弟との再会
あのあと、無事、グリフォンとの従魔の登録をギルドで無事済ませることができた。
背に乗るための器具を探してはみたが、グリフォン用の物はなかなか見つからなかっ
た。
なので1番フィットする鞍と、遠くからでも目視で捉えやすい派手な首輪をつけた。
従魔であることを示し、人から討伐されないようにするものだ。
そして名付けの契約を行った。
あの厨二竜と行ったものとほぼ同じものらしい。
基本的には俺の命令に背けず従うようになる。
名前は『ガディ』 と付けた。
これからは俺の良きパートナーとして一緒に過ごしてもらうこととなる。
○●○●
ルウはあれから討伐クエストへ赴くことが増えた。どこかのパーティーに、スポットで参加しているようだ。活躍していて大好評らしい。
あちこちから引っ張りだこだ。
その分良からぬことを企む輩も増えるだろう。
変な奴らに粉をかけられないよう、ギルドでは俺と一緒に、ガゼンさんとリンカさんに目を光らせてもらっている。大変助かる。
討伐クエストを始めた頃、ルウが急に報酬の7割を渡して来たので、拒否した。
だがルウも引っ込みがつかないらしく、その気持ちを受け取るために、3割ほどいただくことにした。
まぁ、貯金に回してるけどね。
そんなこんなで、自然と一人で薬草採取のクエストを受ける生活が続いた。
「ルウの居ないクエストに、違和感を覚える日が来るとは……」
ルウとのクエストが俺の日常になっていたということだ。
うーん、少し寂しいね。
でもまぁ、完全に一人というわけではない。
羽ばたく音と共に風が舞う。
『ガディ』だ。
あの子にはクエストのたびにこの森まで運んでもらってる。かなり体力と時間を削減できて、大助かりだ。
ただ……
『クゥァアッ』
「は、ははは。ガディ、これまた大物を……」
ガディの足元にはなんだかよくわからない鹿っぽい獣の死体がある。
どこかで飼って来たのだろう。
そう、この子いちいち手柄を俺に献上しにくるのだ。
猫ちゃんがベランダから蝉の死体をわざわざ目の前に持ってくるあれと同じだ。
ウスノロの俺に獲物を分けてくれてるのか、それとも褒めろということなのか……中々対処に困る。
「えらいぞ〜ガディ。よくやった」
とりあえず褒めてやる。
この世には『アイテムボックス』なる、物を収容できる魔法があるらしいのだが、魔力のない俺には当然使えるわけもない。
なのでそのまま、あなたのご飯にしてくださいね、ガディさん。
「食べていいぞ、ガディ」
『クゥァアッ』
喜びの声を上げながら、その鋭く固い嘴で死体を突き肉を喰らう。
今度ガゼンさんに獣肉の解体の仕方でも教わろう。食堂に持って行けば、調理して格安で出してくれるかもしれない。
ガディに乗って行けばそんなに時間もかからないしね。
今度頼んでみよう。
○●○●
帰りの途中、ガディを施設に送り、ギルドへ向かう。
ギルドにつき、扉の前に近づくと何やら騒がしい声が聞こえてくる。
扉を開け、その渦中へと進んでゆく。
その途中で、見慣れない一団が視界に入る。
白い鎧に体を包んだ集団。『聖騎士』というやつだろうか?
なんでこんなとこにいんの?ま、いいや。関係ないでしょ。
俺はそのまま突き進む。
「うぃっすうぃっす!どしたんすか〜?何かあっちゃった感じっすか〜?」
「リュート、どうやらお前に客人みたいだぜ?」
「あ、ガゼンさん…俺に客人?」
疑問に思いながらも、騒ぎが聞こえる受付の方へ進んでゆく。
–––––から!ここにいるのは知ってるんだよ!いいからさっさと呼び出せ!」
喚き散らす男。
「ですから、そういったトラブルの元になる対応は出来かねます。お引き取りください」
あくまで冷静に、淡々と対応するリンカさん。
そこには、ギルドでは見慣れない、そしてこの世界では見慣れた一人の姿。
「ルイズ……」
俺の声に気付いたその男は、ゆっくりと振り返りながら呟く。
「リュートぉ…てめぇ……」
そこには、今世での俺の弟……ルイズ・ベルクニフの姿があった。
「うぉっ」
ズカズカと乱暴に俺の前までやってくる急に胸ぐらを掴み文句を言い始める
「全部全部テメェのせいだっ!テメェのせいで俺は……!」
「ルイズくぅん。ちゃんと説明してくんないとなにもわかんないよぉ?」
俺はわざとらしく両手をあげながらわざとらしい表情を作り上げる。
こいつは昔っから我慢ができない癇癪持ちだ。ユミちゃんがマシに思えるほど酷かったが……さらに磨きがかかってるな。
まぁ、煽る俺も悪いかもしれないけど。
でもほんとに何も心当たりないんだもぉん。
「テメェがシャルナールに何か吹き込んだんろ!そのせいで俺はお父様からもお母様からも……全部全部テメェのせいだぁっ!」
あーはいはい。そゆことね。なるほどね。
シャルさんが、こいつとの縁談を断り、ベルクニフ家との関係切ったのを俺のせいだと思い込んでるんだ。
なんて馬鹿な思考回路なんだ。
「何も吹き込んでませぇーん。単に君が気に入られなかっただけでーす!」
「ふざけんなよ!この俺がテメェより劣るわけねぇ!テメェに出来て俺にできないことなんて一つもないんだよ!お前が気に入られて俺がそうじゃないなんてありえねぇんだよっ!」
今まさに落ち着きで負けてるよお前。
フられたからといって逆ギレして、元婚約者の俺に殴り込みに来て、お門違いな言葉を並べてて……お兄ちゃん情けないよ。見てらんないよ。
「そんなこと言いませーん。というかシャルは俺の言葉でも嫌なものは嫌って言いまーす。その時点でお前はシャルのことをなんも理解できてませーん。婚約を取り付けたいなら、まずはそこからどうにかするこったな」
めちゃくちゃ道は遠いだろうけどね。
「……っざけんな」
「え?なに?聞こえないんだけど?はっきり喋ってもらえます?」
「フッっざけんなぁぁぁああああっ!」
その瞬間、ルイズの体から炎が立ち上る。
魔法だ。ベルクニフ家は橙炎の魔法を扱ってきた。ベルクニフの性を持つものは皆炎魔法のプロフェッショナル……らしい。
「リュート君!?」
「リュートぉ!」
ガゼンさんとリンカさんの心配の声が上がる。
でもあーら不思議。この子の魔法、痛くも痒くもあーーりませぇん。
俺に魔力が発現しないことがわかってから、こいつはよく俺で『的当て』をしていた。
それはもうニタニタと下品な笑みを浮かべながら、逃げ回る俺に向かって魔法を放ちまくっていた。
こいつの性格がめんどくさいことを知っていた俺は、当たるたびにダメージを食らったふりをしていた。
炎の玉が当たり、煙が上がる。その間に土とかで体を汚して、ダメージを演出していたのだ。
正直、本当は全然痛くなかった。ノーダメですわ。
どうせこいつの魔法が、見た目だけで中身スッカランとかそういうのが理由だろう。
まともに育っていればちゃんとした魔法が扱えたのだろうか?
魔力のない俺には答えの出ない問いだ。
「表に出ろテメェ……」
「おーこわこわ。男の癇癪が許してもらえるのは5歳まででちゅよ〜?ルイズくんは今何ちゃいか言えるかな〜?」
「決闘だぁ!俺が勝ったらシャルナールを寄越せ!」
「だから俺にそんな権利ないっての……まぁ、お前が勝てたら橋渡しくらいしてやってもいい。そっからお前次第だけどな」
こいつ魔法ばっかで体鍛えてないし、勝てるっしょ。
毎日の薬草採取のクエストで鍛えた俺のフィジカルが火を吹くぜぇ!
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