあげよっか?ちょ〜〜っと、契約してくれるだけで、毎月「遠慮しておきまぁす!」……」


『もうちょっと話聞いてくれてもいいのに〜。イケず〜』と口を尖らせながらブーブー不貞腐れるウィッチさん。


そんな可愛い顔しても騙されませんからね!

そんな怪しい取引に応じるなら、そもそもあの厨二竜の力で金を生成しまくって売りまくっとるんですわ。

なぜしないかと言えば、そりゃもちろん呪いの力だからですわ。

あんな『取り扱い要注意』マークの入った強力で恐ろしい呪い、そう簡単に手を出せない。

もちろんウィッチさんも同じく。



「そんなに信用ないかな〜?ただちょ〜〜っと短期間、狼ちゃんの姿になってもらって、ただちょ〜〜っと、あーしによしよしされる日々を、ちょ〜〜っと送って欲しいだけなんだけどな〜〜?」


「………詳しく話を聞いてもい「兄さん?」……冗談です」


そんな睨まないでいただきたい。

ただちょ〜〜っと、ゆるふわ魔女巨乳美人お姉さんにヨシヨシされて、ただちょ〜〜っと甘やかされる日々に心が傾きかけたただけじゃん?


まぁでも、よくよく考えたら、俺はヨシヨシする側であってヨシヨシされる側ではないかもしれないね。




「盛り上がってるところ悪いね。今日の話はこれで終わりだろう?もうお開きにしてもいいかな?」


「あ、待ってください!最後に、マギアさんにちょっとお尋ねしたいことがございまして……」


「なんだい?」


「あのあの、ちょっとしたことなんですけど……次の満月って、いつ来るかわかったりします?」


「……なぜ、私に?」


「え、マギアさんってなんとなく月のイメージがあったんで……月明かりとかよく似合いそうだし、知ってたりするかなぁって……へへ、てきとうですいやせん。」


我なが本当に適当な理由だなって思う。

でもダークエルフと言えば月じゃない?そんなことない?俺の勝手な見解なの?



「人間くんったらロマンチスト〜」


ウィッチさん、さっきから何かと茶化してくるな。ヤジ飛ばさないと生きてけないタイプの人か?


「……はは、私まで…とはね。手広くやりすぎじゃないかい?短い人生を少しでも謳歌したいなら、もう少し謹んだ方がいいと思うけどね」


「……兄さん?」


「えぇ?なんでぇ?」


三者三様の反応。そのせいで余計わからない。俺、そんな不快な言葉を送っちゃったのかなぁ?ダークエルフ特有の宗教とかあったりするの?

俺だけ知らない常識があって、そこに設置された地雷を見事に踏み抜いちゃった感じ?


なんかわかんないけど、とりあえず謝っておこう



「なんか、気を悪くさせちゃってたらすみませぇん!」


「うふふぅ、人間くんおもしろ〜い」


「いや、構わないよ。次の満月の日付だったね…もちろんわかるよ」


「ヤッタァ!ありがとうございまぁす!」



そのあと、ささっとご教示していただいた。

やはりマギえもんは頼よりになるなぁ。



そうして、見事に目的を全て達成。その日はそこで解散…ルウと一緒にお暇させていただいた。


俺は売り上げの取り分を持ち帰り、すぐさま大家さんに補修代と今までの迷惑料、土下座も込み込みでお渡しした。



ようやく俺たち……厳密には俺だけだけど、

とりあえず、俺はようやくあの重苦しい借金から解放されたのだった。



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